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「ハリー・オーガスト、15回目の人生」 ループもの

2017年04月03日 | もう一冊読んでみた
ハリー・オーガスト、15回目の人生/クレア・ノース

この種のSF小説を、”ループもの”(同じ時間が反復される物語)と言うらしい。
ぼくの記憶している限りでは、初めて読む分野です。

巻末の大森望氏の「解説」は示唆に富んでいて、面白い読み物になっています。
クレア・ノースとは、誰なのかとか?

『2017年版 このミステリーがすごい!』では、海外編第19位でした。
第19位ではありましたが、主人公は、世界中のいろいろな地域を旅し、歴史的事実にも触れながら、話は進められるので、ぼくは結構楽しめました。

「リプレイ」とは.......... 物語の中から抜粋してみました。

 ぐるぐると輪のように生と死を繰り返す私たちのような人間は、三つのステージを経るといわれている。すなわち拒絶、探求、そして受容だ。

 無知を無垢、孤独を気楽と考えるなら、なりゆきに任せて生きた最初の人生はある意味、幸福だった。だがまえの人生の記憶を持ったまま、同じ生き方はできない。私にはこれから起こる出来事がわかるだけでなく、身のまわりの真実もちがって見えた。

 「私は死ねないんだ」私は丁寧に説明した。「誕生し、生き、死んで、また生き返る。そのたび、いつも同じ人生が待っている。おたくの政府はこの件に関して、なにか参考になる情報を持っていないか?」
 シェン氏はにっこりした。「あいにくですが、尊師。ご協力ありがとうございました」と言い、ふと思いついたように言い添えた。「いろいろご苦労されているようですが、お元気で」


 過去は過去であって、なにをしても結果は変わらないからだと答えることもできる。私がなにをしても私以外の人間には意味を持たない人生に疲れた。歳を重ねて心が麻痺し、空っぽになった。自分が死んだ理由が知りたくて古い墓を訪れる幽霊みたいに人生から人生へと漂ってきたが、なにも見つからない。意味のあることはなにも見つからない。

繰り返し記憶を持って生まれ変わることが出来れば、このことが強く意識されることでしょう。

 でもこのご時世、私たちのほとんどは思いやりを失っている。進歩のために私たちは魂を食いつくし、大切なものを捨ててしまったのよ

 『 ハリー・オーガスト、15回目の人生/クレア・ノース/南海弘美訳/角川文庫 』


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