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経済基盤が安定すると、人は心に余裕を持ち、豊かな人生を送れることを多くの大家を取材して強く感じたという。
1万人の大家を取材してきた著者が、サラリーマンの定年後に毎月着実に家賃収入を得ることができる不動産で資産を増やす方法を伝授する。本連載は賃貸不動産オーナー向け経営情報誌「家主と地主」の編集長の永井ゆかり氏の著書『1万人の大家さんの結論!生涯現役で稼ぐ「サラリーマン家主」入門』から一部を抜粋した原稿です。
4/29/2022
空き家増加は新規参入者にとってチャンス到来
空き家全体の過半数を占めるのは賃貸住宅だ。
今、空き家が増加していることについて、住宅・不動産業界関係者でなくても知っている人は多い。2013年に発表された「住宅・土地統計調査」(総務省統計局)は、空き家が800万戸を超えたということで世間を賑わせた。2年後の2015年、国は「空家等対策の推進に関する特別措置法」を施行。市町村は、倒壊しそうな空き家の所有者に対して、除却、修繕、立木竹の伐採等の措置の助言、または指導、勧告、命令ができ、応じない場合は強制執行もできるようにした。
それでもなお、空き家は増え続け、2018年の調査では846万戸に達している。 こんな話を聞くと、それほどまでに家は余って いるのかと思う人は多いだろう。そこで押さえておきたいのは、空き家の実態だ。「空き家の種類別割合の推移」を見てほしい。空き家というと、前述したような法律まで施行されたことから、多くの人は放置されたボロボロの戸建てをイメージするだろう。だが、空き家全体の過半数を占めるのは、賃貸住宅だ。
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賃貸住宅の空き家率は18%ほどで、10戸のアパートであれば2戸空いているような状態だ。もちろん空き家率は平均値なので、満室の賃貸住宅があれば、半分以上空いている賃貸住宅もある。 半分以上空いているような賃貸住宅には、家主が経営を諦めているケースが多い。最初からあまり力を入れていないケースと、打つ手がなくて結果的に放置しているケースだ。
本来は建ててはいけない賃貸需要のないエリアの賃貸住宅であれば対象外だが、もしそうではなく、賃貸需要が見込めるのであれば、チャンスだ。よく空室だらけの賃貸住宅は、買った後が大変と避けている人を見受ける。
だが、「人の行く裏に道あり花の山」という株の諺にあるように、そんな賃貸住宅だからこそ安く買うことができ、宝物に変える可能性を秘めているのだ。
一方、戸建ての空き家は、2018年の調査結果では、5年前の前回調査と比較すると賃貸住宅よりも増加していた。そのため、賃貸住宅の空き家は前回調査よりも実数は増えているものの、比率については若干ではあるが、減っていたのだ。
空き家には空き家になるだけの理由がある。 大きく分けて3つ。
1つ目は住むのに不便な場所にあること、
2つ目は相続した人がすでに家を 持っているため利用しないケース、
3つ目は権利関係が複雑で放置されている場合だ。
本当の「空き家大国」は東京都という現実>都内に80万個の空き家が
1つ目は地方都市のケースが多いだろう。人口減少が進み、公共インフラも不十分な状況になると、そこに住む理由がなくなってしまうからだ。
2つ目は、大都市圏でも起こり得るケースで、両親との同居という選択をしなかった場合、子供たちはそれぞれ別の住まいを構えるため、両親が亡くなった後、空き家になった実家の処理に困り、放置してしまう。場所によっては第三者に貸すという方法もあるが、リフォームなどをしないと貸せる状態にはならず、投資コストを考えると二の足を踏むケースだ。もちろん、売却する道もあるが、生まれ育った実家を売却することに抵抗があったり、実際売りに出しても買い手が現れなかったり、という状況にあるようだ。
3つ目は、相続でもめて共有になってしまって売却ができなかったり、借地で地主と折り合いが つかず、そのままになっていたりというケースである。 活用も売却もなかなか進まない空き家は、所有者にとってはいわばお荷物。
だが、家主業を始めようという人にとっては、この戸建ての空き家も宝物となる可能性がある。「戸建て賃貸」として貸し出すことを考えれば、工夫次第で「お金のなる木」に変えることができるからだ。
実際、築年数の古い郊外の戸建てを購入し、家主業だけで余裕のある生活ができる人は、私の身近だけでも少なからずいる。彼らはこんな場所に賃貸需要があるのか、と思うような場所の戸建てを購入し、入居者を募集して契約し家賃収入を得ている。 詳細は後述するが、例えば、首都圏であれば千葉県の外房エリアで、都心まで出るには電車で1時間半ほどかかるような場所。だが、そんなエリアでも、趣味がサーフィンという 20 代、 30 代の人が入居者として見込めるという。当然、家賃は都心近郊よりも安いが、取得額も安いので収益性が高くなるケースは割とある。
空き家すべてを宝物に変えることができるわけではないが、賃貸需要があるエリアにも空き家はあるようだ。
ここで意外な調査結果を紹介しよう。先に紹介した「平成30年住宅・土地統計調査」に空き家率の高い都道府県ランキングと、低い都道府県ランキングが紹介されている。空き家率が最も高いのは山梨県で21・3%、2位が和歌山県で3位が長野県。空き家率が最も低いのは、埼玉県と沖縄県が同率で10・2%、3位が東京だった。
だが、この空き家率に惑わされてはいけない。 都道府県別空き家数を見てほしい。
全国で最も空き家数が多いのは、
なんと東京だ。
空き家率が最も高い山梨が9万戸なのに対し、
東京は80万戸もある。
本当の「空き家大国」は東京なのだ。東京に空き家という名の宝物が眠っているといえるだろう。
東京に限らず、
住宅総数の多い神奈川県には8万戸、
千葉県38万戸、
埼玉県34万戸、
大阪府70万戸、愛知県39万戸と、多くの空き家がある。
空き家には大いにチャンスがあるといえるだろう。
憧れの「サラリーマン大家」の魅力とは
永井ゆかり著『1万人の大家さんの結論! 生涯現役で稼ぐ「サラリーマン家主」入門』(プレジデント社)
家主業の魅力は、大きく分けて4つある。
1つ目は、本業と両立しやすく、確実に収入を増やせる事業である点だ。家主業は、基本的に不動産会社に管理業務を委託することができる。委託すると、入居者との契約や家賃の集金、入退去時の立ち会い、原状回復の手配、入居者からの建物の不具合や他のトラブルに関しての問い合わせまで対応してもらえる。そのため、緊急事態が起こらない限り、サラリーマンの就労時間への影響は少ない。
しかも、働き方改革の一環で、2018年に厚生労働省の「モデル就業規則」から副業禁止が削除され、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が提示されたことで、「副業解禁」の企業が増えた。会社に隠すことなく、サラリーマンも副業として始めやすい環境になりつつある。なお、書くまでもないだろうが、サラリーマンの就労時間外では、管理会社への連絡、空室対策、市場動向の情報収集など家主業を営む時間は必要である。
2つ目は、資金さえきちんと準備しておけば、金融機関からも融資を受けやすく事業として始めやすい点だ。ここで重要なのは、自己資金を準備しておくことである。
投資用シェアハウス「かぼちゃの馬車」は、自己資金ゼロでも不動産が購入できるというのが謳い文句だったが、サブリース会社が倒産した結果、借金返済で苦労している家主が増えたことから、金融機関が一斉に融資の厳格化を進めている。
しかし、この金融機関の姿勢について、10年以上前から始めている人の中には「厳格化」ではなく、「正常化しただけ」という声が少なくない。これまで、自己資金ゼロでも融資をしてきたこと自体が異常だったからだ。
たとえ、融資の審査が緩かった時代に、自己資金ゼロで不動産を取得し賃貸経営を始められたとしても、返済比率が高いために危ない橋を渡るような状況の人は少なくない。
最近では、自己資金として、購入予定の物件価格の最低2割、基本3割を用意することを融資条件として提示されるケースが増えている。自己資金が用意できなければ、始められない。だが、自己資金さえ用意できれば不足分を借金して購入でき、自己資金以上のリターンが期待できる。いわゆる「レバレッジ」が利かせやすい点は、メリットとして大きいだろう。
3つ目は、基本的には毎日あくせく働かなくても、毎月家賃が入ってくる点だ。満室であれば、ほとんど何もやらなくても家賃が安定して入ってくる。ただし、入居率が低いと毎月口座に家賃が振り込まれる金額が少ないばかりか、借り入れ返済への資金が不足するという事態になりかねない。満室で運営するためには経営努力が必要なのだ。
最後に4つ目は、不動産会社という存在のおかげで、生涯現役で稼ぐことができる点だ。
魅力の 1つ目でも紹介したように、委託すれば不動産会社が日常業務を担ってくれるので、家主が自ら動いて対応しなくてもいい。大半の業務をアウトソーシングできる事業なのだ。たとえ高齢になり、判断能力に問題が生じる事態になったとしても、「不動産信託契約 ※」を事前に締結していれば、家賃収入を受け取る状況を維持できる。
賃貸経営は良きビジネスパートナーを見つけられるかどうかが、成功できるかどうかに大きく影響する。
なお、資産運用として、よく株式投資と比較されるが、本連載では、家主業を不動産投資として捉えてはいない。むしろ、「投資」として捉えることにリスクがあると認識している。
金融機関は投資にはお金を貸さない。不動産投資にお金を貸すのではなく、不動産賃貸事業に貸すことを頭に入れておかなくてはいけない。
※不動産信託契約は、委託者が所有する物件の所有権を信託契約に基づき信託会社(信託銀行など)に移転。信託会社は信託契約に定められた管理・処分を行う。
信託の契約内容が賃貸物件の管理の場合、信託会社は自らまたは第三者によってその物件の賃貸管理を実施。一定の時期にその間の租税公課、共益費、管理費用や手数料などを差し引いた利益を受益者(委託者であることが多い)に配当する。
永井ゆかり 「家主と地主」編集長