BELOVED

好きな漫画やBL小説の二次小説を書いています。
作者様・出版社様とは一切関係ありません。

愛別離苦♢1♢

2025年01月12日 | 天上の愛地上の恋 大河転生昼ドラ吸血鬼パラレル二次創作小説「愛別離苦」


「天上の愛地上の恋」二次小説です。

作者様・出版社様とは一切関係ありません。

二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。

♢第一部♢

2000年、オーストリア・ウィーン。

その年の冬、ウィーン・オペラ座では、ミュージカル・エリザベートが上演されていた。
19世紀末、ハプスブルク家、オーストリア=ハンガリー帝国皇后・エリザベートの激動の生涯を描いたミュージカルを、一人の青年が複雑な表情を浮かべながら鑑賞していた。
何故なら、“彼”は、“本物”の彼女を知っているから。
娯楽作品として、多少の脚色が必要であるというのは頭でわかっているのだが、モヤモヤとした思いを抱えながらミュージカルを観ていた。
そんな中、“彼”は誰かに“視られている”事に気づき、周囲を見渡すと、美しい宝石を思わせるかのような翠の瞳と視線がぶつかった。
(彼は・・)
ミュージカルが終わった後、“彼”はあの翠の瞳の持ち主を捜しに、オペラ座のロビーを駆けた。
(何処に、何処に居るんだ!)
血眼になって“彼”がロビーに居る客達の姿を見ていると、再び視線を感じた。
「あ・・」
「漸く、会えた・・」
“彼”は、蒼い瞳で翠の瞳の持ち主を見つめ、そう言った後、“彼”の唇を塞いだ。
「ルドルフ様・・」
「やっと、わたしの名を呼んでくれたな、アルフレート。」
「会いたかったです、ルドルフ様。」
「まさか、こんな所で再会するとは思っていなかったな。」
「わたしもです。」
「何処か、静かな所で話そうか。」
「はい。」
オペラ座を出た二人は、カフェへと入った。
「懐かしいですね、このカフェ。昔、あなた様とここでコーヒーを頂きましたね。」
「あぁ、そうだったな・・」
ルドルフは湯気が立っているコーヒーを一口飲みながら、自分を見つめている翠の瞳の持ち主―アルフレートと出逢った日の事を思い出していた。
その頃のウィーンにはまだ、城壁が街を取り囲んでいたが、アルプスの近くの山村で暮らすルドルフ―ルドヴィカにとって、ウィーンは寓話に登場する夢の国のような場所だった。
「ルドヴィカ、早く起きなっ!」
「はぁ~い。」
(朝からうるさいのよ、クソ婆。)
教会から鳴り響く鐘の音より前に、ルドヴィカは養母の怒鳴り声を目覚まし時計代わりに起きた。
ちらりと横目で鏡に映る己の姿を見た彼女は、素早く乱れた己の髪を手櫛で整え、一階へと降りていった。
「漸く起きたね!ルドヴィカ、これをベルジック家の奥様の元へと届けて来な!」
「え~、母さんが行ってよ~」
「あたしはパンを焼くのに忙しいんだっ、早く行っておいで!」
「ふん、わかったわよっ!」
養母におつかいと仕事を頼まれ、パン屋の裏口から外へと出たルドヴィカの姿を見た村の青年達が、彼女に向かって口笛を吹いた。
この年の夏で15になるルドヴィカは、金褐色の巻き毛に蒼い瞳を持った、美しい娘だった。
その美しい容姿に加え、彼女は生まれながらにして高貴な雰囲気を纏っていた。
そんな彼女の姿を遠目に見ながら、村人達はいつもこう囁いていた―この村に居るのはもったいない娘だ、と。
それは、ルドヴィカ自身も思っていた。
自分はこんな田舎で一生を終えたくない、出来る事なら広い世界を見たいと、彼女は思っていた。
「あら、来たのね。」
「焼き立てのパンをお届けに参りました、奥様。」
ルドヴィカはそう言った後、正視に耐えない、眉毛が薄い醜女―ベルジック侯爵夫人を見た。
「さっさと調理場へ行きなさい。」
「はい・・」
この世はいつも不公平と不平等で成り立っている。
容姿に恵まれぬ貴族の女、片や容姿に恵まれた平民の娘―神は何処で選択を間違えたのだろうか。
「ルドヴィカ、今日もよろしくね。」
「よろしくお願いします。」
ベルジック侯爵家の料理番・ルイーゼに挨拶したルドヴィカは、早速林檎の皮を器用に包丁で剥き始めた。
その時、調理場に一人の青年が入って来た。
「ルドヴィカ、来たんだね。」
「お兄ちゃん!」
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