(「河北新報」令和2年6月13日(土)付け記事より引用)
新型コロナウイルスの影響で、障害者の就労を支える福祉事業所がイベントなどでの販売機会を失い、深刻な打撃を受けている。売り上げの減少で工賃を減額せざるを得ない恐れもあり、宮城県内では事業所団体が県などに公的支援を要望した。関係者は「ネット販売への切り替えなど、一般企業のように『新しい生活様式』にすぐ対応するのは難しい」と訴える。
認定NPO法人麦の会が運営するパンとクッキーの店「コッペ」(仙台市宮城野区)は、5月の売り上げが前年同期より約3割減った。工賃は売り上げから必要経費を差し引いた額を支払うのが原則。平日のみだった販売を土曜も始めたほか、他の事業所と協力して「福の市」と称した販売会を市内で定期的に開いている。
コッペは就労継続支援B型事業所。障害者と雇用関係にないため雇用調整助成金は活用できない。工賃が減っても、公的な補償は受けられない。
国が福祉事業所に支払う報酬は、日割りの利用者数や平均工賃額で決まる。新型コロナの感染を懸念して利用を控える障害者も多く、報酬減少が職員の人件費や事業所の運営そのものに大きな影響を及ぼす。
障害者が働く共同作業所の全国組織「きょうされん」宮城支部は9日、県と仙台市に要望書を提出。(1)工賃減に対する独自支援策(2)福祉職の待遇改善(3)感染防止のマスク、消毒用アルコール確保への支援-などを求めた。
新型コロナを受け、京都市は工賃助成制度を設けた。星野公延支部長は「減少した売り上げ、工賃を戻すのは容易ではない。障害者が安心して通える居場所を確保するためにも、国や行政には迅速に対応してほしい」と話す。