◇五輪開催 渦巻く懐疑論
【記者の目】
メディアやIOC関係者、アスリートら五輪の再延期や中止にまで踏み込んだ発信が海外から続いている。ディック・パウンドIOC委員が7日、東京五輪開催に「確信が持てない」と語ったことが口火。トーマス・バッハIOC会長に考えが近いとされ、1年前も早々に延期の可能性に言及した同氏の発言が国際的な議論に火を付け、延期につながった。
1・21・2021
「観測気球で世論の反応を見た」という見方が強く、今回も同様の狙いが見え隠れする。
新型コロナの感染拡大が収まらない中でバッハ会長や菅義偉首相は東京五輪を「人類がコロナに打ち勝った証」と位置付けるが、バッハ会長が提案するアスリートのワクチン接種も実効性の根拠に乏しく、開催を後押しする空気の醸成に至っていない。個人の意見が尊重され、オピニオンリーダーとしての使命感を持つ新聞や放送局が提言や支持を表明することが珍しくない海外で、ネガティブな報道が続くのは開催に向けた説得力があるポジティブな材料や発信がないことに尽きる。
全豪オープンテニスでは昨夏の段階で中止や無観客など5段階の案を示し、開催への理解を求めてきた。国内世論8割超の五輪再延期、中止を求める声に対応するには無観客や国外からの観戦制限など思い切った対策を早期に示すしかないのではないか。
現役アスリートや海外選手団から中止を求める声が上がる前に手を打つ――。待ったなしの状況に来ている。
(五輪、外信担当・東 信人)