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新古今和歌集の部屋

前田家本 閑居友3 誰も哀れと思されけん

たれもあ者れとやおほされけん。あるはなおしの

そてをかほにあ○あるはおもてをかへにむ可へて

おの/\ことはすくなになりておハしけるほとに

山乃うへよりあま二人おりたりけり。ひとりハ

ハなこをもちひとりハつまきをひろいもちたり。

やう/\ち可つき給をミれハ者なこもちたるハ女院

にてものしたまひけり。つま木もちたるは昔ち

かくめしつ可者せ給ける人なりけり。お乃/\な


見たをな可してあきれあひたまへり。さてそハ

乃まよりいらせたまひて御そてかきあハせて

むかひまいらせておハしましけり。い可に事にふれ

てたよりなき御事も侍らん○○。なとさま/\可

たらハせたまへはなに可ハたよりなくもわひし

くも侍へき。いミしき善知識にこそ侍れ。つねに思ひ

いて者へれハなミたもとゝまらす。者な乃ミやこお

いてしより返見れハわ可すミ可とおほしくて


誰も哀れと思されけん。

或は直衣の袖を顔に当て、或は面を壁に向かへて、各々言葉少なくなになりて、御座しける程に、山の上より、尼二人下りたりけり。

一人は、花籠を持ち、一人は、爪木を拾い持ちたり。

漸う、近づき給を見れば、花籠を持ちたるは、女院にてものし給ひけり。

爪木持ちたるは、昔、近く召し使はせ給ける人なりけり。

各々涙を流して、あきれ相給へり。

さて、側の間より入らせ給ひて、御袖かき合はせて、向かひ参らせて御座しましけり。

「如何に事に触れて、頼り無き御事も侍らんかし。」など、樣々語らはせ給へば、

「何かは、頼り無くも侘びしくも侍るべき。

いみじき善知識にこそ侍れ。

常に思ひ出で侍れば、涙も留まらず。

花の都を出でしより、返見れば、我が住み家と思しくて

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