醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより  1039号  白井一道

2019-03-28 15:38:14 | 随筆・小説


  独饅頭を食べた中田宏樹将棋プロ棋士八段



侘助 99%負けていた将棋を指していた高校一年生プロ棋士藤井聡太7段は最終番、中田宏樹8段に毒饅頭を餌にして討っちゃった。
呑助 将棋は逆転のゲームだと聞きますが、大逆転ですね。
侘助 中田8段は54歳の将棋棋士、日本将棋界の大御所と言っても言い過ぎでない人格者のように見える人かな。
呑助 藤井7段というのは、まだ16歳の少年ですよね。
侘助 将棋界というのは天才の集まりだと言う人がいるくらいだからね。
呑助 先日、1981年放送のNHKアーカイブス「勝負~名人への遠い道~」を見ましたよ。奨励会3段、年齢制限で将棋界を退会した鈴木英春氏のドキュメントを見ましたよ。最後は泪に目が曇りました。
侘助 もう38年も前の放送だな。その頃より今はもっと厳しい規則になっているようだ。
呑助 今は年齢制限も引き下げられているように聞きますね。
侘助 鈴木英春さんの頃は30歳までに4段に昇段しないと退会したようだが、現在は25歳までに4段に昇段しないと退会なるようだ。
呑助 三段リーグで上位二位にならないと4段になれないらしいですね。
侘助 奨励会三段リーグというのはとても厳しいようだ。
呑助 奨励会3段の棋士は何人いるのですかね。
侘助 奨励会3段の棋士は現在33名いる。半年かけて19戦を戦う。2018年10月から2019年3月まで19戦、戦い上位2名が4段に昇級する。この3月に4段昇級した棋士は23歳と22歳だった。
呑助 藤井聡太君は中学二年生、14歳の時にプロ棋士4段に昇級したことがニュースになった理由がわかりますね。
侘助 藤井聡太君は16歳で今や押しも押されもしない7段の棋士になった。
呑助 朝日杯戦では昨年に続き今年も優勝しているのでしょ。
侘助 順位戦C級一組のリーグ戦で9勝1敗の成績を藤井7段は上げたが、順位のため、B級2組への昇級を逃した。
呑助 圧倒的な強さですね。
侘助 中田8段も強い。中田8段は、プロ入り後の約20年間、年28勝のペースで勝ち星を積み上げ、勝数によって42歳の時に8段に昇段した。年間20勝することはなかなか難しいと言われているようだよ。その中で28勝という数字は、年度ランキング10位前後に相当する勝数のようだ。
呑助 3月27日、行われた中田8段対藤井7段の将棋は何戦ですか。
侘助 読売新聞が主催する竜王戦4組、ランキング戦だった。竜王戦の優勝賞金は4320万円、将棋界最高の賞金だ。だからもっとも厳しい戦いだともいえる。現役棋士全員と女流棋士4名・奨励会員1名・アマチュア5名が参加して行われている。1組から6組まで順位が付いている。6組から出発した藤井7段は今や4組に在籍している。
呑助 中田8段との対戦は何回戦だったのですか。
侘助 一回戦が村田6段、二回戦が畠山8段、3回撰が中田8段との対戦だった。あと2回勝つと4組優勝だ。4組で優勝すると竜王挑戦権獲得のためのトーナメント戦に参加することになる。
呑助 竜王挑戦権を獲得するのはまだまだですね。
侘助 今回の竜王戦4組ランキング戦は藤井7段の苦戦だった。序盤から終盤に至るまで藤井7段が苦戦していた。
呑助 毒饅頭を食って中田8段は敗れたということはどういうことですか。
侘助 藤井7段は絶体絶命の状態だった。中田8段は桂馬に紐をつけて藤井7段の駒「銀」の頭に「歩」を打った。藤井7段は銀の駒を右斜め下、龍という駒の隣の1段下の枡に下がった。この銀が毒饅頭だった。中田8段は数分考えて隣の升目に下がってきた駒「銀」を取り上げ、龍は一列隣の枡に移った。竜の位置がずれたことを確認した藤井7段は龍で中田8段の駒、金を取り、一挙に詰ましてしまった。藤井7段は詰将棋の名将だからね。中田8段は静かに頭を下げた。