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凍てつく街角 個性豊かで魅力的な脇役達

2017年07月10日 | もう一冊読んでみた
凍てつく街角/ミケール・カッツ・クレフェルト  2017.7.10

このミステリー 『凍てつく街角』 は、三人の登場人物の視点で、物語が交互に語られる。
それぞれの話は、それぞれの時間軸に従って。
このような構成の話では、得てして錯綜して分かり難くくなりがちだ、だが、この作品は、分かりやすく、テンポ良くすっと、物語の世界に入っていける。
あとは、夢中で読むだけ。
特に、脇役のエドゥアルド、ジョンソン、ヴィクトリア、そして愛犬メッフェが魅力一杯に描かれている。悪人スラヴロスさえ。あなたも、是非、ご堪能あれ。

次の表現は、コペンハーゲン警察捜査官トマス・ラウンスホルトを暗示している。

 「ラウン……おもしろい名前だ。 ”カラス”って意味だろ。以前はタカやワシのようにカラスも猟に使われていた」葉巻の灰を落とす。 「カラスは残忍な鳥でな、まず獲物の目をつついて見えなくしてから内臓を食らうんだ。」......
 スラヴロスはトマスの問を無視する。「中世では、カラスは不吉な鳥として忌み嫌われていた。害鳥として。害鳥に待つ運命を知っているか?」
 「駆除されるんだよ」ミハイルが答える。


 ブラスクは机に身を乗りだした。 「ラウン、私はお前をよく知っている。ここでしてきたのと同じように、向こうでも連中をいら立たせたんだろう。お前のその態度で」

悪人スラヴロスを魅力的に感じるのは、ぺらっとこのようなことをはくから。

 「目標って何? どんな計画?」うつろな目でマーシャが尋ねた。
 「全人類が追い求める目標さ……できるだけ金を稼ぐ。なぜなら、金は自由を意味しているからだ。自分の人生を自分で決める自由を。それ以上でもそれ以下でもない」

 「私にも目標ぐらいあったわ。それがこんなことになって……」
 スラヴロスは首を横に振った。 「違う。それは目標じゃない。ただの夢だ。どんなばかでも夢を見ることはできる。でも、その夢を現実のものにしようと努力する人間はごく一部だ。........」


ジョンソンの友情

 ジョンソンの腕をトマスがつかんだ。
 「もう一杯分の働きはしたんじゃないか」
 「もちろんだ」ジョンソンはうなずく。「仕事中に飲ますのは悪いと思っただけだよ」


物語でこんな会話に出会ったら、「あなたは」読まずにはいられない。

 「ラウン、あれはな、解決できない事件なんだよ」
 「わかっている」 トマスは言った。
 「もうわすれたほうがいい」
 「わかっている」 彼は繰り返した。


訳者あとがきによると、本書は「捜査官ラウン」シリーズの第一作目と位置づけらるようです。

  =「捜査官」ラウンシリーズ=
  2013年 Afsporet(脱線) 本書 『凍てつく街角』
  2014年 Savnet(失踪)
  2015年 Sekten(宗派)
  2016年 Dybet(深み)

日本での発売が楽しみです。

  『 凍てつく街角/ミケール・カッツ・クレフェルト/長谷川圭訳/ハヤカワ・ミステリ 』

コメント
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