■■■■■■■■■■自主防衛と抑止力■■■■■■■■■■
■「大きく揺れるアジア情勢」
●いま東アジア情勢が大きく揺れている。
日本が当面するアジア問題とは
・米中の貿易戦争問題
・北朝鮮の核開発問題
・日韓の問題(竹島の不法占拠から最近の輸出規制問題まで)
・日中の尖閣攻勢問題
・南シナ海の中国覇権問題
一見、平和に見える日本も、その危険極まりないアジアの一角に位置する。
●ところが国内を顧みれば、その国政を掌る通常国会では、野党は、このような
山積する国際情勢問題をさておき、「桜を見る会問題」で与党を責める事に終始
して、国会の幕を閉じた。そこには自責の念は微塵もない。
このような貧しい国会の状況に、国民の多くも格別の怒りを発する様子はない。
マスコミの対応も中庸的で当たらず触らず、いずこも、いずれも平和ボケというか、
暦年劣化としか言いようがない状況である。果たして日本はこれでいいのか?
■「日韓の行方と中国の策略」
●日韓はいま厳冬期だといわれる。理由はいろいろだが、一番最近では、日米韓
の最重要な日韓軍事同盟(GSONIA)を、韓国が一方的に破棄しようとしたことだ。
破棄寸前でとどまったとは言え、あまりにも無謀すぎた。
しかし元をただせば、このような行動は、明治にさかのぼる日韓併合の民族問題が、
底辺にある事は否めない。いま世界でもめる地域騒動の根源は、そのほとんどが
歴史的な宗教や覇権に絡む長い民族の問題が原因と言われる所以である。
●いま世界のトレンドは、5Gだ、iOTだと大きな技術革新という新しい波が、世界を
包み込もうとしている。この時にこれを道具にして、新興国を手なずけ、そして覇権
の魔手を伸ばす大国中国の狙いこそ危険極まりない。これがいまの米中貿易戦争
の根源の一つでもある。
(●中国から見た東シナ海の地図)、
■「南シナ海の暴挙」
●世界の経済大国として台頭してきた中国は、太平洋への進出を図って、まず東
シナ海から太平洋への海路となる日本領尖閣(沖縄ルート)や、南シナ海の南沙
諸島の領有権など、アジアにおける覇権をあらわにしてきた。
南シナ海シーレーンの安全航行が妨げられる危惧は、日ましに高まりつつある。
当然のように、世界の警察官を自任する米国は、南シナ海の公海の安全航海を
目指して、自国太平洋艦隊の原子力空母群を、海洋パトロ―ルに充ててきた。
●アジア情勢に詳しい樋泉克夫教授は、中国の「一帯一路」の経済路線について
「習近平政権が 「一帯一路」 実現を推進するなら、その過程で避けて通れない
東南アジア最大級のインフラ建設となるばかりか、それを南シナ海問題、さらには
アンダマン海に続くインド洋とリンクさせるなら、世界的な安全保障・海運通商問題
として、浮上してくることは間違いない。」(中略)
インドネシでの高速鉄道受注失敗といい、日本がこのまま手をこまねいているなら、
安倍政権が掲げるインフラ建設輸出のみならず、対中包囲網構想さえも なにやら
掛け声倒れに終わりはしないだろうか。」と危惧する。
この記事にもあるように、タイへの急接近を図る中国は、タイの高速鉄道の建設計画
にも触手を伸ばす。これに対して、タイと長い友好関係にある日本はじめ、米国など
自由陣営の今後の対応が注目される。しかしそこには世界を2分する米国と中国の
覇権対立が、常に危惧されるわけだ。
(世界最新鋭のF35A戦闘機と、米国の原子力空母)
■「アジア空母新時代」
●いまアジアの海が危ないと言われて、すでに数年が経つ。しかし南沙諸島は何時の
間にか中国の手で軍事基地化され、南シナ海は中国の覇権で制覇されつつある。
このような南沙はじめ、尖閣諸島の中国の国境侵犯事件に関連して、中国の海軍力
増強問題が、日増しに大きな国際問題になりつつある。
●中国国防省は12月、中国が初めて建造した国産初の空母「山東」が、南シナ海に
配備されたと発表した。これで旧ソ連から買い入れ改造した「遼寧」(5万トン)と2隻体
制になる。日本や東南アジアや米国は、益々警戒を強める。
中国海軍の機動力の増強は、現在の「近海防衛」から「外洋海軍」への脱皮を目指す
もので、日本に隣接する東シナ海域や、南シナ海の領有権などアジア全域で、新しい
摩擦懸念を助長しかない問題になりつつあるわけだ。
■【アジアの海軍軍事バランス】
(国名) (空母) (潜水艦)
中国 2 69(うち旧型25)
日本 4(へり) 24 ●
米国 11 70
台湾 4
韓国 15
フィリピン
ベトナム 2
タイ 1 4 (中国で建造中)
インド 2 16
(出所:ミリタリーバランス)
■「日本の海域防衛」
●日本海域の海上と海中防衛は、防衛省の海上自衛隊が担当する。
人員は現在4万5000人、60隻の大型艦艇をもち、中でも、高度な防空能力を持つ
イージス艦を保有するのは、米国とスペインと日本のみ。
世界有数の海上防衛規模を誇る。既に2万4000㌧級の新型ヘリ空母を2隻もつ。
日本の海上自衛隊はヘリ空母「22DDH」に、レイセオン社製防空システム「SeaRAM」
の「Mk 15 Mod 31」を搭載する。米海軍以外の艦艇への「SeaRAM」搭載は世界初で
抑止力は想像以上に大きい。
(航空母艦の様相を見せる話題の出雲型最新鋭護衛艦の雄姿)
■「タイの軍隊」
メコン諸国のハブとして位置するタイ王国は、ASEANの中では異色の存在といえる。
現在は、自動車産業を中心とした高度な産業立地工業国として着実な進展を見せる。
軍事力は決して大きくはないが、質から見た内容はASEAN屈指の力量を持つ、現在
の陣容は、陸軍19万人、海軍6万8千人、海兵隊1万8千人、空軍4万8千人、
隣国と比べると、兵力数では べトナムの41万、ミヤンマーの33万、インドネシアの
23万に劣るが、海軍力では、隻数で他を圧する。
その他、戦略的なF16戦闘機やアセアン唯一の空母を持ち、総合力では、ASEANで
最有力の評価が高い。
■「ASEANの国防力」
●タイをはじめASEANの国々の国防状況を見るとーーー
各国の政治は安定しており、経済はきわめて順調に発展の過程にある。カンボジアを
除くほとんどの国が、軍事的にも経済的にも米国との協力関係にあり、米国のプレゼン
スが大きい。
■「ASEANの軍隊の現況」(参考資料)
(項目) (タイ王国) (ベトナム) (カンボジア) (マレーシア)
・人口 6813万人 8902万人 1505万人 2700万人
・GDP名目 3457億ドル 1227億ドル 132億ドル 2786億ドル
・軍事予算 1685億バーツ 1億千万ドル 45億4千万ドル 国予算の26%
・兵役 2年 2年 18ヶ月 志願制
・総兵力 30,5万人 48,2万人 12,4万人 10,9万人
・陸上戦力 19万人 41,2万人 7,5万人 8万人
・戦車 283両 1115両 150両 48両
・海上戦力 4,6万人 4万人 2800人 1,4万人
・総隻数 119隻 74隻 11隻 52隻
・空軍戦力 4,6万人 3万人 1000人 1,5万人
・作戦機 165機 223機 24機 82機
・軍機 39機
(出所:日本防衛白書)
■「日本の国土防衛」
●いま日本では、離島防衛を含めた日本の新しい防衛態勢の確立が急がれている。
それは当然新年度の防衛予算にも大きく反映されている。例えば無人偵察機の導入
とか、南西諸島初動部隊の配置とか水陸両用部隊の創設とか、海上保安庁の巡視船
の増強と合わせて、尖閣シフトが明確になった。
日本の防衛予算は、GDP対比で見ると約1%強で、他国に比べて低いが、圧倒的に
経済の基盤が大きいため金額ベースでは巨額になり、世界でも有数の近代的な国防
装備を持つことになる。
■「日米両国の軍事力」(参考資料)
(項目) (日本自衛隊) (米国)
・人口 1億2699万人
・兵役 志願制 志願制
・総兵力 24,7万人 156,3万人
・陸上戦力 15,1万人 63,9万人
・戦車 850両 6242両
・海上戦力 33,6万人 (海兵隊20,4万人)
・総隻数 115隻 255隻
・空軍戦力 4,7万人 34万人
・作戦機 374機 2485機
・海軍機 95機 1202機
(主な参考文献、24年防衛白書他)
■「平穏なアジアの海」
●日本は、全てのエネルギーのすべてを、中近東に依存している。 その石油を運ぶ
30万トンのマンモスタンカーは、中近東で石油を満載して、インド洋からマラッカ海峡
抜けて、中国の覇権で揺れる公海の南シナ海を北上し、1万2000キロをほぼ25日の
航海で日本に帰り着く。
日本と中近東を結ぶ いくつかの広大な海を、日本の数百隻のマンモスタンカーが、
長い長い列をなして往く光景は、まさに平和なアジアの海の壮観といえる。
それだけに、南シナ海の平穏が、日本の経済と国民生活を支えているといっていい。
平和、平和というだけで、尖閣や沖縄が守れるという時代は、もう、とっくに終わった。
「平和とは、戦争がない事ではなく、絶えず建設が続く事をいう。」ある識者の言葉が、
心にささる。(山田) (続く)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます