長尾景虎の戯言

読んだり聞いたりして面白かった物語やお噺等についてや感じたこと等を、その折々の気分で口調を変えて語っています。

柴田よしき著【さまよえる古道具屋の物語】

2017-07-24 11:03:32 | 本と雑誌

いつからそこにあるのか?忽然と現れ、忽然と消える古道具屋。
最近オープンしたにしては、古び過ぎている、でも前からあったかと考えると、まったくそんな記憶がない。
店主は異様な人物で、目がやたら大きくて白目が多く、丸い鼻はあるかないかのごとく小さい、口角が吊り上がってみえる大きな口。
笑っているのか?その顔は貼りついたように変わらない。小柄でそれでいて、男性か女性か判断できない。
そう、忍者ハットリ君に似ているのだ、妙な京都弁でしゃべる。
そこに入ると、自分の意思とは関係なく、なんらかの品物を売りつけられる。
しかも値段は、自分が今持っている有り金全部とぴったりである。
その品物はどれも不可思議な物ばかりで、しかも使い方を間違えると…。
時間は登場人物には流れていくのだが、何故かこの古道具屋は止まったままである。
つまり登場人物は年を取り、それぞれ経験をつんで行って変貌するのだが、この古道具屋と店主はまったく変わらない。
しかし、二度目からは訪れる者に対して、店主の態度ががらりと変わり、横柄になる、口角もへの字になる。
移動しながら唐突に現れては、また忽然と消えることを繰り返す古道具屋…。
第一話「さかさまの物語」第二話「金色の豚」第三話「底のないポケット」第四話「持てないバケツ」
第五話「集合」第六話「幸福への旅立ち」そして何故か?最後がプロローグである。
よくできた物語である。