ホルマリンのマンネリ感

北海道在住、ホルマリンです。旅行、怪しい珍スポット訪問、廃墟潜入、道内ミステリー情報、昭和レトロなどなど…。

日本一危険な参拝旅 太田山神社編 その2

2016-08-22 01:24:52 | ホルマリン漬け北海道 秘境編
8月6日(土) 12:40

猛暑の中、ついに太田山ふもとの階段を登り始めました。
日本一危険な参拝チャレンジ、スタートです。
私の少し前に、真っ黒のスポーツカーで来た若いカップルが登って行ったけど、あんな軽装備で大丈夫なのかな?


階段に欠けた形跡がある…。傾斜45度というほぼハシゴに近い階段は幅がかなり狭く、カカトまで乗りきらない(汗)。
しかも砂や砂利が溜まっているせいで平坦じゃない箇所もあり、危険度はかなり高くなっています…。
もし足を踏み外したら最下までまっさかさまです(^_^;)。

ふと、後ろを振り返ってしまいました…。


怖ッ!こんな階段見たことない…(^_^;)
先程も述べましたが、私は高所恐怖症なのでこういうのは苦手なんです…。
それこそハシゴよろしく上段に手を添えながら、恐る恐る登りきりました。

…はぁ。既に本殿までは諦めかけています(笑)。
一瞬(ホントに一瞬だけ)リタイヤしようかと思いましたが、すぐに考え直しました。

この神社、結構テレビでも取り上げられており芸能人も多数チャレンジしています。
私が記憶しているのはエドはるみあばれる君と、大好きな乃木坂46である。
確か乃木坂メンバーは4人チャレンジしていましたが、全員あの華奢な身体で登山を頑張っていました。

私がここでリタイヤしてしまったら、自分より年下の少女たちに負ける事になる。
それは男として情けない。

ということで、本殿まで頑張る事にしました(笑)。


階段の後は、ご覧の通りのゴツゴツした急斜面。
付近の木には参拝者用のロープが何本も、ギッチリ結びつけられています(^_^;)。
痛々しく思えてしまうが、まぁそうなっちゃうよね。


それにしても、よくこんな狭い部分に鳥居を立てたものです。
奉納された年を見てみると昭和56年(確か)と意外と新しいが、人間の信仰心とは恐るべきものです。

…そんなことを考えながら手をついたすぐ傍に、太めの木の枝が。
よく見るとうにょうにょ動いている!
驚いて手をひっこめると、ソイツはのたうちながら急勾配の斜面をビタンビタン落ちて行きました(!!!)

イイィイィィイやぁあぁああぁぁぁぁ!!!

ブッといマムシでした(^_^;)。
枝だと思ってチョット触ちゃったよ!ヌメッとしてたよ!
結構デカい声出ちゃったよ!!


これは…道なのか!?
噂に聞いていた通り、急斜面にのびる参道はかなりハードな模様。
常に足を置ける部分を探しながら、体全体を使いながら上へ進んで行く感じです。


途中にはこのように足掛かりが作られた箇所もあります。それでも段差がかなり高い。
支えの板がボルトやら木の板やらでものすごい固定のされ方をしている。


えげつない高低差!!
ついさっき通った鳥居があんな下に…(^_^;)。
終始こんな感じの参道なのでしょうか?


…と思いきや、平坦なけもの道が現れました。
しかし道は狭く、右側の斜面は10数メートルは落ち込んでいる感じです。足を滑らすと上まで戻ってこれなさそうなので、ココも気を抜けない。
そしてそんなけもの道の先には中々の水量のが横切っていました!
日本一危険と言われる参道は次々と変化する。さすがである。


ハシゴ登場!!(^O^)/
こちらは太田山神社の名物ポイントの一つです。
一瞬怯みましたが、角度が比較的緩やかだし高所的な風景でも無いので、ここまではまだまだ楽勝。
…ちなみに乃木坂46の西野七瀬さんは、このハシゴを満面の笑みでクリアしていました(笑)。


大汗かきながらゴツゴツした山道をひたすら登っていくと、斜面の上に木製の鳥居が。
12:50 女人堂に到着。

さすがは道南五大霊場のひとつと言われる太田山神社。かつて本殿のある山頂付近は女人禁制とされており、山の中腹に女性参拝者のためのお堂が造られたわけです。
この山が霊験あらたかな聖域だという事を実感しますな。

いったんこの場所で休憩…といきたいのですが、さっきから蚊とアブ?がスゴい
立ち止まると相当な数の虫たちに囲まれるので油断なりません。
しかも蚊に関しては札幌で見かけるような小さいものではなく、黄色と黒のシマシマが入っている巨大サイズ
刺されるとヤバそうなのは言うまでも無い。

のんびり座ってられないので、軽く水分補給して再び出発です…。


急な参道には、ご覧のように常に登山用のロープが張られています。
私も遠慮なく使用させて頂いているのですが、ポールの根元が多少グラッとしている所があるので完全に信用できません(^_^;)。
また、足元には大小さまざまな石があり、足を乗っけるとたまに落石が発生します
いったん転がると参道の下の方まで急速に落ちていくので、前後に参拝者が居ると非常に危険
です。
この神社は一人で参拝するのが最も賢明でしょう。



ひとり歩きにくい道と格闘していると、上の方からカップルが降りてきました。
むむ。よく見たらこの人たち、せたなの手前でさんざん煽ってきたレガシィ・アウトバックの人じゃねぇか…(笑)。

…しかし挨拶がてら話してみると意外にも良い方。
まだ先が長いんで、ゆっくり行った方がいいですよ!」と彼氏。

「崖の上まで行けました??」と聞いてみると、ものすごく満足げな笑顔で
はい!(*^O^*)鎖のぼって!!」と答える彼女。

う~ん、なかなか逞しい彼女さんだこと。
私は無理かもしれない…(笑)。


最初のあの階段で、高所がダメすぎて既に限界を感じたホルマリン。
崖の上の本殿とやらがどのような感じなのかはまだ分かりませんが、数メートルをクライミングしなければならないという話なので、すでに戦意喪失しています(笑)。
そんな私の前に現れたのは、道に横たわるボッキリ折れた巨木。
オイオイ、何があったの!?


幸い、木を避けて新たな道が出来ていたので難なく先へ進みます。
しかしアレ、山頂の岩肌からの落石のせいだったらシャレにならないよね…。

次回!ついに本殿へ…!
しかしそこには天国に最も近い橋が…。

続く。
コメント (4)
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日本一危険な参拝旅 太田山神社編 その1

2016-08-16 01:46:15 | ホルマリン漬け北海道 秘境編

大秘境にそびえる山岳霊場―




日本一危険な神社」を参拝する!


「日本一危険な神社」と呼ばれている太田山神社をご存知でしょうか。
道南・せたな町大成地区というものすごい秘境に存在するこの神社は北海道最古の山岳霊場とされており、標高485メートルの太田山の中腹に本殿が存在しています。
本殿までの道のりは恐ろしいほど険しいという噂で、急な階段に高低差の激しい山道、さらには崖を垂直に登るといった試練が次々と襲いかかり、素人には参拝は難しいといいます。
道中は常に登山用ロープが張られており、滑落や落石の危険に怯えながら進まなくてはならず、冗談じゃなく命の保証ナシという、とんでもない神社らしいのです。

例によって私はこの場所に行ってみたいと数年前から思い続けておりました。
秘境の神社なので、札幌から公共交通機関を使っての訪問は到底ムリ。車をゲットしたら真っ先に行こうと考えていた場所です。
5月に念願の愛車を手に入れ、今年こそついにそのチャンスが。
8月のとある休日、車中泊をしながらの1泊2日の参拝旅へと出発しました。

お待たせしました。2016年夏の旅、スタートです。

8月6日(土)。

早朝5時に札幌を出発。
愛車エリオ君に毛布を積み込み、ひとり小樽方面へ向かいます。

運よく週末は快晴の予報。車窓から見る日本海は美しく透き通っていました。
ここ数週間、この日を楽しみに仕事を頑張って来た感じです。今年は夏を満喫できますかね?(^O^)

いきなりガソリン切れのピンチ、さらに道を間違えてトーマル峠とかいう無人の山道に迷い込んだりと色々ありましたが、8時ごろに積丹半島を抜けて岩内へと到着。
道の駅の駐車場で朝食を食べ、再び出発。


9:39 道の駅「みなとまーれ寿都」に到着

延々と海沿いの道を走って来たけど、寿都の海がこんなに綺麗だとは思わなかったなぁ~。(写真無くてすいません…)
風力発電の近くで一回休憩すればよかったかな。
それにしても、やはりせたな町は遠い。




車通りがそれほど無いので、景色を楽しみながらマイペースに運転し続け…。
10:50 ようやくせたな町へ。


しかし、目指す太田山神社はまだまだ遠い。
市街地を抜け、峠を超えた後に国道を逸れます。
大成集落の細い道を抜けた後、さらに奥の太田集落へと進む。

道路は車1台通るのがギリギリの箇所があったりと、次第に秘境の雰囲気に。
片側1車線の部分もありますが比較的新しめで、路肩に目をやると旧道らしき細道が草に埋もれています。

ここ…つい最近まで車で行くのも容易でない僻地中の僻地だったのではないか。

新しそうなトンネルを延々と越えていくと、視界が開けました。
11:57、山の麓の太田集落に到着しました。


家はポツリポツリと数えるほどしか存在しません。
道路が整備されるまで、ここの方々の交通手段はしか無かったのでは…。
細道を延々走ってたどり着いた先は、驚くほどの大秘境でした。

そしてそびえ立つ岩山、あれこそ神社のある太田山です!!


…海が驚くほど透き通っています。
車を降りてみると予想以上に暑い。山の方からセミの大合唱が聞こえてきます。

集落から少し離れた道路沿いに、太田山神社の拝殿が建っていました。




太田山神社の創立は嘉吉年間(1441~1443年)といわれています。
もともとアイヌの人々から航海の神「オホタカモイ」が宿る山とされていた太田山。亨徳3年(1454年)に松前藩の祖、武田信広公に太田大権現の尊号を与えられ、太田山神社は航海の安全を願う場として信仰されてきました。円空などの僧侶や松浦武四郎などの探険家も訪れているほか、阿部比羅夫の伝説も伝わっているそうです。
…ところで円空といえば秘境・小幌駅を思い出します。道内の秘境には円空の伝説が多い。

拝殿より太田山神社の全景を望む

…え~、山のふもとに参道入り口の鳥居が見えます。
そしてゴールとなる本殿は山のはるか上部、岩肌の中腹辺りのようです(^_^;)
かなりの高低差がありますね…そして予想以上の急斜面。

信じられない事に本殿が見えます。

断崖絶壁に小さく開いた洞窟のような部分、そこに向かって小さな橋とクライミング用の鎖が続いているように見えます(!!)
本殿は結構ヤバい場所にあるという話は聞いていたのですが、まさかあんな場所を登らなくてはならないとは…(^_^;)。
ボク高所恐怖症ですよ。どうしよう。

太田山神社 参道入り口

拝殿からてくてく歩いて、ついに神社の入り口へと到着しました。
ずっと来たかった場所です…っていうか階段の角度を見てください!!!


傾斜45度の恐ろしすぎる階段。

太田山神社の入り口に立った参拝者をいきなり震えあがらせるのが、この139段の石段。
これ、下手すりゃ転げ落ちるよね…。まず階段なのにロープが備え付けてあるのがおかしい。

鳥居の前には不吉な注意書きがたくさん…。

落石等の危険もありますので、参拝に当たっては充分注意して登ってください」
「敷地内等で発生した事故等については、当神社では一切の責任を負いません。

果たして、無事に戻ってこられるのでしょうか…(^_^;)。
いったん車に戻り、登山用の服装に着替えている途中、ガラスの外に巨大スズメバチが止まっているのを発見して余計に戦意喪失してしまいましたが、ここまで来て引き返すわけにはいきません。
12:41、顔を強張らせながらも、少しずつ階段を登り始めました。


巨大爬虫類!猛毒昆虫!滑落寸前!
「日本一危険な神社」の称号は伊達じゃなかった!
続く。
コメント (10)
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日本最強の秘境駅 小幌駅(後編)

2015-07-17 12:45:55 | ホルマリン漬け北海道 秘境編
(2009年取材 当時の記事に加筆・修正)
前回からの続きです!

・本当の秘境・小幌洞窟遺跡

トンネルと崖に囲まれた小幌駅から、唯一のびる海岸への細道を歩いてみる。
実はかつてこの細道の脇には小さな待合室があり、なんとホームレスが1人住んでいたという。彼は「小幌仙人」と呼ばれ、マニアの間では有名な存在だったという。
数年前にその仙人が亡くなり、待合室は取り壊された。現在は仙人の住んでいた痕跡はおろか、待合室の建っていた跡すら確認することはできない。


少し細道を歩くと、分かれ道にぶつかった。右へ行けば海岸に出られるが、左は・・・。
・・・小幌洞窟遺跡?
気になったので、左に行ってみることにする。


道は急な上り坂で、かなり狭い。前日降った雨のせいで足元はぬかるみ、歩きづらい。足を踏み外すと、右側の崖にまっさかさまなので、慎重に足を進めなくてはならなかった。
聞こえるのは鳥の声と、はるか下に打ち付ける波の音、そしてかなり遠くを走る国道の橋を渡る自動車の音。
坂を登りきると、今度はつづら折りの急な下り坂。途中にはロープもあり、かなり急であった。

ロープを頼りに、転ばないように気をつけながら道を下りていくと、急に視界が開けた。


入り江だ・・・。


数分道を下り、ようやくその入り江に出ることができた。駅から20分ほどの道のりだっただろうか。
周囲を見まわすと、この場所は崖と森に囲まれていて、僕が今まで歩いてきた道以外、つながっている道がない。つまり、この場所は、駅から20分歩いてくるしか方法はない「秘密の入り江」なのだ。

…それにしてもいい場所である。現在この空間にいるのは自分だけで、自分だけのプライベートビーチ状態だ。駅から20分歩いてきただけなのに、ものすごい秘境に来た感じである。
ちなみに手前のコンクリートの人工物はたぶん桟橋。船もやってくるようだ。

ふと、もう一度入り江全体を見渡すと、あるものに気が付いた。


…なんか鳥居がある!!
どうやらあれが小幌洞窟遺跡らしい。少し不気味だが、近づいてみよう。


なんだか不思議な雰囲気・・・。「史跡・岩屋観音堂」とある。


暗い洞窟の中には、小さな仏像が何体か置いてある。一番奥には、祠のようなものが。中は真っ暗で、何があるのかは分からなかった。

洞窟の近くに建っていた説明板を読んでみる。

岩屋観音
通称 首なし観音
1666年、僧円空が、この洞くつで仏像を彫って安置した。
修行の僧が、熊に襲われこの仏像の後に隠れて、難を逃れた。仏像の首を熊に食いちぎられて以来「首なし観音」と言われてきた。
1894年、泉藤兵衛により首は修復された。と伝えられている。
祭礼は、9月16、17日に行われる。

(すべて説明板より)

…何とも不気味というか、秘境に佇んで一人で読むには恐ろしすぎるお話である(汗)。
どうかクマに襲われませんように…。

12:30 もう昼なので、洞窟の前の岩場に腰をおろし、海を見ながら持参の弁当を食べる。実に静かで贅沢な時間であった。


・思わぬ出会い

入り江からまた20分歩き、再び小幌駅に戻って来た。時刻は1時。意外と時間がたつのが早い。
先ほど駅にいた作業員たちは建物の中に入って行ったらしく、とても静かだ。

ふと、ホームに僕と一緒に降りたおじさんがいるのに気づいた。
現在、この空間にいるのは僕とおじさんだけ。2人が話さないわけがない。

このおじさん、見た目は怖そうな感じだったが、話してみるととても穏やかな方であった。
なんとこの人、札幌市白石区の人で、赤電車の時から僕と同じ列車に乗っていたという。つまり、札幌市の全く違う場所に住んでいた2人が、札幌からはるか遠いこの小幌駅で出逢ったわけである。なんだか不思議な気分~!
彼は鉄道マニアというわけではなく、友人の紹介で小幌駅の存在を知り、おもしろそうなのでやってきたという。もちろん、僕と同じく1日散歩きっぷを使って。
おじさんとは妙に話が合い、趣味の話などでかなり盛り上がった。


しばらく話していると、あっという間に時間は午後3時。
おじさんは、もうすぐやってくる下り列車で帰るという。僕も本当はこの列車で帰りたいが、この列車に乗ると帰宅が約1時間遅れてしまうので、ガマン。

そのうち、例のサイレンが鳴り始め、トンネルの中から1両編成の列車がゆっくり出てきて、止まった。

じゃあ、また会いましょう。」とおじさんは僕に別れを告げ、列車に乗り込んでいった。
彼は列車の窓からもう一度、こっちに向かって手を振った。僕も笑顔で手を振り返す。


じゃあ、また会いましょう。
ゆっくりとトンネルに入っていく列車の後ろ姿を見ながら、おじさんの言葉を思い出す。名前も住所も知らない彼と会うことは、もう二度とないだろう。
旅は一期一会。なんだか切ない気分・・・。


・小幌駅の真実

帰りの列車まで残り約30分。おじさんがいなくなり、僕は日が傾きかけた小幌駅の上りホームに1人で立ち尽くす。
そのうち、建物から先ほどの作業員たちが出てきて、ホームに上がってきた。この人たちも僕と同じ列車で帰るようだ。

ふと、作業員たちの中でいちばんご年配の方(50代後半くらい)が僕に話しかけてきた。「どこから来たの?」と聞くので「札幌から来ました」と言うと、「へ~わざわざ札幌から!?」と関心しているというかあきれた感じの反応をしていた(笑)。
なんだか小幌駅についていろいろ知っていそうな方なので、チャンスとばかりにいろいろ聞いてみる。

ここは昔から作業員のための駅なんですか?
前は信号場だったんだよ。下の海岸には海水浴場もあってね、降りる人は結構いたんだ。昔は上の道路から簡単に降りてこれたんだけどねぇ…。

えっ、それは知らなかった。こんなところが海水浴場だったなんて。現在のひとけのない雰囲気からはとても想像できない・・・。なんだか小樽の「オタモイ海岸」を思い出した。

今はこの駅で降りる人っているんですか?
あぁ、もうすぐ釣りのシーズンだから、釣り人がときどき来る。この辺りはカレイがよく釣れるらしい。

そんな事を話していると、またあのサイレンが鳴り始めた。時計を見ると、列車が来る1分前。ようやく帰りの列車、もとい、この閉鎖空間からの唯一の脱出手段、がやってくる。


トンネルの奥から、列車の音がだんだんと聞こえてきた。大きくなってくる二筋のライトの光。

そしてトンネルの出口から、2両編成の新型車両がヌウッと出てきて、僕の前で停車した。
ドアが開いたときに妙に安心したことは言うまでもない。

作業員たちに交じって乗車し、ガラガラの席に座る。

思い返してみると、小幌駅という不思議な空間での4時間は、思ったよりも短かった。しかし、その短い時間の中で、僕は数え切れないほどいろいろなことを体験したようにも感じる。
それは、今日ここに訪れなかったら体験できなかった様々な事。
一生の思い出に残るような有意義な4時間だった。

列車は小幌駅のホームからゆっくりと動き出した。すぐに真っ暗のトンネルに入り、夕暮れの小幌駅はあっという間に見えなくなった。
帰りの列車に乗れたという安心感で、僕は列車のイスで、ぐっすりと深い眠りに落ちていった。

日本最強の秘境駅・小幌駅訪問、
完。
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日本最強の秘境駅 小幌駅(前編)

2015-07-17 11:55:11 | ホルマリン漬け北海道 秘境編
(2009年取材 当時の記録に加筆・修正) 

 秘境駅訪問家・牛山隆信氏の「全国秘境駅ランキング」で堂々第1位、「キング・オブ・秘境駅」と呼ばれ、最近はマニアだけでなく一般の人にも有名となった駅が、室蘭本線に存在する。
 小幌(こぼろ)駅。もともと保線作業員のための駅であるため、周囲には深い森以外、何もない。後方は崖、両側はかなり長いトンネルに挟まれていて、どこに行くこともできない。唯一、海岸に降りる細い道はあるらしいが、その海岸も、まわりは断崖絶壁で、外界に出ることは一切できないという。この駅でいったん降りてしまうと、次の列車が来るまで駅から一切脱出不可能、まさに「陸の孤島」という言葉がぴったりの、すさまじい駅なのである。もちろん、降りる人はほとんどいない(いても、物好きか鉄道マニアくらい)。
 「キング・オブ・秘境駅」自分もその駅に降り立ってみたい。ということで、僕は小幌駅訪問の計画を立てることにしたのだが、なにしろ駅に止まってくれる列車が少ない(笑)。さすがに一般の人ならまず利用することのない駅なので、各駅停車も通過してしまうのだ。
 そんな少ない列車本数の中で、僕は午前11:34小幌駅到着の長万部行き下り列車で訪れることにした。しかし、この時間に駅に降りてしまうと、1つ問題があった。
 それは、帰りに乗る上り列車が午後15:26までないということである。つまり、小幌駅に約4時間も滞在することになってしまうのだ。他のプランも考えようにも、札幌からかかる時間や帰宅時間を考えると、僕が降りられるのはこの時間しかない。
 何もなくて誰もいない完全閉鎖空間で4時間も耐えられるのか…。そんな不安を胸に、旅は始まる。


・・・キング・オブ・秘境駅「小幌」駅から4時間脱出不可能!?襲いかかる特急列車の恐怖、秘密の入り江、そして見つけた謎の洞窟。はたして生きて帰って来れるのか!?
これは―
1人の高校生が、小幌駅4時間滞在に挑んだ
全記録である。



2009年10月24日・早朝。

さて、まず始発の地下鉄で札幌駅まで行き、6:48発「快速エアポート」に乗り込む。
今回、小幌駅訪問に使用するのは、JR北海道が毎年、休日・夏休みと冬休み限定で販売している「1日散歩きっぷ」。わずか2200円(注:2009年当時)でフリーエリア内の普通列車・快速列車が1日中乗り放題という超お得きっぷだ。普通にお金を払って小幌に行って帰ってくるよりも断然お得なので、なんともうれしい限りだ。

南千歳駅で快速エアポートを降り、7:22発東室蘭行に乗り換え。古くさい赤色の電車にかなり揺られて、9:04、ようやく東室蘭に到着。
次に乗る列車は約1時間の待ち時間があり、10:00、いよいよ小幌駅へ向かう列車が来たらしいので、ホームに降りる。

ホームにいたのは、かわいらしい2両編成。しかし車両に乗り込むと、とあるアナウンスが。
この列車は、豊浦駅で後ろの車両を切り離します。

…えっ、そんなのあり!?
札幌近郊ではまずあり得ない車両切り離しというアナウンスに、僕は少し戸惑ってしまった。豊浦駅と言えば、小幌駅の3つ手前の駅。やはり秘境だけに、利用者が少なくなるということか・・・。

列車は太平洋沿いをのんびり走る。この日は快晴なので、地平線まで見渡すことができた。
列車の低く味のある警笛を聞きながら、窓から浜辺の小さな村を眺めていると、気分は上京する若者である。
そして列車は豊浦駅に到着。アナウンスの予告どおり、駅員が出てきて、後ろの車両を切り離している。その作業風景は、人の全くいない秘境駅、小幌駅がじわじわと近づいているということを嫌でも実感させる物であった。もうすぐ、たった一人の4時間が始まるのだ。しっかり気を引き締めなくてはならなかった。

後ろの車両がなくなり、身軽になった鈍行列車は、まだ心の準備ができていない僕を乗せて、どんどん”秘境”に近づいていく。

列車は礼文駅に到着。とうとう次が小幌駅だ。しかし礼文駅周辺は、まだ人家も比較的あり、ほんとに次が「キング・オブ・秘境駅」なのか、と疑ってしまった。
しかし、その疑いはすぐに消えた。礼文駅を発車すると、列車は坂をどんどん登り、山岳地帯へ入り込んでゆく。トンネルも多くなってきた。そして3つ目くらいのトンネルに突入したところで、ついにその時が来た。
「まもなく、小幌です。」

利用者のほとんどいない駅なのに、他の普通の駅と同じように流れる女性のアナウンスが、やけに不気味だった。


・ついに小幌駅へ!

列車が、かなり長いトンネル内で減速し始めた。駅はもうすぐそこだ。
はっきり言って、まだ降りたくなかった。
これからたった一人で過ごすことを考えると、怖かった。
期待より不安の方が、断然、大きかった。

まだ心の準備ができていないが、列車は待ってくれない。降りるため、席を立ち、ドアへ向かう。
ドアのガラスに反射した乗客の様子をみると、全員、自分の方を見ている。「まさか、降りるのか!?」といった顔で。

トンネルを出たと同時に、ついに列車が停止した。
しかし次の瞬間、僕の不安はぶっ飛んだ。

アレ?やけにひとけが。
何と駅では7人ほどの作業員が保線作業の真っ最中。さらに、僕の後にもう1人、おじさんが下車した。この人も秘境駅マニアかな?
今までの不安は何だったんだろう。全然一人ぼっちじゃないではないか。少し安心した気分でホームに降り立つ。

自分とおじさんを降ろすと、列車はうるさいディーゼル音を響かせながら、ゆっくりと長いトンネル内に消えていく。
だんだんと見えなくなってゆく赤いライトを見送った。
うわ・・・。何この心細くなる光景・・・(汗)。


興奮冷めやらぬ状態で、改めて駅全体を見回してみる(一緒に降りたおじさんはどこかへ行ってしまった)。
…すごい!!なんという所に駅が!
かなりの山奥にあることは言うまでもないが、一言で言うと「トンネルに挟まれた駅」。


僕が降りた下りホームは、なんとトンネル出てすぐ。かなり短いホームなので、2両編成の列車が来ると(ときどきだが)、後ろの車両はトンネルの中、というふうになってしまうらしい。
鉄板でできた簡易型のなさけないホームである。
ちなみに、向かい側にある上りホームは、コンクリート製の比較的立派な物であった(こっちも短いけど)。


長万部側を見てみる。こっちもトンネル。反対側のトンネル出口から、こっちのトンネルの入り口まで、100mもないだろう。これが「キング・オブ秘境駅」と呼ばれるゆえんか・・・。
ホームの柵にくくりつけられた時刻表によると、1日に小幌駅に停車する列車は、上り(長万部方面)が5本、下り(東室蘭方面)が3本のみであった。それ以外はすべて通過してしまう。

保線作業員の方に変な目で見られながら、駅周辺を観察する。

下りホームにある駅名標。なぜかススのようなもので薄汚れている。その恐怖の理由は、このあと思い知ることになる。


ホームのすぐそばには、作業員の事務所か、休憩所とおぼしき建物があった。線路を挟んだ反対側にも、倉庫のようなものが。もちろん、中には入れない。


駅構内には3本の線路が敷かれているが、真ん中の一本は現在使われていない。3つあるトンネルの出口も真ん中がふさがれていた。
ちなみに、駅周辺は森林のみで、さぞ静かだろうと思っていたのだが、駅のはるか上の方に国道の橋が見え、自動車が橋を渡る「カコンカコン」という音がかすかに聞こえてくる。
むろん、その国道にたどりつくのは不可能であろう。


線路に立って撮影していると、突然、不気味なサイレンが鳴り始めた。しばらくすると、スピーカーから女性のアナウンスが。
列車が入ってきます。線路を横断しないでください!
急いで下りホームに避難する。


そのうち、トンネルの奥から「ドカン!!」という振動とともに、カビ臭い風が吹いてきた。列車がトンネルに入ってきたようだ。
列車が近づいてくるにつれて、その風がだんだんと強くなってきて、ついには台風並みの暴風に!あまりに強いので目も開けていられず、ホームに普通に立っていられない!
そして、列車の轟音がものすごい勢いで近づいてきた。嫌な予感・・・。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・。


ギャーーーーーー!!!
特急だった~!!



恐ろしいほどの暴風!!耳に突き刺さる爆音!!
響き渡る警笛!!


…列車は猛スピードで、あっという間にトンネルの中に見えなくなった。
このホーム、かなり狭く、限界まで後ろに下がっても目の前を特急が通過していくので、立っていると生きた心地がしない!

列車が去った後のホームは、ディーゼルの出すものなのか、濁ったほこりっぽい煙で覆われ、周囲がかすんで見える。なるほど、駅名標が汚れていたのはこのせいだったのか。
そう、この小幌駅、「キング・オブ・秘境駅」と呼ばれているが、幹線である室蘭本線に存在しているため、
頻繁に列車が通過する。
上り・下りの特急はもちろん、貨物列車、さらには1両編成まで、かなりの数の列車が最高速度で通過する。そのたびにこの恐怖を味わわなければいけない。

…ホームにいるのが怖くなったので、次は海岸に行ってみることにする。

次回!
不気味な洞窟を発見し…駅の謎も明らかに!

その2へ
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秘境駅探訪 札沼線豊ヶ岡駅

2015-07-17 11:16:40 | ホルマリン漬け北海道 秘境編
(2009年取材 当時の文に加筆・修正)

 札幌市から石狩平野を通って新十津川まで延びている札沼線(愛称・学園都市線)。札幌~石狩当別間は、住宅街の中を走るので通勤・通学などで使う人が多く、にぎやかである。しかし石狩当別を過ぎると、列車は広大な田園地帯の中を走り、利用者は格段に少なくなる。そして終点の新十津川まで行く列車は1日3本と、かなり少ない。
 そんな石狩当別~新十津川間にある「豊ヶ岡」駅は、辺りに何もない「秘境駅」としてマニアにはかなり有名。秘境駅ブームの火付け役、牛山隆信氏の「全国秘境駅ランキング」でも21位にランクインしている。
 豊ヶ岡駅、札幌からそれほど遠くはないので、訪問することにした。

2009年10月18日早朝。日曜日で客もまばらな札幌発普通列車に乗って石狩当別駅にやってきた。ここで新十津川行きに乗り換える。向かいのホームに停車していたその列車はなんと

1両編成!!ワンマン!!
JRにもめったに乗らない僕にとって、1両編成に乗るのはもちろん初である。いや~ワクワクしてきた。
列車内には乗客がわずか3人。エンジン音を響かせながら、田園地帯の中を快調に進んでゆく。

石狩当別駅で15分ほどの停車時間の後、再び出発。いよいよ次が豊ヶ岡駅だ。

さっきまで田園地帯の中を走っていた列車だが、ここに来て林の中へずんずんと入ってゆく。人家が全く見えなくなったところでようやく豊ヶ岡駅に到着。切符を運転手さんに見せる。
「なんでこんなところで降りるの?」と変な目で見られると思ったが、運転手さんは笑顔で「ありがとうございました。」

降りたのは言うまでもなく自分一人。
ドアが閉まり、列車はゆっくりと駅から遠ざかって行った。次の列車は1時間36分後。ゆっくり探索できる。


さて、あたりを見回してみると、ホーム周辺は林だけで、何もない。ポツンとホームだけがそこにあるといった感じだ。さすがに有名な秘境駅だけある。ときどき遠くの方から車の音が聞こえるが、かなり静か。虫の声だけが響く。



ホームから少し離れたところに、ちっぽけな木造の待合室があるが、そこは後で入ってみることにして、待合室横の砂利道を登ってみる。
数分登ったところで、小さな道路に出た。この辺は家が数件あり、人の気配もある。
跨線橋があったので、そこから駅を見下ろしてみると、なんともすごい光景だ(下の写真)。ホントに林の中にぽつんとホームだけがある事がわかるだろう。

この場所、有名な撮影場所らしく、跨線橋の金アミには写真を撮りやすいようにご丁寧に穴が開けられていた。おそらくマニアの人が無理やり壊して作った穴だろう。
う~ん・・・、アミを壊すのはよくないことだが、僕もこの穴から写真を撮らせていただいた(←オイ!)


駅に戻り、次は待合室に入ってみることにする。外観からして、かなり昔からある待合室だろう。入り口の上に掛かっている札には木彫りで「豊ヶ岡駅」。良い雰囲気。


滑りの悪いガラス戸をガラガラとあけて足を踏み入れると、昭和の香りがモワ~ン。かなり小さな内部には小さな机と、木製のベンチが2つ。ベンチには手作りの座布団が2つ置いてあった。しかしベンチはホコリっぽく、クモの巣だらけだったので、座る気にはなれなかった。また、そこらじゅうを何匹ものハエが飛び交っているので、居心地はよろしくない。
壁には、いろいろな人が撮った豊ヶ岡駅の写真がずらりと貼ってあった。

机の上には、秘境駅には定番の「駅ノート」があった。駅ノートとは、その駅に訪れた人が自由に書き込みのできる、その駅備え付けのノートの事である。もちろん僕も書き込みをした。

列車が来るまでまだまだ時間があるので、ノートを読む。有名な秘境駅だけあって、道内はもちろん、本州からわざわざやってくる人も多いようだ。そしてみんながこの駅の雰囲気やロケーションに感動した、ということを書いている。そして驚いたのは、デートとしてカップルで訪れる人も多いということ。
ノートの中には、秘境駅訪問家・牛山隆信氏の書き込みもあり、感動であった。

列車が来るまで残り30分。ホームに戻り、子供みたいに線路を渡ったりして遊んでいると、あっという間に残り3分。


ホームに上がって待っていると、ようやく遠くからライトの明かりが見えてきた。新十津川で折り返してきたさっきの1両編成だ。運転手さんもさっきと同じ方。列車に乗り込むとき、運転手さんにはなんだか少し恥ずかしかった。

豊ヶ岡駅での1時間30分弱。特になんにもしなかったが、、妙に充実した時間であったと感じた。

完。
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