BELOVED

好きな漫画やBL小説の二次小説を書いています。
作者様・出版社様とは一切関係ありません。

二人の天使 ‐Ⅲ‐

2025年01月08日 | バチ官×天上の愛地上の恋 クロスオーバーパラレル二次創作小説「二人の天使」


表紙素材は、装丁カフェ様からお借りしました。

「バチカン奇跡調査官」「天上の愛地上の恋」二次小説です。

作者様・出版社様とは一切関係ありません。

二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。


「皇妃様、皇太子様とフェリックス司祭の事を詳しくお聞かせ願えませんでしょうか?」
「アルフレートは、わたしと同じバイエルン出身なのよ。わたし達がイシュルで避暑を過ごしたとき、ルドルフが突然アルフレートを連れて来たの。ウィーンに連れて来て一緒に暮らしていた頃は余りアルフレートとルドルフは仲が良くなかったようだったけれど、アルフレートがメルクに行った後、毎日ルドルフはあの子からの手紙が届くのを楽しみにしていたわ。」
エリザベートは朗らかな声でそう言うと、紅茶を一口飲んだ。
「わたしは余りウィーンに居ないから、あの二人がどこまでの関係なのかは知らないけれど、まぁ、二人は“そういう関係”なのではないかしら?」
「はぁ・・」
ロベルトはエリザベートの言葉に相槌を打ちながら、隣に座っている平賀の方を見ると、彼は何故か頬を赤く染めていた。
「平賀、どうしたんだい?」
「いいえ、何でもありません。」
「顔が赤いけれど、熱でもあるのかい?」
そう言ってロベルトが平賀の額に手を当てると、そこは少し熱かった。
「平賀、昨夜はちゃんと眠れたのかい?」
「いえ、この前の実験レポートを仕上げた後、ローレンとネットで対戦をしていていつの間にか朝を迎えていました。」
「夜更かしはしたら駄目だとあれ程言ったじゃないか・・申し訳ありませんが皇妃様、彼は熱を出していますので何処かで休ませないと・・」
「まぁ、それだったらアルフレートの隣の部屋を使いなさいな。」
「いえ、そのような事をなさらなくても・・」
エリザベートの言葉を聞いたロベルトは、流石に宮殿内の部屋に泊まる訳にはいかないので、彼女の申し出を固辞しようとした。
だが彼女は勝手にロベルト達が滞在する部屋をアルフレートの隣に用意してしまい、結局二人は暫くそこで滞在することになった。
「すいませんロベルト、わたしの所為です・・」
「君の所為じゃないよ、平賀。今から熱を測るから、じっとしていてね。」
「はい。」
ロベルトが自分の脇の下に体温計を挿し込むために前かがみの姿勢になったのを見た平賀は、何故か胸の鼓動が高鳴るのを感じた。
「やっぱり熱があるね。最近君は無理をし過ぎているから、ゆっくりと休むといい。僕は厨房にでも行って君が食べたい物を作ろうと思うんだが、何が食べたい?」
「何も食べたくありません。」
「そんな事を言わないでくれ。君は僕にどうして欲しいんだい?」
ロベルトは少し困ったような顔をして平賀を見た。
「何処にも行かないでください、ロベルト。わたしの傍に居てください。」
「わかった。」
ロベルトは平賀が眠るまで、彼の手を握った。
ベッドの上で寝息を立てる平賀の黒髪を優しく梳いたロベルトは、部屋から出てアウグスティーナ教会へと向かおうとすると、フェリックス司祭がランプを持って何処かへと向かおうとしている事に気づいた。
彼に気づかれぬよう、ロベルトが彼の後を尾行すると、やがてフェリックス司祭はミヒャエル門をくぐり、スイス宮の中へと入っていった。

(どうしてフェリックス司祭がスイス宮に?)

ロベルトが、フェリックス司祭が消えたスイス宮の中を探ろうとした時、不意に彼は強い視線を窓の方から感じて頭上を見た。
すると、闇の中で美しく煌めく蒼い瞳が、ロベルトを睨みつけるかのようにカーテンの隙間から見つめていた。

その瞳の主は誰でもない、ルドルフ皇太子だ。

ロベルトはスイス宮に背を向け、踵を返した。

「ルドルフ様、どうかなさったのですか?」
「いや、何でもない・・ただ、猫を見つけただけさ。」
「猫、ですか?」
「ああ。癖のある茶色の毛をした、わたしと同じ色の瞳をした猫だ。」
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二人の天使 ‐Ⅱ‐

2025年01月08日 | バチ官×天上の愛地上の恋 クロスオーバーパラレル二次創作小説「二人の天使」


表紙素材は、装丁カフェ様からお借りしました。

「バチカン奇跡調査官」「天上の愛地上の恋」二次小説です。

作者様・出版社様とは一切関係ありません。

二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。

「わたしは決して怪しい者ではありません。わたしは仕事でバチカンから派遣されただけです。」
「そうか。」
青年はそう言うと、平賀から彼の隣に立つ司祭へと視線を移した。
「アルフレート、わたしの部屋に来い。」
「ルドルフ様、すぐに伺います。」
青年が教会から去った後、エメラルドの瞳を平賀に向けた。
「ルドルフ様が先程貴方に対して無礼な態度をお取りになったことを、わたしが代わりに謝ります。」
「いえ、そのような事をなさらなくても結構です。あの、貴方のお名前は?わたしは平賀=ヨゼフ=庚です。」
「わたしはアルフレート=フェリックスと申します。こちらの教会で宮廷付気司祭を務めております。あの、ヒラガさんとお呼びしても宜しいでしょうか?」
「ええ、勿論です。ではフェリックス司祭、先程の方はどなたですか?純白の軍服をお召しになられているとしたら、高位の貴族階級に属する方だとわたしは思うのですが・・」
「鋭いですね、ヒラガ神父。あの方はルドルフ=フランツ=カール=ヨーゼフ=フォン=オーストリア、ここオーストリア=ハンガリー帝国の皇太子であらせられます。」
「やはり、一度あの方のお写真を拝見したことがありましたが、威厳に満ちたものをあの方から感じました。ただ、先程尋問されて少し怖かったですが・・」
「ルドルフ様は気難しいお方で、初対面の方に対しては警戒されるのです。ルドルフ様は貴方のことをお気に召されたのかもしれませんね。」
「何故、そう思われるのですか?」
「あの方は黒髪がお好きなのです。詳しくは言えませんが。」
アルフレートはそう言うと、頬を少し赤らめた。
他人の心の機微といったものに疎い平賀は、そんな彼の様子を見て首を傾げた。
「平賀、ここに居たのかい。」
「ロベルト。」
平賀と同じ腕に聖ペトロの刺繍が入ったカソックを纏った長身の神父―ロベルトが、彼の元へと駆けて来た。
「ロベルト、紹介いたします。こちらはアルフレート=フェリックス司祭です。」
「初めまして、アルフレート=フェリックス司祭。僕はロベルト=ニコラスと申します。ウィーンには、アウグスティーナ教会で起きた奇跡調査に参りました。」
「奇跡調査、ですか?」
アルフレートはロベルトの言葉を聞くと首を傾げた。
「はい。何でもアウグスティーナ教会の祭壇に、エリザベート皇妃様のお姿が浮かばれるとかで・・」
「わたくしがどうかなさったのかしら?」
突然背後から女性の声がして三人が振り返ると、そこにはお付きの女官達を連れた皇妃エリザベートが立っていた。
「皇妃様、大変ご無沙汰しております。」
「アルフレート、貴方と会えるのは久しぶりね。そちらの方々は、バチカンの神父様でいらっしゃるのかしら?」
「お初にお目にかかります、皇妃様。僕はロベルト=ニコラスと申します。こちらは僕の同僚の、平賀=ヨゼフ=庚神父です。」
「まぁ、麗しい神父様方だこと。そうだわ、これからお茶を飲みながら色々と神父様方とお話ししたいわ。アルフレート、貴方もいらっしゃい。」
「申し訳ありませんが皇妃様、先約が入っておりますので失礼いたします。」
「まぁ、それは残念ね。ルドルフに宜しくと伝えておいて頂戴。」
エリザベート皇妃はそう言うと、自分に一礼して去っていくアルフレートの背中を見送った。
「あの、皇太子様とフェリックス司祭は一体どのようなご関係なのですか?先ほどの様子を拝見した限りだと、お二人は親しい間柄にあると思われるのですが・・」
「アルフレートとルドルフは、子供の頃から仲が良いの。まぁ、アルフレートをウィーンに連れて来たのはルドルフだし、二人が仲良くなるのは当然ね。」
エリザベート皇妃はそう言って笑うと、ロベルトと平賀の顔を交互に見た。
「貴方達も、仲が良いのね。こうして寄り添っているところなんて、長年連れ添った夫婦のようだわ。」
「夫婦だなんて・・」
彼女の言葉に、ロベルトの隣に立っている平賀が羞恥で頬を赤く染めた。
「ここで立ち話をするのも何だから、わたくしの部屋にいらっしゃい。」

(さっきの平賀の反応は何だったんだ?)
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二人の天使 -Ⅰ-

2025年01月08日 | バチ官×天上の愛地上の恋 クロスオーバーパラレル二次創作小説「二人の天使」


表紙素材は、装丁カフェ様からお借りしました。

「バチカン奇跡調査官」「天上の愛地上の恋」二次小説です。

作者様・出版社様とは一切関係ありません。

二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。

「アウグスティーナ教会でエリザベート皇妃の姿が突然祭壇に浮かんだ?」
「そうだ。教会側は奇跡だと主張しているらしいが、その真偽を確かめる為にウィーンへ行ってくれないか?」
「わかりました。」
上司であるサウロ大司教に依頼され、平賀と共にウィーンへと向かったロベルトと平賀だったが、ウィーンで彼らを待っていたのは想像もしない出来事だった。
奇跡調査を前に、ロベルトは平賀と共に観光の為にハプスブルク家の宮殿であったホーフブルク宮殿へと向かった。
「じゃぁ僕は暫く宮殿内を見学してくるよ。」
「そうですか。ではわたしはアウグスティーナ教会へ行ってきます。」
フランツ=カール=ヨーゼフ皇帝の部屋の前で平賀と別れたロベルトは、彼の一人息子であり、マイヤーリンクで謎の死を遂げたルドルフ皇太子の部屋があるスイス宮へと向かった。
ウィーンへ行くと決まったその日から、ロベルトは以前から興味があったハプスブルク家の歴史―特に皇妃エリザベートとその息子であるルドルフに関する本を読み漁っていた。
美しい装飾が施されたミヒャエル門の前に立ったロベルトは、かつてルドルフ皇太子がその門をくぐった姿を想像しながらミヒャエル門をくぐり、スイス宮へと入った。
ホーフブルク宮殿もそうだが、スイス宮はバチカンのサン=ピエトロ寺院と遜色がないほど細部に美しい装飾が施された芸術品のような建物だった。

(ここを少し見学した後は、王宮図書館へ行こう。何か貴重な古書があるかもしれない。)

ロベルトがそう思いながらゆっくりと階段を上っていると、彼は視線を感じて踊り場の方を見た。
そこには、少し癖のあるブロンドの髪を揺らし、純白の軍服姿のルドルフ皇太子が立っていた。
彼は蒼い瞳でロベルトの顔をじっと見た後、何かを囁いてロベルトに背を向けて何処かへと去っていった。
ロベルトが慌ててルドルフ皇太子を追いかけると、廊下には誰も居なかった。

(何だったんだ、今のは?)

ロベルトがそんな事を思いながらスイス宮から外へと出ようとした時、彼は激しい眩暈に襲われ、その場で気絶した。
同じ頃、アウグスティーナ教会へと向かった平賀は、祭壇の前で跪き、ラテン語で祈りを捧げた。
その時、コツン、という軽い靴音が大理石の床に響いたかと思うと、平賀の隣には一人の青年が自分と同じように跪いて祈りを捧げていた。
ローマン=カラーに漆黒のカソック、そして法衣を纏っている青年が、自分と同じ聖職者である事は明らかだった。
彼は平賀と同じ漆黒の髪を持ち、時折祈りの言葉が紡がれる彼の桜色の唇は肉感的で魅惑的な平賀のそれとは違い、清らかでいて妖艶な雰囲気を漂わせていた。
やがて祈りを済ませた青年が閉じていた目を開くと、彼は隣で跪いている平賀を驚愕の表情を浮かべながら見つめていた。
エメラルドのような一対の瞳に見つめられ、平賀はまるで金縛りに遭ってしまったかのようにその場から動けずにいた。
「アルフレート。」
平賀と青年との間に流れる重苦しい空気を断ち切るかのように、背後から低いがとても澄んだ声が突然聞こえて来た。
二人が同時に背後を振り返ると、そこには純白の軍服姿の青年が立っていた。

(この人は、まさか・・)

平賀が青年を見つめていると、平賀の視線に気づいた彼が青年から平賀へと視線を移した。

その瞳は、恋人と同じ美しい蒼だった。

「そのカソックに刺繍された聖ペトロの紋章・・貴様バチカンの神父だな?」
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