醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより  1024号  白井一道

2019-03-13 12:05:07 | 随筆・小説



   沖縄、辺野古に米軍のための新基地建設についての
                   民意を問う県民投票には法的拘束力がある




侘助 新聞やテレビのニュースによって県民投票には法的拘束力がないと聞いていたが、実は法的拘束力があるという話を聞いた。
呑助 県民投票に法的拘束性を認めるような法律が出てきたんですか。
侘助 憲法95条を読むと県民投票には法的拘束性があるという。安倍政権が沖縄県民投票の結果を無視することは、日本国憲法95条に違反する行為だと断罪する法的見解を述べている憲法学者がいる。
呑助 その憲法学者とは、誰ですか。
侘助 慶応大学名誉教授の小林節氏だ。またyou tubeで「永田町フーウン録」を見ていたら平野貞夫さんが沖縄県民投票を無視する安倍総理を憲法95条違反だと告訴する予定だと述べていた。
呑助 私も沖縄、辺野古に米軍新基地建設の可否を問う県民投票には法的拘束力はないものだと思っていましたが、そうではない。憲法に保障された県民投票だったということなんですか。憲法95条にはどのようなことが書かれているのですかね。
侘助 憲法95条とは次のようなものだ。
特別法の住民投票
 一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、 その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。
呑助 辺野古に米軍の新基地を建設するという特別法を施行するには住民投票の結果、過半数の同意が必要だということなんですね。
侘助 小林節氏は琉球新報の記者のインタヴューに答えて次のように述べている。辺野古新基地建設に伴う埋め立ての賛否を問うた24日の県民投票で、投票総数の約7割が埋め立てに「反対」票を投じた結果について憲法学者の小林節慶応大名誉教授は27日、本紙(琉球新報)の取材に応じた。小林氏は「県民投票には憲法上の拘束力がある。政府には憲法の趣旨に従って『少なくとも県外への移設』を追求すべき義務がある」と指摘した。
 小林氏は憲法95条を根拠に挙げた。同条文では「ひとつの地方自治体のみに適用される国の法律は、その自治体の住民投票で過半数の同意を得なければならない」と定めている。小林氏は県民投票で辺野古への移設は県民の過半数の同意が得られていないことが明確になったと指摘した。
 憲法95条で対象にしているのは「国の法律」だが、小林氏は「辺野古への米軍基地移設は形式上は『法律』ではないが、中央から地方へのいじめをしてはならないという憲法の趣旨からすれば、政府が過重な負担を沖縄に押し付けてはならないという規範が95条の法意だ」と説明した。
 投票率が有権者の約半分にとどまり、「反対」以外が約70万人いることなどを挙げて「反対が沖縄の民意」とすることを疑問視する指摘については「先の衆院選小選挙区で自民党の小選挙区での得票率は47%余りで全有権者に占める割合は約25%にとどまった。それにもかかわらず約74%の議席を獲得した。安倍政権が県民投票の獲得票の割合が低いと言うのであれば自己矛盾になる」と強調した。
 その上で「県民投票での埋め立て反対票の割合は自民に比べても圧倒的に多い。棄権した人は、投票に行った人の結果に従うというのが法的評価だ」と述べ、そうした指摘は全く当たらないとの見解を示した。
 また、首都東京大学教授、憲法学者の木村草太氏は県民投票の必要性を次のように説明している。
  新基地を造るための法的根拠
辺野古について考える際、そもそも米軍基地を造りたい場合にどうするのかが問題になる。日本は法治国家なので、何か国が行為をするときには、必ず根拠になる法律や条例が必要になる。
今の米軍基地を造るための法的根拠というのは、政府、内閣、防衛大臣に非常にたくさんの権限を与え、責任を内閣にかなり押しつけるという状態になっている。
いわゆる日米安保条約第6条に基づく駐留軍用地特別措置法に基づけば、政府がここに必要ですと言えば、そこに基地を造れるし、政府が土地を所有してなくても、収用して基地を造れるという法律になっている。
ただ、住民や地元自治体から何の意見も聞かずに、政府が認定し、基地ができるという法律になっているが、それでいいのだろうか。
こういう仕組みだと、嫌なことを押しつける仕事を政府だけで引き受けなければならない。今は法律の根拠が非常に曖昧かつ抽象的で、国民や国会が基地建設の責任を感じることができる状況になく、問題だ。
住民投票の必要性
憲法95条に基づいて、地元の声について考えてみたい。
米軍基地のようにみんながいやなものをどこかに造るとき、多数決というのは賢明な手段ではない。沖縄県民、東京都民であっても、国民全体でみれば少数派なので、国民全体で多数決をとれば負けてしまう。
日本国憲法95条は、「一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票において、その過半数の同意を得なければ、国会はそれを制定することができない」とある。辺野古新基地建設では、この条文に基づく住民投票が必要に思える。
1997年に名護市で、海上ヘリ基地についての住民投票があったが、それとは違う住民投票だ。従来の住民投票は法的効果というのが非常に弱い。なぜなら、住民投票の結果が、市や国を拘束できないからだ。憲法で市長や内閣に与えられた権限を、住民の意思で拘束することが、権限の制限となってしまうからだ。これが一般的に住民投票をやるときの壁になる。
ただ憲法95条の住民投票はそうではない。住民の同意を得ないと、その法律は制定できないわけだから、法案が国会を通過したとしても、その後に地元住民の同意を得るプロセスが必要になる。
辺野古新基地建設問題については、まず国民全体で責任を引き受け、地元を説得するために、国民全体が努力しなければいけない。そういったコミュニケーションを生み出す制度づくりが必要だ。