元日本航空(株)取締役技術研究部長の松尾芳郎氏が、10月28日付で「ハワイのV-22オスプレイ事故は、エンジンの砂塵吸込みが原因?」をインターネットに掲載しています。 大変参考になる意見として読みました。 意見の一部を紹介させていただきます。
「オスプレイには、不整地着陸の際に砂塵を大量に巻き上げそれをエンジンが吸込み、内部を損傷するという問題がある。 このためエンジンの改修が必要だが改修案が決まるのは2017年以降となり、全機に改修が行きわたるのは何時になるか未だ決まっていない」
「事故調査報告書案(米海軍航空システム司令部=9月9日付=紹介者:注)によると、パワー・ロスの原因は、熱に反応し易い【CMAS】は、エンジンの燃焼室で溶け、それがタービン・ノズル・ベーンに付着して固形化する粉末状の物質で、成分は「カルシウム(calcium)、マグネシウム(magnesium)、アルミニウム(aluminum)、シリコン(silicon)である。 【CMAS)】がタービン・ノズル・ベーンに付着し空気流を阻害するので、タービン/コンプレッサーの回転数が低下して”サージング(失速)”に対する余裕が少なくなる。 この状態でパワーを出そうとレバーを進めると警報音が鳴らなくてもストール(失速)になる」
「V-22オスプレイのRolls-Royce AE1107Cエンジンは、メーカーで【CMAS】吸引の影響を調べる試験を行っていない。 ガスタービンでは、砂塵吸引でコンプレッサー・ブレードが摩耗し次第に性能が低下すること、は広く知られていいる。 しかし【CMAS】がタービン・ノズルに及ぼす問題は比較的新しく、その影響は使用する着陸地域によって異なる。 そして、これはエンジンの”ストールに対する余裕(surge marjin”を減殺するので問題は大きい」―(
「エンジン・インレットに取り付ける新しい「砂塵セパレーター(EAPS)の研究は2013年から始まっている。 新「EAPS」はオイルを含浸させた綿製フィルターとなり、離着陸時のみに使用し、巡航になるとバイパス・ドアが開いて空気をそのままエンジンに吸収する仕組みになる。 2017年には完成する予定で、全機の改修が始まるのはその後になる」
松尾芳郎氏は、V-22のエンジンの寿命について、次のように指摘していることも重要ではないでしょうか。
「V-22エンジンRR AE 1107Cの寿命についてだが、海兵隊では、2007年から4年間の実戦経験を元に以前は”使用時間(time-on-wing)"は「戦闘に使い続ける場合は200時間、訓練や後方兵站で使う場合を含めると560時間」としていた。 しかし今では860時間までに改善されている。 エンジン寿命は使用環境で大きく左右され、不整地使用が多い場合と舗装されたランウエイや空母の甲板上で使う場合とではかなり異なる。 しかし輸送用双発ヘリCH-47FチヌークのエンジンT55-L-714A(ハニウエル制)の寿命は3,000時間で、両者にはまだ大きな開きがある」