長尾景虎の戯言

読んだり聞いたりして面白かった物語やお噺等についてや感じたこと等を、その折々の気分で口調を変えて語っています。

北村薫著【街の灯】

2010-10-14 12:32:22 | 本と雑誌

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昭和七年、大戦前の上流階級が舞台。
主人公は女子学習院に通う社長令嬢花村英子(作中ではわたしの一人称)。
名前は英国かぶれの父親が、そのままつけてしまったのです。
父親は時局を鑑み、英子のための専用車を設え、新たな運転手を雇いいれました。
その運転手は「別宮(べっく)みつこ」という名の、なんとうら若き女性でありませんか!
女性ドラバーなぞ皆無に近い時代なのです。
英子はそのとき読んでいた小説・サッカレー「虚栄の市」のヒロインの名から、「ベッキー」さんと密かに愛称をつけました。
そして…「ベッキー」さんはとても素敵で頼もしい、とても優秀な女性だったのです。
「わたし」とお抱え女性運転手の「ベッキー」さんが、三つの季節の三つ事件に挑みます。
読んでいくうちに、必ずベッキーさんに会いたくなること請け合いです。
なんだか宝塚歌劇を観劇しているような気分になってきます。
表題となっている「街の灯」は、チャップリンの不朽の名作がモチーフになっています。
避暑のために軽井沢に滞在する花村一家。
英子は同級生から自作映画の映写会に誘われる。
同級生の婚約者が撮ったという映画だった。
その映写会が終わったとき、家庭教師の女性が息絶えているのが発見される…。
北村薫作品にしては珍しく人が死にます。 

著者の北村薫氏と言えば、女性を描くことに秀でた作家ですね。
「わたし」と落語家の「円紫師匠」のシリーズ、なにげない日常の謎を解き明かす本格推理小説は有名です。
『空飛ぶ馬』『夜の蝉』『秋の花』『六の宮の姫君』『朝霧』
主人公の女子大生「わたし」が卒業するまでを、爽やかに描いています。
またお嬢様探偵では、先に覆面作家シリーズがありますが、こちらはユーモア小説度が高いです。
『覆面作家は二人いる』『覆面作家の愛の歌』『覆面作家の夢の家』
以上いずれもまだお読みでない方には、お勧めする次第でありまする。
「北村亭」北村薫公式ファンサイトhttp://www.kitamura-tei.com/


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