はねば、不絶とはとり合ぬなり。かりそめにては
たえずきく事ならぬよし也。一聲二聲きく
さへも有べきに、ひたときくとよろこび
たる也。家ヰしてきゝつるといふてにをは
云残し
をおもふべし。たる義あるべし。春山ちかく
ては、たえずきゝつるうぐひすを、みやこの
中には一聲をもめづらしく待詫たる事
よと、所によりてかわる義をよめる成べし。
一 よみ人しらず 万葉の哥なり。
一 梅が枝に鳴てうつろふ鴬のはね白妙にあわ雪ぞふる
増抄云。なきてうつろふとは、鴬はなき/\飛あり
く物なり。うつるとは、枝より枝にうつろりわたる
事也。餘寒の時分なれば、あわ雪ふりて、うぐひ
すのはねのうへに、うす/\たまれる由也。
なきてうつろふはね白妙の詞など、万葉
すの中にはやさしき詞なり。さるにより
て、この集のときめづらしくのこりし
よし。
のさたありし哥也。
頭注
兼載抄云。梅枝
に鳴てうつろふ鴬
のはね白妙にあは
雪ぞふる
なきてうつろふとは
たとへば母などに
子のあまへたる
体とや申せし。
※兼載抄