プロローグ ~与那国島と波照間島~
2023年5月、ついに30歳の誕生日を迎えてしまった。
三十路である。未だに実感が無い。
同年代のLINEのアイコンが順調にウエディングフォトや赤ん坊の画像になってきているが、私はというと20代からの変化はほぼ無い。
相変わらず苫小牧の古いアパートで1人暮らしだし、世帯無し、年収は変わらず。
朧げながらも結婚の選択肢がようやく現れ始めたぐらいか。
子どもを持ちたいなどという願望は(自分も相手も)持っていないので、特に焦りも無くマイペースである。良いのか悪いのかは分からないが。
さて、もう何年も前からの野望で、30歳になったら「三十路記念の旅」がしたいと思っていた。
行き先は日本最西端の沖縄・与那国島と有人島日本最南端の同・波照間島である。
以下、地図を用意した。
本土からあまりにも遠いので1枚では収まらなかった。
与那国島は沖縄本島から南西に509キロ、東京からおよそ1900キロの場所に浮かぶ西の最果て。
隣の台湾までは直線距離で111キロと、石垣島(127キロ)よりも近く「国境の島」とも呼ばれる。
また日本の領土で東京から最も離れている島らしい。
波照間島は石垣島の南西42キロ、西表島の29キロ南にある周囲12キロほどの小さな島。
民間人が到達できる日本の最南端である。
訪問の目的は、それぞれの島にある「日本最西端の地」「日本最南端の地」の石碑に辿り着くこと。
旅好きの私にとって、日本の四端を制覇するのは生涯の夢。
北海道在住のため、札幌→稚内ママチャリ旅(2014年)、納沙布岬を目指す旅(2022年)で最北端・稚内宗谷岬と最東端・根室納沙布岬は制覇済みなので、この旅が上手く行けばいよいよ夢が叶うといった具合だ。
ただ、北海道から沖縄の最果てともなると中々簡単には行けないのが事実。
ざっと調べたところ、飛行機を3回程度乗り継ぐ必要がある。
そして島へ渡る手段であるが、与那国島へは沖縄本島か石垣島からプロペラ機、もしくは石垣港から4時間超のフェリー航路(とんでもなく揺れるらしい。通称「ゲロ船」)。
波照間島に至っては石垣港から1日3便の高速船しかなく、こちらも外海に出るため荒れやすい航路で、欠航率が高いようだ。
これまでにない移動距離に幾度の乗り継ぎ、離島での天候や欠航のリスク……。かなり綱渡りで運任せの旅になるのは容易に分かる。
いろいろ考えると最短で5日程度の旅程が必要で、悲しいかな三十路の社会人ともなると長期間の連休が取りにくく、2023年中は決行できなかった。
そして年が明け2024年。
もたもたしていては31歳になってしまうので「行けたらいいなぁ」ぐらいの気持ちでタイミングを見計らっていたところ、突如1月の第3週に5連休が取れそうな気配が出てきた。
ちょうど年末年始の繁忙期が終わって次の繁忙期までの狭間であることに加え、休み希望を入れている他の社員もいない。この週だけ輝いて見える。
2月から社の一大プロジェクトが始まり忙しくなること必至なので、決行するのは今しかないだろう。
こうして、出発のほぼ1週間前に日程が決まり、大慌てで5日間のプランを作成し各チケットを予約した。
2024年1月13日(土) ~賭け~
最低限の準備しかしないまま、出発日を迎えてしまった。
限られた旅程で少しでも早く沖縄方面へ移動したいので、仕事後にすぐさま新千歳空港行きのバスに飛び乗った。
明日から北海道には寒波が来るらしく、水道管の凍結防止の水落としはしっかりしてきた。
夜7時の新千歳空港は雪が舞っていた。
天気予報を見ると、沖縄はこの時期でも20度近くあるらしい。
極寒の北海道から南国へ。服装はかなり迷ったが、長袖の薄着の上に羽織れるアウターと秋用のジャンパーを着てきた。靴は冬靴のみ。
荷物は極限まで減らしたかったので中くらいのバックパック1つ。5泊にしては驚かれる少なさだろう。
この日は関東にも寒波が襲来し、東京都心では初雪が観測されたようだ。
そのため羽田着の飛行機でいくつか欠航が出ていた。
私が最初に乗る成田行きピーチMM588便にも影響が出ないかヒヤヒヤしたのだが、幸い成田空港は降雪の影響が出ておらず通常運航だった。
冬の旅はリスクが高い。
午後10時10分、無事に成田空港へ到着した。
次の乗り継ぎの飛行機は明日朝7時30分発の石垣島行。
当初は空港内の待合所で仮眠を取って待とうと思っていたのだが、仕事終わりの社畜にそんな気力は残っていなかった。
学生時代だったら強行した(※経験あり)かもしれないが、今回は「三十路記念の旅」なんだからケチるのは止めることにした。
ということで、一度利用してみたいと思っていた空港内のカプセルホテル「9h(ナインアワーズ)」を利用させてもらう事にした。
成田空港第2ターミナルの駐車場ビル内にある「9h」は一泊8000円ほどとカプセルホテルにしてはお高めだが、唯一の空港直結ホテルなので利便性は高い。
「シャワー+睡眠+身支度=9h」という無駄をそぎ落としたコンセプトで、館内は美しさすら感じる極端にシンプルなデザイン。以前からネットで画像を見て惚れ惚れしていた。
ロッカー→シャワールーム→カプセルの順に動線が出来ているので合理的だ。これは感動。
夜11時に入館し快適なシャワーを浴び、近未来的なカプセルで早朝5時まで就寝。
「6h」になってしまったのが少し勿体なかった。
さて、翌1月14日(日)の朝である。この日が1日目。
成田発石垣島行きピーチMM531便の搭乗口へ。成田からこれほど早い便に乗るのは初めてかもしれない。
搭乗時間は約4時間と、これほど移動が長い飛行機も初めてだ。
機内の設備トラブルで出発時間が20分ほど遅れたが、無事に快晴の成田空港を出発した。
前日の雪は嘘のように雲ひとつ無いので、東京都心のビル群や富士山を遠く望むことができた。
また、伊豆半島や伊豆諸島なども見事に確認できた。
その後は石垣島へ向けて本土からはるか南の太平洋上を飛ぶので、雲は無いが見下ろせるのは群青の海のみ。先は長いので「6h」の続きとばかりにしっかり仮眠した。
午前11時50分、飛行機は石垣島へ向けて降下を開始した。
徐々に見えてくるサンゴ礁とエメラルドグリーンの海。
反対側に座っていた石垣島のガイドブックを広げた老夫婦が歓喜の声を上げた。
そして島に並ぶ赤い瓦屋根の家々を見て、私はいよいよ「沖縄だ!」と気分が高まる。
沖縄は高校の修学旅行で訪れた事があり、およそ14年ぶり2回目となる。
冬の石垣島と最果ての島々、果たしてどんな景色を見せてくれるのか。
そして無事に念願の地へ行くことは出来るのか。
次回!プロペラ機で与那国島へ!
続く。
2023年5月、ついに30歳の誕生日を迎えてしまった。
三十路である。未だに実感が無い。
同年代のLINEのアイコンが順調にウエディングフォトや赤ん坊の画像になってきているが、私はというと20代からの変化はほぼ無い。
相変わらず苫小牧の古いアパートで1人暮らしだし、世帯無し、年収は変わらず。
朧げながらも結婚の選択肢がようやく現れ始めたぐらいか。
子どもを持ちたいなどという願望は(自分も相手も)持っていないので、特に焦りも無くマイペースである。良いのか悪いのかは分からないが。
さて、もう何年も前からの野望で、30歳になったら「三十路記念の旅」がしたいと思っていた。
行き先は日本最西端の沖縄・与那国島と有人島日本最南端の同・波照間島である。
以下、地図を用意した。
本土からあまりにも遠いので1枚では収まらなかった。
与那国島は沖縄本島から南西に509キロ、東京からおよそ1900キロの場所に浮かぶ西の最果て。
隣の台湾までは直線距離で111キロと、石垣島(127キロ)よりも近く「国境の島」とも呼ばれる。
また日本の領土で東京から最も離れている島らしい。
波照間島は石垣島の南西42キロ、西表島の29キロ南にある周囲12キロほどの小さな島。
民間人が到達できる日本の最南端である。
訪問の目的は、それぞれの島にある「日本最西端の地」「日本最南端の地」の石碑に辿り着くこと。
旅好きの私にとって、日本の四端を制覇するのは生涯の夢。
北海道在住のため、札幌→稚内ママチャリ旅(2014年)、納沙布岬を目指す旅(2022年)で最北端・稚内宗谷岬と最東端・根室納沙布岬は制覇済みなので、この旅が上手く行けばいよいよ夢が叶うといった具合だ。
ただ、北海道から沖縄の最果てともなると中々簡単には行けないのが事実。
ざっと調べたところ、飛行機を3回程度乗り継ぐ必要がある。
そして島へ渡る手段であるが、与那国島へは沖縄本島か石垣島からプロペラ機、もしくは石垣港から4時間超のフェリー航路(とんでもなく揺れるらしい。通称「ゲロ船」)。
波照間島に至っては石垣港から1日3便の高速船しかなく、こちらも外海に出るため荒れやすい航路で、欠航率が高いようだ。
これまでにない移動距離に幾度の乗り継ぎ、離島での天候や欠航のリスク……。かなり綱渡りで運任せの旅になるのは容易に分かる。
いろいろ考えると最短で5日程度の旅程が必要で、悲しいかな三十路の社会人ともなると長期間の連休が取りにくく、2023年中は決行できなかった。
そして年が明け2024年。
もたもたしていては31歳になってしまうので「行けたらいいなぁ」ぐらいの気持ちでタイミングを見計らっていたところ、突如1月の第3週に5連休が取れそうな気配が出てきた。
ちょうど年末年始の繁忙期が終わって次の繁忙期までの狭間であることに加え、休み希望を入れている他の社員もいない。この週だけ輝いて見える。
2月から社の一大プロジェクトが始まり忙しくなること必至なので、決行するのは今しかないだろう。
こうして、出発のほぼ1週間前に日程が決まり、大慌てで5日間のプランを作成し各チケットを予約した。
2024年1月13日(土) ~賭け~
最低限の準備しかしないまま、出発日を迎えてしまった。
限られた旅程で少しでも早く沖縄方面へ移動したいので、仕事後にすぐさま新千歳空港行きのバスに飛び乗った。
明日から北海道には寒波が来るらしく、水道管の凍結防止の水落としはしっかりしてきた。
夜7時の新千歳空港は雪が舞っていた。
天気予報を見ると、沖縄はこの時期でも20度近くあるらしい。
極寒の北海道から南国へ。服装はかなり迷ったが、長袖の薄着の上に羽織れるアウターと秋用のジャンパーを着てきた。靴は冬靴のみ。
荷物は極限まで減らしたかったので中くらいのバックパック1つ。5泊にしては驚かれる少なさだろう。
この日は関東にも寒波が襲来し、東京都心では初雪が観測されたようだ。
そのため羽田着の飛行機でいくつか欠航が出ていた。
私が最初に乗る成田行きピーチMM588便にも影響が出ないかヒヤヒヤしたのだが、幸い成田空港は降雪の影響が出ておらず通常運航だった。
冬の旅はリスクが高い。
午後10時10分、無事に成田空港へ到着した。
次の乗り継ぎの飛行機は明日朝7時30分発の石垣島行。
当初は空港内の待合所で仮眠を取って待とうと思っていたのだが、仕事終わりの社畜にそんな気力は残っていなかった。
学生時代だったら強行した(※経験あり)かもしれないが、今回は「三十路記念の旅」なんだからケチるのは止めることにした。
ということで、一度利用してみたいと思っていた空港内のカプセルホテル「9h(ナインアワーズ)」を利用させてもらう事にした。
成田空港第2ターミナルの駐車場ビル内にある「9h」は一泊8000円ほどとカプセルホテルにしてはお高めだが、唯一の空港直結ホテルなので利便性は高い。
「シャワー+睡眠+身支度=9h」という無駄をそぎ落としたコンセプトで、館内は美しさすら感じる極端にシンプルなデザイン。以前からネットで画像を見て惚れ惚れしていた。
ロッカー→シャワールーム→カプセルの順に動線が出来ているので合理的だ。これは感動。
夜11時に入館し快適なシャワーを浴び、近未来的なカプセルで早朝5時まで就寝。
「6h」になってしまったのが少し勿体なかった。
さて、翌1月14日(日)の朝である。この日が1日目。
成田発石垣島行きピーチMM531便の搭乗口へ。成田からこれほど早い便に乗るのは初めてかもしれない。
搭乗時間は約4時間と、これほど移動が長い飛行機も初めてだ。
機内の設備トラブルで出発時間が20分ほど遅れたが、無事に快晴の成田空港を出発した。
前日の雪は嘘のように雲ひとつ無いので、東京都心のビル群や富士山を遠く望むことができた。
また、伊豆半島や伊豆諸島なども見事に確認できた。
その後は石垣島へ向けて本土からはるか南の太平洋上を飛ぶので、雲は無いが見下ろせるのは群青の海のみ。先は長いので「6h」の続きとばかりにしっかり仮眠した。
午前11時50分、飛行機は石垣島へ向けて降下を開始した。
徐々に見えてくるサンゴ礁とエメラルドグリーンの海。
反対側に座っていた石垣島のガイドブックを広げた老夫婦が歓喜の声を上げた。
そして島に並ぶ赤い瓦屋根の家々を見て、私はいよいよ「沖縄だ!」と気分が高まる。
沖縄は高校の修学旅行で訪れた事があり、およそ14年ぶり2回目となる。
冬の石垣島と最果ての島々、果たしてどんな景色を見せてくれるのか。
そして無事に念願の地へ行くことは出来るのか。
次回!プロペラ機で与那国島へ!
続く。
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