標記の小論文を掲載する山口県地方史学会『山口県地方史研究』第116号(2016年10月)が完成して、自宅にも届きました。
江戸時代のいわゆる「鎖国」下異国船対応をめぐる幕藩関係については、2000年代に入って以降、中央の幕閣と地方の藩庁とのあいだに存在するネットワークが注目され、議論が深められてきました。具体的には、江戸・大坂などの留守居や長崎の警備・聞役がキーワードになっていたといえましょう。
こうした研究動向に対し、実際異国船に対応した地域社会に途中藩庁を経由しない廻状ルートが存在することに着目し、幕閣―藩庁の二者関係に“地域社会の現場”を加えた計三者間の関係の視点で、ネットワーク像を見なおすべきだというのが私の立場です。
本稿は、萩藩(長州藩)領の伊崎(現山口県下関市)に立地した「赤間関在番所」が以上に述べた研究で恰好の素材だとして、その関連史料に出てくる用語の注意点を解説したものです。会誌でわずか4頁分の分量にすぎませんけど、とにかく「赤間関在番所」をめぐり学界に提起しておきたかったことはできました。