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マーケティング研究 他社事例 742 「シナリオが狂う要因」 ~気候変動というリスク~

2021-02-01 09:35:49 | マーケティング
マーケティング研究 他社事例 742 「シナリオが狂う要因」 ~気候変動というリスク~


ここまで主要作物の近年と今後の動きを見て来ましたが、少なくとも10年後までは不足の心配はないように思えます。

貯蔵が効く穀物は、価格が高騰すると投資が加速し低迷すると投資が控えられると見られます。

供給の増減は経済的事情が大きく、2010年代半ばの供給過多は2000年代後半の穀物の価格上昇が農業設備投資を促したことで起こりました。

しかし、想定通りにいかないのが自然を相手にする農業の難しさでもあります。

例えば、気候変動が極端に起これば、楽観シナリオは大幅に狂います。

ブラジル中西部の大豆の生産地であるマットグロッソ州で9月、森林地帯の火災が激しくなりました。

原因は極端な乾燥で、海の水面温度が下がるラニーニャが背景にあると見られています。

一帯では乾燥による作付けの遅れも目立っています。

国連食糧農業機関(FAO)は、温暖化の影響をまとめた2019年の報告書で「干ばつが作物と淡水の供給を危険にさらす」と指摘し、国連は穀物価格が2050年までに2割以上高まる可能性を示唆しています。

国立環境研究所地球環境研究センターは「海面上昇によって沿岸部の淡水が塩水化し、ただでさえ厳しい新興国の水環境に甚大な影響が及ぶことも考えられる」と説明します。

将来、穀物地帯が次々に気候変動に見舞われる最悪のシナリオも考えられないわけではありません。

気候変動は穀物を減産に追い込むうえバッタ群を発生させるなど副次的なマイナス要素も生んでしまいます。

気候とともに食糧事情を揺るがす要素となるのが、先述した人口の増加です。

今後30年で世界人口が20億人ほど増えるという計算に従えば、増加する上位にインド、ナイジェリア、パキスタン、タンザニアといった新興国が並びます。

地域でみるとサハラ以南のアフリカの人口は現在の約2倍となる見通しです。

国連の劉振民・経済社会問題担当事務次長は「飢饉や栄養不良と闘うという取り組みに対し、人口増が追加的な課題を突き付けている」と警鐘を鳴らしています。

穀倉地帯が大打撃を受ける事態にならないとしても気候変動と人口増が同時に進行する地域は出て来ます。

そこでは収入が劇的に高まるウルトラCがなければ食糧枯渇の条件が整ってしまいます。

食糧が余るところと、足りないところが線引きされるという偏在、つまり格差が今後、さらに広がる公算が大きく、こうした格差は飢饉が遠い世界のことにも思える日本においても他人事ではありません。

日本の食料自給率はたった4割弱で、国策として国産品より輸入品を優先しているためと言えなくはありませんが、輸出国の事情によっては、突如として「不足サイド」に陥りかねません。

格差がもたらす象徴的な現象が食品ロスです。

日本では流通や消費段階で発生し「食べれるのに廃棄される食品」(消費者庁)と定義されています。

2017年度の推定は612万トンで、消費者庁は「飢饉に苦しむ人々に向けた食糧援助量の1.6倍に相当する」と強調しています。

(続く)



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成長クリエイター 彩りプロジェクト 波田野 英嗣 
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