■■■チェンマイ慕情 (5)■■■■■■■■■■■■■■■■■
■「チェンマイ・ロングステイの再検証」
●チェンマイ・ロングスティについては、私どものサイトでも、その正しい
在り方や行方について、たびたび検証してきた。
特に2000年来、タイ観光庁の言うチェンマイ生活費の安さと、ロングステ
イ ビザ取得条件の手軽さで、急速に人気を集めてきたチェンマイロング
スティだが、2014年の軍事クデター以降、陰りが出てきたことは、否めな
い。
●私どもは、日本の高齢者3500万人、人生百年時代を迎えるに当たっ
て、余後をそれぞれ多様に、価値ある暮らし方をするよう提案して来た。
特に海外ロングスティ、なかんずくチェンマイロングスティは、チェンマイの
インフラ魅力から見ても、比類ないおすすめメニューであることに変わりは
ない。
但し、あくまで日本に生活の拠点を構えて、短期的な海外滞在(私どもの
持論では 最低2~3ヶ月、最高6ヶ月)で、趣向に合えばリピ―トする方法
をお勧めしたい。
●チェンマイは、アジアの近場だとは言え外国である。
・所詮、通貨も為替に左右されるし、円安に振れれば、円貨は目減りする。
・しかも 医療は日本での健康保険による自由診療のようにはいかない。
・何かにつけ滞在日本人としての自覚と責任が求められる。
・滞在中の全ての行動の結果は、自己責任として本人に帰属する事を
忘れないでいただきたい。
●中でも最近、現地から伝えられる様々なロングスティヤーの悲惨な話題は
華やかな成功事例によくある、ささやかな一部の陰の部分の話とは違って、
実に悩ましい。
次にご紹介するのは、チェンマイロングステイの実情を伝える西日本新聞社
(福岡)10月16日朝刊記事の全文である。
■「タイ北部チェンマイ海外移住」西日本新聞/記事10月16日朝刊
高齢化の陰 認知症 貧困 孤独死 現地社会保障の枠外に
●東南アジアなどに長期滞在して余暇を過ごす「海外ロングステイ」の人気が
続いている。温暖な気候で日本人に人気のタイ北部チェンマイでは、リタイア
後に充実した日々を送る人がいる一方で、
安易な計画で移住に踏み切って生活が困窮する人が続出。急速な高齢化に
伴い、日本人の孤独死や徘徊(はいかい)が相次ぐなど、思わぬ事態が生じて
いる。 (バンコク浜田耕治)
●「おじいさんは今も元気でしょうか?1人で部屋にこもりがちだったけど、
うちの子にお菓子をくれることもあったんですよ」。 チェンマイの中心部
にある古びたアパート。 管理人のサムルアイさん(52)が心配そうにつぶ
やいた。
おじいさんとは、アパートに長期滞在していた60代の日本人男性のことだ。
「女性に貢いでお金に困っていたみたい。バイク事故をきっかけに身の回
りの事ができなくなってね…」
サムルアイさんは見るに見かねて、朝昼晩に食事を届け、排せつ物で汚
れた部屋も掃除していたという。「私が優しいって? 仏教を信じるタイ人
にとって、お年寄りの世話をするのは当然のこと。ほっとけないよ」と照れ
笑いした。
●別のアパートでも、日本の親戚と縁を切り、単身でタイ北部に20年近く
滞在していた70代男性の世話を、タイ人の清掃員らが担っていた。
家賃の滞病が悪化して失禁を重ねるようになり、周囲の人は困り果ててい
たという。
2人とも日本には居場所がなく当初は「帰りたくない」とかたくなだったが、
昨年から今年にかけて相次いで帰国した。
説得に奔走したのが、チェンマイで昨年9月に発足したボランティア団体
「ジャパン・ケア・ネット」(JCN)だ。
「帰国のタイミングを逃したら、2人はどうなっていたか分からない」 JCNの
志田義晴代表は言う。
15人のメンバーが独居老人の見守りを手弁当で行い、衣服などを提供。
帰国の説得のほか、飛行機代を立て替えたこともある。「同じ日本人として、
タイの人たちに迷惑は掛けられない」との思いからだ。
●タイ北部は、首都バンコクに比べて物価が安く気候も温暖なため「第二
の人生」を歩もうとする日本人年金生活者に人気が高い。
北部9県を管轄する在チェンマイ日本総領事館によると在留届を出してい
る日本人は3200人を超えており、60歳以上が5割、70歳以上は3割を占
める。
ほとんどが1年更新のロングステイビザで悠々自適に過ごす人たちだが、
滞在の長期化で高齢化が進行。病気や貧困に直面する人が急増している。
借金や女性問題を抱えて家族と縁を切り、チェンマイに流れ着いた人も少
なくない。
●街を徘徊して警察に保護される認知症の男性。所持金もなくホームレス
同然の生活困窮者…。総領事館にはタイ当局から日本人に関する情報が
連日寄せられる。
「日本の超高齢社会の縮図のような事が起きている」と峯尾直矢領事は嘆く。
しかも、ここは海外。日本の社会保障制度は基本的に、適用されない。
最初は元気でも、誰しも年を取れば病気になる。タイの病院は治療費が高
額。医療保険に入っていなければ一気に蓄えを失い、生活が困窮してしま
うのだ。
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●いま最も懸念されているのが孤独死の増加だ。タイ北部では毎年20~
25人の日本人が亡くなっているが、昨年は38人に上った。
日本人の70代男性が昨年4月、チェンマイのマンションの一室で息を引き
取った.孤独死だった。「礼儀正しい人だったけど、近所付き合いを避けて
いた。もっと踏み込んで付き合っていれば」。隣室だった日本人女性(71)
は悔やむ。
男性は亡くなって1週間後に発見された。遺体はさらに2カ月間、病院に安
置されたままだった。日本との関係が20年以上途絶えていたため、親族を
捜すのに時間がかかったのだ。タイでは親族の署名がなければ、遺体の引
き取りも火葬もできない。総領事館が戸籍をたどって親族に連絡を入れても、
複雑な事情を抱えた人の場合は「一切関わりたくない」と拒否されることも多
い。
そのたびに総領事館は、委任状への署名や諸経費の負担に応じてほしいと
頼み込む。タイでは遺体を病院に安置するだけで1日に数百バーツ。
火葬も有料だ。
●「日本人の高齢者問題がここまで深刻な地域は、他にない」 と峯尾さん。
タイで暮らせば日本の社会保障制度は基本的に適用されず、タイの公的サ
ービスからも外国人は抜け落ちてしまう。そうしたセーフティーネットの「隙間
に落ちてしまうリスクを考えてほしい」と警鐘を鳴らす。
●[タイの主なロングステイビザの取得要件]
◇年齢:50歳以上
◇資産:以下の(1)~(3)のいずれかを満たすこと
(1)80万バーツ(約270万円)以上を銀行に預金
(2)年金による収入が月に6万5000バーツ(約22万円)以上
(3)預金と年金による年収の合計が80万バーツ以上
◇滞在期間:最大1年。何度でも延長できる
●新天地で救われた」人も「働きづめだった」元銀行マン、
滞在10年、鬱病完治、新たな伴侶
チェンマイで第二の人生を踏み出し「救われた」と感謝している人もいる。
銀行マンだった岡晴雄さん(67)は、若い頃から働きづめの毎日だった。
債権回収の現場では暴力団とも渡り合った。 「自分は心臓に毛が生えた
強い人間と思っていた」と言う。しかし、妻をがんで亡くして、生活が一変
した。自宅介護の疲れやストレスから、うつ病を発症。
「自暴自棄になり、毎日死ぬことばかり考えていた」 このままではいけない
と一念発起し、56歳の時、単身でチェンマイに渡った。 タイ人のピチャー
モンさん(44)と再婚すると、義理の息子の助けもあって5年で うつ病を完
治させた。
「彼女は乳がんの経験があってね、亡くなった前妻と重なったのかな」と岡
さん。義理の息子と関係を築けたことも大きいという。 「タイに来て怒ること
をやめた。ルーズな部分も多い国だが、どこかほっとする。 日本人は何か
に縛られているのかも」と笑う。
●ロングステイ財団(東京)によると、日本人のロングステイ希望国・地域で、
タイは2016年まで6年連続で2位。1位はマレーシア。
弓野克彦事務局長は「物価が安くアクセスが良く暖かい。安近暖が最近の
トレンド」と言う。
首都バンコクに3年半滞在している男性(68)は「街に活気があり、日本の
地方より便利で刺激がある」と目を見張る。
週に2回は1回2千バーツ(約7千円)のプレー代でゴルフざんまい。
「飽きたら日本に帰る」と自由気ままだ。
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●しかし、こうした成功例はほとんどが年金以外に十分な蓄えのあるケース。
タイの物価は経済成長に伴って年々上昇。 この10年で消費者物価指数は
2割上がった。 アベノミクスによる円安で、為替メリットも享受できなくなって
いる。
タイの企業「ロングステイ・コンサルティング」の佐藤裕社長は、滞在期間や
生活レベルで幅があるとした上で「夫婦がタイで生活するには住居費込みで
最低でも月3万バーツ(約10万円)は必要。
趣味も旅行もとなれば5万バーツ(約17万円)以上はかかる」と話す。
●重要なのは病気への備えだ。タイは外貨獲得のためロングステイを推奨し
ているが、そうした人向けの医療保険は未発達。
日本で海外旅行保険に加入して渡航するのが理想だが、保険料は高額だ。
タイの民間保険には60~65歳以上は加入できず、審査も厳しい。
佐藤さんは「『病気になったら帰国し、日本での生活に戻る』と決めて渡航す
る人も多い。全て処分して海外に渡るのではなく、コストはかかっても、住民
票を抜かずに自宅を維持し、国民健康保険を活用する道も残しておくことを
検討すべきだ」と話した。
● 安価なアジア 人気ロングステイ財団(東京)によると、海外で2週間以上
滞在した日本人は2016年の推計値で158万人に上る。
滞在期間は7割が3カ月未満という。 アジア各国・地域が人気なのは、滞在
費用が欧米・オセアニアよりもリーズナブルで、長期滞在ビザも取得しやすい
ため 台湾は親日的でアクセスが良いため、近年躍進している。
マレーシアとタイは家具付きのコンドミニアムが豊富。
(まだまだく)
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