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■タイに吹く風(5)

2014-11-28 | ●古都チェンマイ

■■■真っ赤な火焔樹と日本の曼珠沙華■■■
阪南大学大学院  企業情報研究科兼経済学部 教授
特定非営利活動法人日タイ国際交流推進機構 理事     
石井  雄二  
  
北タイに見る真っ赤な秋の華
●植物の生育を決定する要因は、基本的には気温と降雨量である。
東南アジアでは、ほぼ全域熱帯地域に
属するので、植物の生育にと
って気温は問題にならず、いつ頃どの程度降るかという降雨の時期
的バラツキと総量が決定的に影響し植生や樹木の種類に多様性を与
えている。

東南アジアの場合、赤道直下にある地域から 北上して緯度が高くな
ればなるほど、モンスーン(季節風)の影響で雨季と乾季が明瞭と
なり、1年を通して雨が降る熱帯雨林気候から熱帯モンスーン気候
へと変化し、常緑林が繁茂するら 乾燥広葉樹林が見られる地域がし
だいに多くなってくる。



●赤道直下およびその周辺地域では、葉っぱが落ちないエバーグリー
ンの常
緑林が普通に見られるが、その学術名を 「熱帯雨緑林」である
と知った時には、「雨が1年中降って葉っぱが緑色」という、その色
彩感覚を鮮明にイメージさせる名称のそのオシャレさに感じ入ったこ
とがある。

●北タイや東北のイサーン地域あたりのタイでは、乾季のシーズン
降雨量が極端に少なくなる関係上、生命維持のため落葉する樹木が多
くなる。日本のように秋の深まりとともに、美しい見ごたえある紅葉
の景観は見ることはできないが、大きな葉っぱが ひらりと落ちる乾季
も極まったコメの収穫のシーズン頃になると熱帯の中の「秋」の季節
感を味わうことができ、ふと同じコメの収穫期の日本の
秋を思い出し
てしまう。

■「タイで想う日本の秋
日本の秋といえば、急速に日が短くなるお彼岸の時期になると、田
圃の畔や
集落のはずれに真っ赤な岸花の群落が突如出現し、周囲の田
園風景からあまりにも浮きあがった異様な光景を見せる。 その真っ赤
な燃える色を見入っていると、この世の終わりを告げられそうな 一瞬
吸い込まれるような不気味さと恐ろしさを感じてしまう。お彼岸の時
期に、1週間程度開花するので、あの世(死)と この世(生)をつな
ぐ 境界を象徴し 死への誘いと生の再生の両義性を併せもつ花というこ
とで、妖艶な美しさの中の悪魔性を感じ取るのかもしれない。

 
                           (曼珠沙華
が乱れ咲く風情ある寺院の参道)
実際、彼岸花の地下に埋まっている鱗茎(球根)は、毒性をもって
おり、地中を荒らすモグラ・ネズミ・虫を避けるために、田圃の畔や
土手に作付されている。
別名 「毒花」とも言われる彼岸花ではあるが、飢饉のときには、鱗茎
(球根)を水で晒して毒性を抜いて、非常食として利用できる 実用性
のある花でもある。

●ちなみに、彼岸花はサンスクリット語を音写して「曼珠沙華」という
別名がある
ことはあまりにも有名であるが、不思議と彼岸花のような不気味さや
恐れの意味はつきまとはない。曼珠沙華は天界の花として、おめでた
い祝い事がある兆しに天界から赤い花が降ってくるという仏教の経典
上の意味があり「悲しい」「寂しい」などの想いは完全に払拭されて
いる。


                      
 (日本の彼岸花、曼珠沙華) 

なぜ日本の彼岸花(曼珠沙華)を持ち出したのかというと、タイ・
チェンマイ
の火焔樹の真っ赤な花を見たときに瞬時にとらえる感覚と
あまりにも違うからで
ある。 真っ赤さとう点では、ほぼ同系統の赤色
という感じであるが、そこから感
じ取り描かれる心象風景は、彼岸花
を対象とするときに醸し出される不気味さ
や怖さ、悲しさ・寂しさな
どは、微塵も感じられない。

これから乾季が終わり雨季のシーズンが始まろうかという、4~6月
の暑気にチ
ェンマイの突き抜けるような青い空の中に、くっきり浮か
ぶ火焔樹の花の真っ赤
さは、あまりにも眩しく、そして能天気なまで
に明るすぎる。 そこには、死にま
つわるイメージは、まったく感じ
られない。

■「真っ赤な火焔樹が開化する時」     
タイ・チェンマイで最も熱い陽炎の最中に開花する火焔樹の花は、
その字の
通り、燃え盛る火炎を彷彿とさせ、真っ青の空との原色のコ
ントラストが 清々し
くもある。特にこの時期には、大地は毎日の直射
日光でカラカラに乾き切り、い
つ降るかわからない降雨が待ち遠しく、
心は晴ればれとするスカッとした潤いの
ある刺激が欲しくなる。


                (赤い火焔樹の花)

そんな沿道を車で走っている時に、車窓から真っ赤な火焔儒樹の花が
突如現れ
ると、なんだか心がシャキットするようで、実に清々しい気
分になる。それは暑気
払いの一服の清涼感でもある。  熱帯の風景に
フィットする健康的な赤色は、心
身の邪気を吹き飛ばすかのようでも
ある。


         (チェンマイの街道にそそり立つ火焔樹)
いうまでもなく火焔樹は、ほぼタイ全土の至る所で見ることができ
る。大都会の
喧騒のバンコクでも、暑気の時期になると一斉に花が開
き、雨季のシーズン直前
の生活に彩りを与える。しかし、バンコクの
空は排気ガスで汚れてくすみ、チェン
マイの火焔樹ほど、燃える災の
赤さは鮮やかには感じられない。

●火焔樹が開花する時期は、タイでは、正月のソンクラーンを経て、日
本でいう春休みが終りかけて、新学期が始まろうとする頃で、その意味
では1年の始まりの時期でもある。また、農業=稲作でも、これから本
格的な雨季を迎え乾季の収穫を目指しての農繁期の本番のシーズンに突
入する大事な時期である。水の恵みを得て、これから生命が躍動する始
まりに咲く火焔樹の花は、休暇の最後にホット一息入れて、人々の心に
メリハリつけるのに相応しい。
 
● とくに真っ青の空のもとで、チェンマイで見かける火焔樹の真っ赤な
色からは、タイ随一の保養地で炎熱の酷暑を一瞬たりとも和らげる癒し
効果があること請け合いである。              続く


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