新・ほろ酔い気分

酔っているような気分のまま、
愚にもつかない身辺雑記や俳句で遊んでおります。
お目に留めて下されば嬉しいです。

後悔の泉

2008年05月30日 09時32分00秒 | 写真俳句・エッセー

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後悔を閉じこめしまま牡丹散る

 

 私の胸の中には、後悔の泉がある。

 生まれて以来の後悔が、泉の表面に浮かんでいたり、水中に漂っていたり、底に沈んでいたり……。ひょっとしたら、生まれる前からの後悔もあるかもしれない。

 後悔は次々に生まれる。際限なく生まれる。ひどいときには、分単位で生まれたりするのだからたまらない。

 思い出したくない後悔もある。思い出すだに恥ずかしい後悔。

 好きな女学生に手紙を渡したくて、家の周りをうろついたこと。

 喧嘩の成り行きで、無抵抗だった同級生を殴ったこと。今なら、「いじめ」と言われかねない。

 兄弟たちの苦労に気づかなかったこと。

 上司の苦衷に思いが至らず、執拗に逆らったこと。

 仕事を言い訳にして、家庭を顧みなかったこと。

 飲み過ぎて大ごとを引き起こしてしまったこと。これなど、いまも具体的内容は言えない。

 節酒に努めれば、病気をしないですんだかもしれない。

 この歳になっても、引きも切らずに後悔しているのだから情けない話だ。

 もっと優しい気遣いをすればよかった。もっと早く詫びるべきだった。親身になって、悩みを聞くべきだった。あんなこと、言わなければよかった。

 そんな後悔の多くは、泉の中を漂いながら、いつか消えてしまうようだ。時間が私を救ってくれている。

 しかし、いつまでも表面に浮かんでいて、ぎらぎらと光っている後悔もある。

 底に静かに沈んでいて消えることはないが、滅多なことでは思い出さない後悔もある。

 なにしろ、後悔のほとんどは、もう取り返しがつかないのだ。取り返しがつかないから後悔となって残っている。

 ひたすら、忘却を願うのみ。

 もう初夏に入り、梅雨の雨音も聞こえ始めた。

 あれほど激しさと妖艶さを極めた牡丹が、もう散っている。

     後悔を閉じこめしまま牡丹散る   鵯 一平

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コメント (17)
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