■数字を一つ思い浮かべろ/ジョン・ヴァードン 2018.12.3=1
『数字を一つ思い浮かべろ』 を読みました。
もしうしろに進めないのなら、全速力で前進しろ。
読み始めてすぐ感じたことは、1ページに収まる文字数の多さでした。
見ただけでくたびれました。ハア~ッとため息がでます!
それでも、p568読み通すことが出来たので、それなりに面白かったのだと思います。
「思い浮かべた数字を当てる」トリック。その謎解きを、自分で考える。これが楽しい。
本格ミステリは、物語のなかで遊ぶ。
余分なことを考えると面白さも半減しますね。
「連続殺人鬼、そこまで凝ったことをやるの?」という疑問が浮かんだり。
主人公のニューヨークの元刑事、名はガーニー。
この人物極めつけのおもしろみのない男で、逢う人逢う人みな気に入らない。いつも心のなかでぶつついている。
おっと、余分なことを考えないで、遊ぶこと。あそびましょう。
「わたしたちはみな、じぶんなりのやり方で、自分がどういう人間なのか示したいと思っているのよ、警部。きっとあなただって、自分の仕事をしているとき、しょっちゅうその事実に直面しているでしょう。わたしもそう。はた目にはそれがどんなにおかしく見えようとも、あらゆる人間の行動にはそれなりの根拠がある。誰もが自己の正当性を認めてもらいたがっている。たとえ精神的に異常な人物だろうと----いや、むしろ精神的に異常な人物のほうこそ正当性を認めてもらいたがるのかもしれない」
この世に完璧なものなどない。ものごとはつねにプラス面とマイナス面がある。配られた札で満足しなければならない。すべてはポジティブに考えるべきだ。
それが現実というものだ。
「なんだって疑わしいところはある」ハードウィックが宣した。「人生において確かなことは二つしかない。死と疑わしさだ」
「何かを選択すれば、ときには思いもしなかった結果へと導かれていく」
ガーニーにはある説があった。トイレにいるとき、男たちはロッカールームかエレベーターにいるときと同じようにふるまう。気の知れた仲間同士でにぎやかにやるか、打ち解けあえず居心地の悪い気分でいるか。今回は、エレベーターのほうだった。全員が無言のまま用を済ませ、会議に戻った。
ガーニーは唇を強く引き結んだ。自分もロドリゲスのような男のもとで仕事をしてきた。リーダーシップとは異常な支配欲のことであり、否定一点張りの態度が冷徹に現実を見据えた姿勢だと勘違いしている男たちだ。
「人間はみな、自分の問題は状況のせいであり、他人の問題は人格のせいだと信じるよう、あらかじめセットされているらしい。それがトラブルの素となる。好き勝手しているのが自分なら、ごく自然な欲求にしたがっているだけと思えるし、好き勝手しているのが他人なら、幼児じみた欲求に流されているのだと思う。よりよい一日とは、自分の気分がよくなるときであり、でなければ他人の行いがよくなるときだ。自分が見ているのはありのままの現実だ。他人が見ているのは自分の願望に合わせてゆがめた現実だ」
ひとつの決定について二つの理由を挙げる男がいたら、おそらくその男は第三の理由を隠している。それこそが真の理由だと考えたほうがいい。
『 数字を一つ思い浮かべろ/ジョン・ヴァードン/浜野アキオ訳/文春文庫 』