マーケティング研究 他社事例 315 「アマゾン第二本社の狙いは？」 ～人材確保に動く巨大企業～

マーケティング研究　他社事例　315　「アマゾン第二本社の狙いは？」　～人材確保に動く巨大企業～


アマゾンが本社を構えるアメリカのワシントン州のシアトルとその周辺は、AI（人工知能）を始めとする先進分野の優秀なソフトウエアエンジニアリングが数多くいることで知られています。

マイクロソフト（MS）の本社やボーイングの拠点があることから、エンジニアが集まりやすい地域となっているようです。

それを下支えするのが、世界で有数のコンピューターサイエンス学科を持つワシントン大学です。

アマゾンやMSとの間で資金と人材が還流しているとも言えます。

近年は、ワシントン州政府も、シアトルをAI人材が循環する「AIエコシステム」と位置付けて、日本や中国などに投資を呼び掛けているのです。

アマゾンはこの地の利を生かして、電子商取引、クラウドサービス、レジなし店舗の「Amazon　Go」など様々なサービスを立ち上げて来ました。

そんなアマゾンが2018年11月13日、ニューヨークとバージニア州北部に第二本社を設置すると決めたのです。

狙いとして「中長期的には、シアトルのように、AIやクラウドのエンジニアが集まる場に成長させたい意向がありそうだ」とシアトルのベンチャーキャピタル、イノベーション・ファインダーズ・キャピタルの江藤CEOは指摘します。

というのも、シアトルがAI人材の草刈り場となっているからです。

ここ2～3年、アメリカと中国の名だたる巨大企業が研究開発拠点をシアトルに構える動きを進めています。

グーグルはこの地で規模を拡大しており、ワシントン大学にほど近い場所に建設中のビルに2000人以上を配転すると噂されているのです。

M＆Aも活発です。

中国のバイドゥは昨年、シアトルに本拠を置く音声AI関連のスタートアップを買収しました。

アップルも、AIによるビッグデータ解析を支援するトゥリを2016年に買収し、人材獲得競争に割って入ったのです。

トゥリのCEOだったカルロス・グエストリン氏はマシンラーニング（機械学習）の専門家です。

アマゾンがワシントン大学に寄付して設けた講座の教授職を今も兼任しています。

その名も「アマゾン・プロフェッサー・オブ・マシンラーニング」です。

ニューヨークとその周辺地域には、IBMハーバード大学やコロンビア大学、マサチューセッツ工科大学など一流のAI人材を擁するアメリカの企業や大学が集います。

アマゾンはこれに期待して、今年初めに絞り込んだ20の候補からこの地を選んだと考えられています。

リソースは豊富です。

課題は、このリソースを利用して、アマゾン自身がAI人材のエコシステムを一から作り上げる必要があるという事です。

シアトルでは、MSなどが既に築いていたエコシステムを利用できましたが、今度はそうはいきません。

加えて、地元自治体や住民との共存が欠かせません。

シアトルでは、エンジニアが集まり家賃や地価が高騰し、ホームレスの増大を招き、アマゾンの責任を問う声が高まった経緯があるのです。


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