日本ユーラシア協会第53回全国総会 金沢 2012年3月17日18日
【日本ユーラシア協会第53回全国総会宣言】
今年は、日本ユーラシア協会創立55周年、日ソ協会から改称して20周年という記念すべき年です。
私たちは、東日本大震災と、人災ともいうべき原発事故の苦難を経た1年後、2012年3月17,18日、
ここ石川県金沢市で第53回全国総会を開催し、新しい2012年度から2013年度の活動方針を決定しま
した。総会には、各界の来賓、代議員、評議員、役員など、155名が参加し、全体会や分科会での熱
心な討議と盛大な祝賀会が行われました。
2011年3月11目に東北を襲った東目本大震災が、多くの「人命」と「財産」を奪い、未曽有の大被害をもたらしました。亡くなられた方々のご冥福を心からお祈りいたしますとともに、被害に遭われた方々にお見舞い申し上げます。
被災地では、不自由な仮設住宅での生活、失業保険切れ、雇用と産業再建の遅れ、医療・福祉・教
育の課題など生活再建や震災復旧・復興の胃途が立たず、不安が高まり、震災による自殺着、孤独死
が増えてきています。
さらに、地震と津波による東京電力福島第一原子力発電所の事故で、チェルノブイリの原発事故に
匹敵する放射能汚染に曝され、多くの被災者をだしました。今なお、その影響は変化しながら多岐にわたり被害を拡大しています。放射能汚染の徹底した測定と除染の取り組み、放射能被害の全面的な賠償、子どもたちを放射能から守ることが急がれます。今後とも、被災者、被災地の想いに寄り添いながら支援活動を進めることが求められています。
私たちを取り巻く世界の情勢は、決して楽観できる状況にはありません。アメリカによる経済、政治、軍事にわたる一国覇権主義支配は崩壊しつつあり、中東、アフリカ、アジア、ラテン・アメリカ地域等世界の各地で民主化運動の高揚が見られます。一方ではパレスチナ・イスラエル間題、イランや北朝鮮の核開発を巡っての軋櫟など局地的な戦争に転化する危険性は否定できない状況にあります。ユーラシア諸国の関係も、自立と連帯と対立、経済発展上の格差などをめぐり複雑です。
近く、日口間の領土間題解決に熱意を示すロシア新政権の発足にあたり、日口両国の政府が真剣で
踏み込んだ交渉に臨み、この歴史的懸案の解決にあたるよう強く期待するものです。協会としては、
日ロ平和条約締結を促進するため、国民世論をもりあげていくことに力を尽くします。
日本国内の清勢は、経済不況の深刻化、震災復興の遅延、TPPへの参加、沖縄の普天間基地の固
定化、消費税大幅引き上げ、原発再稼働の動きなど、国民生活の苦しみは一層深刻さを増しています。
協会は、「原発からの撤退」、「被災地への救援活動の継続」、「憲法9条を守る運動での共同」、「原水爆禁止・核廃絶」、「TPP参加反対」などにも連帯して活動します。
協会は引き続き全国各地でユーラシア諸国民との相互理解、文化・芸術分野の紹介と交流、友好親
善のための多彩な取り組みを行い、今年9月6,7日、札幌で開催される第10回日ロフォーラムの成功
を目指します。
全国的に協会の会員の高齢者比率が高まっており、次の世代への運動の継承を早急に図らなくては
なりません。国際友好運動を発展させる上でも、若い世代への組織拡大が極めて重要です。
広範な人々と連帯し、絆を強め、全力をあげて新しい方針を実践しましょう!
2012年3月18日日本ユーラシア協会第53回総会 金沢
【⑧平和間題 核兵器のない世界へ 日本ユーラシア協会の平和活動 広島県連理事長伊原敏子 】
[非核の国際連帯のうねり]
日本ユーラシア協会は、2010年5月3日~28日にニューヨークで開催された核拡散防止
条約(NPT)再検討会議の成功をめざし「核兵器のない世界」の国際署名をロシア語に
訳し、広島平和文化センターの協カによる広島・長崎の被爆写真ポスター(1組38枚)と
共に、ロシアの平和市長会議加盟15の都市及び姉妹都市と3月全国総会に出席のキルギス
代表宛に送り、連帯の行動を呼びかけました。皆様は各県連・支部の署名行動に積極的に
参加されたことと思います。また、協会本部からは平和担当の坪井副会長を代表派遣し、
日本ユーラシア協会の平和の取組をアピールしました。
ロシアの諸都市に呼びかけた署名は、札幌と姉妹都市のノボシビルスクをはじめ、オー
レンブルグ、ボルゴグラード、ハバロフスク、ウラジオストーク、キルギス国から計269
送られてきました。被爆国の日本全国で取り組まれた691万余の署名は、ニューヨーク国
連本部で、日本代表がカバクチュランNPT会議議長に直接手渡し、その広場に高く積
み上げられました。議長は翌日会議の冒頭で、この700万にのぼる日本国民の心からの叫
びである署名の感動と政府代表に向かって核兵器廃絶の努力を呼びかけました。藩基文国
連事務総長も「核兵器廃絶がいま、地平線の先に見えている。行動すれぱ世界は変わりま
す。」と発言。私たち一人ひとりの草の根の力が、まさに国際政治を動かしており、協会の
皆様の運動がこの一翼を担ったのです。引き続き、次のステップ2015年のNPT再検討会
議にむけて、昨年2月からの「核兵器禁止を求めるアピーノレ」新署名の取組に力を注ごう
ではありませんか。平和への取組をおろそかにすること、手をゆるめることは情勢が許さ
ないでしょう。
さて、毎年広島と長崎で行われている原水爆禁止世界大会に出席のユーラシア諸国から
ロシア、カザフスタン、リトアニアの各代表を招いて広島と東京で歓迎・交流会を行って
います。ロシア・チェリャビンスクの核製造工場での3回の大事故、カザフスタン・セミ
パラチンスクでの40年間、450回以上の核実験の結果、環境・人体に及ぼす重大な被害
は二世、三世と今なお劣悪なる医療環境の中で、多くの癌・先天性奇形児の出産、健康破
壊のため苦しみ続けている現状を世界に訴えています。広島は13回目というロシア・チェ
リャビンスクの核被害者のミーリャさんは、「毎年、日本ユーラシア協会の皆さんが温かく
迎え激励してくださるので、元気が出るし心から感謝しています。」と語っておられまず。
私自身も毎年この世界大会国際会議に出席し、分科会で当協会の核兵器廃絶・日本国憲法
9条の普及取組等について発言していますが、何と言っても最大核保有国はロシアです。
世界で核爆弾2万3,360発の中、13,000発がロシアで、第2位のアメリカが9,400発です。
そのロシアに対して民衆同士の運動を直接取り組んでいるのが日本ユーラシア協会であり、
私たちの役割の重要性を痛感しています。
【⑦核廃絶・脱原発 2012・3・18 核廃絶と脱原発(第7分科会基調報告) 福島 真木實彦】
I)核軍拡競争の激化の中での核軍事技術の民間移転一原子力発電の成り立ち一
①戦後の核軍拡競争の展開
米マンハッタン計画(1942)に始まる核開発、原爆実験成功、広島・長崎での実戦使用
(45)。ソ連核実験成功(49)により米の核独占崩壊。冷戦下における核軍拡競争へ。そ
の後、英核実験成功(52)、ビキニ水爆実験(54・3)、中国核実験成功(64)などと続き、
60年代には核拡散防止が戦略的主要テーマとなる。
②核軍事技術の民間移転と目本の原発受容
一方「原子力の平和利用」の提唱('53・12アイゼンハワーの国連総会演説)を起点とす
る原子力発電の実用化政策はアメリカにとってはソ連との核軍拡競争が熾烈を極める中
で、原子力発電で先行されたソ連に対抗し、同盟国への濃縮ウランの提供と核の国際管
理機関設置(IAEAの発足57・7)による核態勢の主導権奪還が差し迫った課題となる状
況の下で打ち出されたものである。
原爆実験反対の世論を打ち消すべく日本への実験用原子炉提供の申し出(54・3・22〕が
「第五福竜丸」被爆事件(54・3・1)直後(「事件」の発表は3・16)であったという慌し
さの中で原発の日本移出が決定された。冷戦体制下の「逆コース」のもとで反動化しつ
つあった日本政府はアメリカのこの変化にいち早く対応する。原発導入のこの間の事情
がその後の安全性無視の原発体制の起点となったという事実は確認されておいてよい、
一方、核の平和利用のための国際管理が強められる中で、原発は、ソ連で初の原発運転
開始(54・6)、英商業用発電開始(56・5)、米商業用発電開始(57・12)と続き、日本では、
研究用原子炉(原研)初の臨界成功(57・8)から商業用原発(原電)での発電に成功(63・
10)、へと続く。
Ⅱ)日本における原発受容の特殊性
①核アレルギー下の日本における原発受容
人類最初の被爆国日本が原発を受容するにあたっては、ビキニでの日本人の被爆とも重
なって、原子力の「平和利用」という観点がことのほか厳しく論議された。アメリカヘの
全面依存と技術的蓄積を無視した拙速性が当初から内在していたにもかかわらず、「安全
性」を神話にするほどに固執せざるを得なかったこの出発点での特異性が、国内的にも際
立った対抗関係を生み出した。原発を直接受け持った「電力産業」と関連原発メーカー(東
芝、日立、三菱重工業など)、さらに、原子力関連学会、原発を国策と位置付けた「政府」
との間に独占的でかつ閉鎖的な癒着構造が形成され、今目まで頑強に原発を守り抜くと言
う特殊な構造(「原子力村」)が作り出された。
②日本における原発維持の特異な体質
何よりも先ず指摘されるのは、不安を慰撫するための「原発安全宣伝」の徹底的な展開
である。行き着く先は「多重防護装置に守られた原発」という「安全神話」の一人歩きで
あり、それは自らの安全に対する努力をも麻痒させるほどの深刻さであった。そもそも、「放
射性廃棄物」の最終処理方法も未確立のままの商業用原発の見切り発車(「トイレのないマ
ンション」)という根本間題は現在に至るもまったく解決されていない。核処理技術のこの
本質的な未熟性は「安全神話」の陰に隠されて先送りされたまま現在にまで至っている。
さらに、「事故は想定外」とする判断の欺瞞性が指摘される。今回の事故でば津波の大き
さの予測という問題に象徴的に現れた。「想定の限度」を決めたのは「安全性」の視点から
ではなく、もっぱら「経済性」の視点からであった事が明らかとなった。はじめにコスト
判断からする限度としての「想定」が設定されており、それを超えるのが「想定外」であ
ったといえる。
③原発維持技術の不完全性
その上、わが国が採用した軽水炉型原発の事故対策として従来から言われてきた「止め
る」、「冷す」、「閉じ込める」の三行程のうち、今回の福島原発で機能したのは「止める」
のみで、炉心のメルトダウンは停止中であった4号炉を除いて1,2,3号炉すべてに及んで
いる。つまり、「巨大な熱エネルギー」と「放射性物質の飛散」を十分コントロールする事
すらできなかったことが露呈した。米・仏の技術を借りて「冷す」ことに狂奔した実態も
暴露され、これまで有効な事故対策の技術的蓄積すら十分なされてこなかったわが国の事
故対応の貧しさが露呈されることになった。
これらの点からみても、現在の原発維持技術がいまだ本質的に未完成であり、危険を完
全にはコントロールしえない段階にあるという事実が証明されたと言わざるをえない。
皿)原爆は危険で、原発は安全か一核廃絶と脱原発の狭間に
①原発の安全神話の実相
1953年のアイゼンハワー大統領の「原子力の平和利用」の提唱以来、とくに核アレルギ
ーの強い日本に原発を持ち込むためには「安全」を神話にまで高めて、「原子力村」といわ
れる排他的で頑強な支配構造を作って原発を守り通してこざるを得なかった歴史を持って
いる。そこでは、原爆の「核」と原発の「原子力」は異なるといいう信仰まで動員されて
きたのであった。
②原爆と原発は通底している
昨年夏、自民党政権時代のさる防衛大臣が「原発は潜在的な抑止力である」と発言し'
たことを作家の大江健三郎氏が『朝日』の「定義集」で紹介している。核燃料サイクル
の確立とプルトニュームの生産能力を日本が持つ事が実は原爆を生産する能力を持つこ
とに通じると言ったものであり、原発は豊かな生活を保障する「経済問題」であるより
は、優れて「安全保障問題」であることを直言したのである。原発の存在が原爆の保持
につながる事が見事に言い表されているものだと言えるだろう。
【日本ユーラシア協会第53回全国総会宣言】
今年は、日本ユーラシア協会創立55周年、日ソ協会から改称して20周年という記念すべき年です。
私たちは、東日本大震災と、人災ともいうべき原発事故の苦難を経た1年後、2012年3月17,18日、
ここ石川県金沢市で第53回全国総会を開催し、新しい2012年度から2013年度の活動方針を決定しま
した。総会には、各界の来賓、代議員、評議員、役員など、155名が参加し、全体会や分科会での熱
心な討議と盛大な祝賀会が行われました。
2011年3月11目に東北を襲った東目本大震災が、多くの「人命」と「財産」を奪い、未曽有の大被害をもたらしました。亡くなられた方々のご冥福を心からお祈りいたしますとともに、被害に遭われた方々にお見舞い申し上げます。
被災地では、不自由な仮設住宅での生活、失業保険切れ、雇用と産業再建の遅れ、医療・福祉・教
育の課題など生活再建や震災復旧・復興の胃途が立たず、不安が高まり、震災による自殺着、孤独死
が増えてきています。
さらに、地震と津波による東京電力福島第一原子力発電所の事故で、チェルノブイリの原発事故に
匹敵する放射能汚染に曝され、多くの被災者をだしました。今なお、その影響は変化しながら多岐にわたり被害を拡大しています。放射能汚染の徹底した測定と除染の取り組み、放射能被害の全面的な賠償、子どもたちを放射能から守ることが急がれます。今後とも、被災者、被災地の想いに寄り添いながら支援活動を進めることが求められています。
私たちを取り巻く世界の情勢は、決して楽観できる状況にはありません。アメリカによる経済、政治、軍事にわたる一国覇権主義支配は崩壊しつつあり、中東、アフリカ、アジア、ラテン・アメリカ地域等世界の各地で民主化運動の高揚が見られます。一方ではパレスチナ・イスラエル間題、イランや北朝鮮の核開発を巡っての軋櫟など局地的な戦争に転化する危険性は否定できない状況にあります。ユーラシア諸国の関係も、自立と連帯と対立、経済発展上の格差などをめぐり複雑です。
近く、日口間の領土間題解決に熱意を示すロシア新政権の発足にあたり、日口両国の政府が真剣で
踏み込んだ交渉に臨み、この歴史的懸案の解決にあたるよう強く期待するものです。協会としては、
日ロ平和条約締結を促進するため、国民世論をもりあげていくことに力を尽くします。
日本国内の清勢は、経済不況の深刻化、震災復興の遅延、TPPへの参加、沖縄の普天間基地の固
定化、消費税大幅引き上げ、原発再稼働の動きなど、国民生活の苦しみは一層深刻さを増しています。
協会は、「原発からの撤退」、「被災地への救援活動の継続」、「憲法9条を守る運動での共同」、「原水爆禁止・核廃絶」、「TPP参加反対」などにも連帯して活動します。
協会は引き続き全国各地でユーラシア諸国民との相互理解、文化・芸術分野の紹介と交流、友好親
善のための多彩な取り組みを行い、今年9月6,7日、札幌で開催される第10回日ロフォーラムの成功
を目指します。
全国的に協会の会員の高齢者比率が高まっており、次の世代への運動の継承を早急に図らなくては
なりません。国際友好運動を発展させる上でも、若い世代への組織拡大が極めて重要です。
広範な人々と連帯し、絆を強め、全力をあげて新しい方針を実践しましょう!
2012年3月18日日本ユーラシア協会第53回総会 金沢
【⑧平和間題 核兵器のない世界へ 日本ユーラシア協会の平和活動 広島県連理事長伊原敏子 】
[非核の国際連帯のうねり]
日本ユーラシア協会は、2010年5月3日~28日にニューヨークで開催された核拡散防止
条約(NPT)再検討会議の成功をめざし「核兵器のない世界」の国際署名をロシア語に
訳し、広島平和文化センターの協カによる広島・長崎の被爆写真ポスター(1組38枚)と
共に、ロシアの平和市長会議加盟15の都市及び姉妹都市と3月全国総会に出席のキルギス
代表宛に送り、連帯の行動を呼びかけました。皆様は各県連・支部の署名行動に積極的に
参加されたことと思います。また、協会本部からは平和担当の坪井副会長を代表派遣し、
日本ユーラシア協会の平和の取組をアピールしました。
ロシアの諸都市に呼びかけた署名は、札幌と姉妹都市のノボシビルスクをはじめ、オー
レンブルグ、ボルゴグラード、ハバロフスク、ウラジオストーク、キルギス国から計269
送られてきました。被爆国の日本全国で取り組まれた691万余の署名は、ニューヨーク国
連本部で、日本代表がカバクチュランNPT会議議長に直接手渡し、その広場に高く積
み上げられました。議長は翌日会議の冒頭で、この700万にのぼる日本国民の心からの叫
びである署名の感動と政府代表に向かって核兵器廃絶の努力を呼びかけました。藩基文国
連事務総長も「核兵器廃絶がいま、地平線の先に見えている。行動すれぱ世界は変わりま
す。」と発言。私たち一人ひとりの草の根の力が、まさに国際政治を動かしており、協会の
皆様の運動がこの一翼を担ったのです。引き続き、次のステップ2015年のNPT再検討会
議にむけて、昨年2月からの「核兵器禁止を求めるアピーノレ」新署名の取組に力を注ごう
ではありませんか。平和への取組をおろそかにすること、手をゆるめることは情勢が許さ
ないでしょう。
さて、毎年広島と長崎で行われている原水爆禁止世界大会に出席のユーラシア諸国から
ロシア、カザフスタン、リトアニアの各代表を招いて広島と東京で歓迎・交流会を行って
います。ロシア・チェリャビンスクの核製造工場での3回の大事故、カザフスタン・セミ
パラチンスクでの40年間、450回以上の核実験の結果、環境・人体に及ぼす重大な被害
は二世、三世と今なお劣悪なる医療環境の中で、多くの癌・先天性奇形児の出産、健康破
壊のため苦しみ続けている現状を世界に訴えています。広島は13回目というロシア・チェ
リャビンスクの核被害者のミーリャさんは、「毎年、日本ユーラシア協会の皆さんが温かく
迎え激励してくださるので、元気が出るし心から感謝しています。」と語っておられまず。
私自身も毎年この世界大会国際会議に出席し、分科会で当協会の核兵器廃絶・日本国憲法
9条の普及取組等について発言していますが、何と言っても最大核保有国はロシアです。
世界で核爆弾2万3,360発の中、13,000発がロシアで、第2位のアメリカが9,400発です。
そのロシアに対して民衆同士の運動を直接取り組んでいるのが日本ユーラシア協会であり、
私たちの役割の重要性を痛感しています。
【⑦核廃絶・脱原発 2012・3・18 核廃絶と脱原発(第7分科会基調報告) 福島 真木實彦】
I)核軍拡競争の激化の中での核軍事技術の民間移転一原子力発電の成り立ち一
①戦後の核軍拡競争の展開
米マンハッタン計画(1942)に始まる核開発、原爆実験成功、広島・長崎での実戦使用
(45)。ソ連核実験成功(49)により米の核独占崩壊。冷戦下における核軍拡競争へ。そ
の後、英核実験成功(52)、ビキニ水爆実験(54・3)、中国核実験成功(64)などと続き、
60年代には核拡散防止が戦略的主要テーマとなる。
②核軍事技術の民間移転と目本の原発受容
一方「原子力の平和利用」の提唱('53・12アイゼンハワーの国連総会演説)を起点とす
る原子力発電の実用化政策はアメリカにとってはソ連との核軍拡競争が熾烈を極める中
で、原子力発電で先行されたソ連に対抗し、同盟国への濃縮ウランの提供と核の国際管
理機関設置(IAEAの発足57・7)による核態勢の主導権奪還が差し迫った課題となる状
況の下で打ち出されたものである。
原爆実験反対の世論を打ち消すべく日本への実験用原子炉提供の申し出(54・3・22〕が
「第五福竜丸」被爆事件(54・3・1)直後(「事件」の発表は3・16)であったという慌し
さの中で原発の日本移出が決定された。冷戦体制下の「逆コース」のもとで反動化しつ
つあった日本政府はアメリカのこの変化にいち早く対応する。原発導入のこの間の事情
がその後の安全性無視の原発体制の起点となったという事実は確認されておいてよい、
一方、核の平和利用のための国際管理が強められる中で、原発は、ソ連で初の原発運転
開始(54・6)、英商業用発電開始(56・5)、米商業用発電開始(57・12)と続き、日本では、
研究用原子炉(原研)初の臨界成功(57・8)から商業用原発(原電)での発電に成功(63・
10)、へと続く。
Ⅱ)日本における原発受容の特殊性
①核アレルギー下の日本における原発受容
人類最初の被爆国日本が原発を受容するにあたっては、ビキニでの日本人の被爆とも重
なって、原子力の「平和利用」という観点がことのほか厳しく論議された。アメリカヘの
全面依存と技術的蓄積を無視した拙速性が当初から内在していたにもかかわらず、「安全
性」を神話にするほどに固執せざるを得なかったこの出発点での特異性が、国内的にも際
立った対抗関係を生み出した。原発を直接受け持った「電力産業」と関連原発メーカー(東
芝、日立、三菱重工業など)、さらに、原子力関連学会、原発を国策と位置付けた「政府」
との間に独占的でかつ閉鎖的な癒着構造が形成され、今目まで頑強に原発を守り抜くと言
う特殊な構造(「原子力村」)が作り出された。
②日本における原発維持の特異な体質
何よりも先ず指摘されるのは、不安を慰撫するための「原発安全宣伝」の徹底的な展開
である。行き着く先は「多重防護装置に守られた原発」という「安全神話」の一人歩きで
あり、それは自らの安全に対する努力をも麻痒させるほどの深刻さであった。そもそも、「放
射性廃棄物」の最終処理方法も未確立のままの商業用原発の見切り発車(「トイレのないマ
ンション」)という根本間題は現在に至るもまったく解決されていない。核処理技術のこの
本質的な未熟性は「安全神話」の陰に隠されて先送りされたまま現在にまで至っている。
さらに、「事故は想定外」とする判断の欺瞞性が指摘される。今回の事故でば津波の大き
さの予測という問題に象徴的に現れた。「想定の限度」を決めたのは「安全性」の視点から
ではなく、もっぱら「経済性」の視点からであった事が明らかとなった。はじめにコスト
判断からする限度としての「想定」が設定されており、それを超えるのが「想定外」であ
ったといえる。
③原発維持技術の不完全性
その上、わが国が採用した軽水炉型原発の事故対策として従来から言われてきた「止め
る」、「冷す」、「閉じ込める」の三行程のうち、今回の福島原発で機能したのは「止める」
のみで、炉心のメルトダウンは停止中であった4号炉を除いて1,2,3号炉すべてに及んで
いる。つまり、「巨大な熱エネルギー」と「放射性物質の飛散」を十分コントロールする事
すらできなかったことが露呈した。米・仏の技術を借りて「冷す」ことに狂奔した実態も
暴露され、これまで有効な事故対策の技術的蓄積すら十分なされてこなかったわが国の事
故対応の貧しさが露呈されることになった。
これらの点からみても、現在の原発維持技術がいまだ本質的に未完成であり、危険を完
全にはコントロールしえない段階にあるという事実が証明されたと言わざるをえない。
皿)原爆は危険で、原発は安全か一核廃絶と脱原発の狭間に
①原発の安全神話の実相
1953年のアイゼンハワー大統領の「原子力の平和利用」の提唱以来、とくに核アレルギ
ーの強い日本に原発を持ち込むためには「安全」を神話にまで高めて、「原子力村」といわ
れる排他的で頑強な支配構造を作って原発を守り通してこざるを得なかった歴史を持って
いる。そこでは、原爆の「核」と原発の「原子力」は異なるといいう信仰まで動員されて
きたのであった。
②原爆と原発は通底している
昨年夏、自民党政権時代のさる防衛大臣が「原発は潜在的な抑止力である」と発言し'
たことを作家の大江健三郎氏が『朝日』の「定義集」で紹介している。核燃料サイクル
の確立とプルトニュームの生産能力を日本が持つ事が実は原爆を生産する能力を持つこ
とに通じると言ったものであり、原発は豊かな生活を保障する「経済問題」であるより
は、優れて「安全保障問題」であることを直言したのである。原発の存在が原爆の保持
につながる事が見事に言い表されているものだと言えるだろう。