8日及び9日付「しんぶん赤旗」は、連続して、全労連と共同して研究・政策活動をしている労働運動総合研究所(労働総研)が7日に発表した2015年春闘提言「目先の利益ばかりを追求する経営を改めさせ大幅賃上げ実現を」報道しました。
早速、労働運動総合研究所のホームページを開き内容をお読んでみました。 どんな提言をしているのか、紹介してみたいと思います。
[提言要旨]「目先の利益ばかり追求する経営を改めさせ大幅賃上げをー内部留保をこれ以上増やさないだけで月11万円以上の賃上げが可能ー
◆ 当研究所(労働総研)は、かねてから溜まりすぎた内部留保を賃金・労働条件の改善に活用することが日本経済発展のカギであると主張してきた。 近年、その主張が広く理解るようになり、安倍政権も国会で「しっかり(内部留保を)人材に充ててもらいたい」と答弁するに至った。 しかし、内部留保の活用はいっこうに進まず、2013年度末には、GDPを27.8兆円も上回る509.2兆円に達した。
◆ 現在も内部留保は依然増え続けており、1年間に42.8兆円も増加した。 過去に蓄積された内部留保を取り崩さなくても、この原資を活用すれば、役員給与および株主配当を同率に引き上げたとして、1ヵ月11万円以上の賃上げが可能である。
◆ 内部留保は、税金、株主配当、役員給与等を全て支払った後の利益の蓄積であるが、本来、株主や従業員に配分されるべきものであり、多額の積み上がりは、資本主義であっても正常な経済の姿とは言えない。
◆ 2014年の賃金上昇率は1.4%であり、消費税増税分3%の影響(日銀推計によると2.0%)がカバーされていない。 物価上昇と税・社会保険等の負担増から生活を防衛するためには、2015年春闘において、少なくとも6.0%、1万8千円以上の賃上げが必要である。
◆ 日本には、残念ながらサービス残業や過密・長時間労働、低い年休取得率など、先進国と言えない恥ずかしい労働の実態がある。 また、近年の非正規社員の増大がさらなる労働条件の悪化を招いている。 これらの改善を目指すたたかいは、いま、とりわけ重要になっている。
◆ 賃上げ、労働条件の改善は企業に負担増をもたらすが、家計消費需要の拡大によって国内生産が誘発され、回りまわって企業の生産活動を活発にする。 また、GDPや税収を増やす。 産業連関分析により、その大きさを計測したところ、生活防衛に必要な最低限のベースアップと最低賃金の引き上げ、働くルールの確立および非正規の正規化によって、GDPが24.3兆円、税収が4.2兆円増えることが分かった。
◆ いくら首相が要請しても、経営者が率先して自社の賃金を上げることはない。 鍵を握るのは労働者のたたかいである。 2015年春闘は、生活改善だけでなく、本格的なデフレ脱却、経済成長をめざすたたかいであり、労働組合の責任が問われる春闘と言える。
同提言は、資本金別内部留保について、次のように報告しています。
「過去1年間(2013年7~9月期から2014年7~9月期まで)に内部留保は、42.8兆円も増加した。 資本金規模別にみると、10億円以上の大企業は14.3兆円、1~10億円未満は7.7兆円、5千万~1億円未満は11.1兆円、1~5千万円未満は9.6兆円と売上高および経常利益がマイナスであった1~5千万円を含む全ての規模で内部留保が増加している」
「当研究所(労働総研)は、大企業が膨大な内部留保の一部を取り崩して、従業員の賃金ならびに下請け中小企業との取引価格を引き上げることがデフレ不況からの脱却にかかせないと主張してきたが、実は、過去に積み上げた内部留保を取り崩すまでもなく、これ以上内部留保を増やすことをやめ、当期の純益を従業員と役員および株主に還元するように経営を改めるだけで、月11.7万円以上の賃上げが可能になる」
「この要求を実現することは、目先の利益ばかり追求し、結果としてデフレ不況を長引かせている大企業の経営を、社会的責任を自覚した経営に転換させ、日本経済の本格的なデフレ脱却を可能にすることでもある」
労働者のみなさんはもとより、多くの方々に読んでいただきたい「提言」だと思います。