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■新型インフルエンザの恐怖■

2008-11-04 | ●日本の医療と介護

アジア発,感染症大流行の予測
石油資源や食糧の危機についで世界を襲う可能性が高いのが、強毒
性の高い「
鳥インフルエンザ」(H5N1)が変質した強毒性の新型イ
ンフルエンザ感染症の
大流行(パンデミック)である。しかもこれが、
いつ起こってもおかしくないというから怖い。


●新型インフルエンザは、東南アジアを基点に拡大する可能性が高い。
発生すると、全世界の死者は4000万人とも1億5000万人とも
言はれる。
この新型インフルエンザが発生すると、内外観光、海外ロ
ングステイはもとより企業
活動、食品、飲食、輸送などほぼストップ
せざるを得ない状況になる。


●これが世界で猛威を振るうとなると、世界経済や企業への打撃はゆ
うに800
兆円の経済損失になると予測される。
WTOを中心に対策が急がれているが、日本でも政府与党の危機管理
プロジェクトチーム(座長川崎二郎)が発足、
経団連,自治体,企業も
動き始めた。
しかし国の対策予算は、米国の10分1以下という お
粗末さだ。


●アジアとの交流の多い日本人は鳥インフルエンザ「H5N!}と
新型インフルエンザについてどう対応すればよいか」
日本の気管支
喘息の権威である宮武明彦医学博士にうかがった。


■■■■■■■■■H5N1の脅威■■■■■■■■■                          
                                                            医学博士 宮武明彦
■■鳥インフルエンザの感染の経
●WHOの集計では、2008年4月8日までに世界で高病原性H5N1鳥イ
ンフルエンザに感染した人は
379人であり、そのうち239人(63.1%)
が死亡と報告されている。


●感染はアジアを中心として中東、アフリカまでの14ヵ国に及び、 
           (死亡数/患者 数)、 
・インドネシア    105/129人
・ベトナム             52/106人、 
・エジプト             20/ 47人、 
・中国                    20/ 30人、 
・タイ       17/ 25人、 
・トルコ        4/ 12人
の順に感染ならびに死亡者が記録され、残りの国の感染例は一桁台
となっている。
感染の形態としては、鳥との濃厚接触によって感染
した症例が多くを占め、

「トリからヒトへの感染」であり、
「ヒトからヒトへの感染」は現在のところまだ確認されていない。

しかし、インフルエンザの専門家の間では、高病原性H5N1鳥インフ
ルエンザが
ヒトからヒトへの感染能力を獲得する可能性は,if(もしか)
ではなくて  when(いつ)の危険域に達していると考えられている。

 
■■インフルエンザ流行の歴史
●一方、わが国においては2004年に高病原性H5N1鳥インフルエンザ
による
「トリからトリへの感染」が、山口県,大分県,京都府の養鶏場
で次々と認められ
たが、幸いにもヒトへの感染は起こらなかった。

●インフルエンザ流行の歴史を振り返えると,高熱を伴う風邪症状の
記載は
既にギリシア時代の紀元前412年、医学の父と呼称されるヒ
ポクラテスの記述の中に認められる。

さらに、16世紀のイタリアではこの病気が周期的に発現し、この病
気の原因が、
星や寒気の影響(influence)と考えられたことからイン
フルエンツァと呼ばれた。


●一方,日本においても江戸時代の享保元年(1716年)に,インフルエン
ザ流行と
考えられる熱病のため、江戸市中でわずか1ヵ月間の間に
約8万人が死亡したと記録されている。


■■インフルエンザの世界大流行

●20世紀に入ってからのインフルエンザのパンデミック(世界的大
流行)は、 
・1918年のH1N1によるスペイン風邪、 
・1957年のH2N2によるアジア風邪、 
・1968年のH3N2香港風邪、 
・さらに、1977年のH1N1によるソ連風邪などが列挙される。
これら世界的大流行を来したインフルエンザウイルスは,遺伝子学
的にトリインフルエンザとヒトインフルエンザのハイブリッドであ
ることが
確認されている。

●「H1N1」によるスペイン風邪は世界人口の50%に当たる6億人が
感染し、
死者は4000-5000万人に及んだ。
当時、ヨーロッパでは第一次世界大戦の最中であったが、その兵士
の戦死者900万人の約3倍に当たる2500万人がヨーロッパ域内で
死亡
したと記載されている。

このスペイン風邪は日本へも飛来し日本人口5500万人のうち2300万
人が発病し39万人が死亡している。


●1933年、ヒトのインフルエンザウイルスが,
Smith.Andrews.Laidlowらに
よって始めて発見分離された。ウイル
ス研究が飛躍的に進歩したのは1970年代後半以降である。

1997年にはアラスカの凍土から発掘されたスペイン風邪により死亡
したと
される4遺体の肺標本から,インフルエンザウイルス・ゲノム
が回収され、
スペイン風邪の正体がH1N1インフルエンザウイルスに
よるパンデミック
あったことが証明された。

■■鳥インフルエンザの脅威)
●H5N1鳥インフルエンザによる最初の犠牲者は,香港において1997年
4月に
肺炎で死亡した3歳男児で、12月までに18 名のヒトへの感染が
確認され、うち6名が死亡している。

香港特別行政府がニワトリをはじめすべての家禽類160万羽を3日間
で殺処分
した結果、ヒトへの感染は消失した。

●現在,H5N1鳥インフルエンザの発生が確認されている国は61
ヵ国に上り、
いつヒトに対してパンデミックを起こすウイルスに変
化するかは誰にも予測
できない状況にある。
しかし,トリからヒトへの感染者の数は増加の一途を辿っていること
から,
日本政府は2008年4月24日に改正感染症法と改正検疫法を参院
本会議で
可決、成立した。

●改正法は,既存の1類から5類の感染症分類に加え,新型インフルエン
ザに
ついて新たに分類を設け,危険性が最も高いエボラ出血熱などの
1類感染症
に準じる感染症に位置付けられた。
これにより国内で発生した場合に、感染拡大を阻止するため,都道府
県知事は
患者に強制入院や移動・就業制限が出来るほか、危険地域
の建物の封鎖や交通規制も2年以内の期限付きで認めた。


●また発症していないが感染が疑われる人にも、医療機関やホテル
への収容
や,自宅からの外出自粛勧告などの措置がとれることになっ
た。

検疫についても、帰国途上の航空機や船舶で患者と居合わせたなど、
「感染の恐れのある人」が入国する際は,10日間程度、空港などの周
辺に留め置く措置も可能になった。


■■新型インフルエンザへの予防対策
●新型インフルエンザに対する法的整備は進んだものの、政府が備蓄
している
2500万人分の「抗ウイルス薬タミフル」と、160万人分の
「リレンザ」および2000万人分
の鳥インフルエンザの「プレパンデ
ミックワクチン」等を何時,どのようにして
誰に配るか、細則はまだ
準備段階である。


●2008年度中に,国が指定した医療機関の従事者に対して, 6000人の
希望者を
募り、プレパンデミックワクチンを注射し副作用等を検討
した上で、
問題がなければ2009年度から順次接種を広げて行く予定
となっている。
しかし予防効果は未知数である。
一方、
H5N1がヒトからヒトに感染する能力を獲得した時には,高速
大容量交通機関の
現代社会にあっては、わずか1週間以内に,世界で
6億人が感染すると試算され
ており日本においても60万人から210万
人が新型インフルエンザによって命を
落とすと推定されている。
速やかなる国および地方自治体の対策準備が望まれる。


<参考文献>
河岡義裕;インフルエンザ危機:集英社新書2005、
岡部信彦編集;インフルエンザ-基礎・臨床研究の最新動向: 
日本臨床64:1766-1807,2006
柏木征三郎編集主幹;8:95-150,200 メディカルレビュ-社
柏木征三郎編集主幹;インフルエンザ8:181-208,200ディカルレビ
柏木征三郎編集主幹;インフルエンザ9:9-56,2008ディカルレビュ-
岡田晴恵;H5N1:ダイヤモンド社2007年

●著者プロフィール  医学博士 宮武明彦氏  
大阪大学医学部第3内科助手、英国ロンドン大学研究員  
大阪府立羽曳野病院内科医長  
現在 医療法人 宮武内科院長、  
日本を代表する副腎ホルモンと気管支喘息の専門医 
JTIRO会員
詳しくはhttp://www1.sphere.ne.jp/man/man/KAIHO9/benkyou.html

【関連データ】
世界の戦争と感染症の死亡者数   
(戦争名)         (死亡者数)
●第1次世界大戦      2600万人
●第2次世界大戦      5355万人

●朝鮮動乱          300万人
●ベトナム戦争        236万人   

(世界的な感染症)               (推定志望者数)
●黒死病(ペスト菌)      14世紀        8500万人
●スペインインフルエンザ   1957年    5千万人~1億人
   

●香港インフルエンザ     1968年       100万人
(地球白書2000)


■■新型インフルエンザ関連情報サイト
●厚生労働省 個人・家庭・コミュニティでのガイドライン  
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/pdf/09-12.pdf

●与党プロジェクトチームの鳥由来新型インフルエンザ対策  
http://www.jimin.jp/jimin/seisaku/2008/pdf/seisaku-018.pdf

●日本経済団体連合会の提言  
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2008/043.html

 

 


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