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より良き明日の為に

人類の英知と勇気を結集して世界連邦実現へ一日も早く

ドライな国のお客さん

2008-05-03 21:05:09 | ジェットの丸窓から

 これも先輩講師から聞いた話で1978年頃の梅雨時のことです。 教育センターに中近東諸国からVTRの技術研修に来ていた技術者が数人いました。 その頃のVTRには録画の後、音声だけを別のものに入れ替える“アフレコ”という機能がありました。 研修生はアフレコの実習のために耳にイヤホンを差し込んで新しい音声を確認していました。 無事に終わって全員イヤホンを外した後のことです。 サウジのAさんが何やら叫び声を発しました。 顔色も変り冷汗も流れて非常に狼狽しています。 やっとのことでわけを聞いてみると、耳に違和感を感じているのでした。 イヤホンを差し込んだ方の耳が聞こえず、「耳が壊れた」と叫んでいます。

 とりあえずAさんを連れて診療所に行き、他の人は研修を続けました。 診療所の医師はAさんの耳をペンライトで覗くとニヤリと笑って言いました。 ものすごい量の耳垢がペースト状になって耳穴を完全に塞いでいるというのです。 Aさんの住むリヤドは砂漠の中の街で非常に乾燥しています。 Aさんは生まれてこのかた耳の掃除などしたことがないそうです。 耳垢は多量についていたのですが、音の通る道は長い間細々と保たれていたのでしょう。 梅雨のさなかの日本に来て、耳垢は適当に湿り気を帯びました。 そこに持ってきてイヤホンを耳に差し込んだのですから、ペースト状になった耳垢が変形して完全に耳穴を塞いでしまったのでした。 

 美人の看護師に耳を掃除してもらったAさんはこう言いました。 「イヤホンも耳の掃除も生まれて初めて。 耳の掃除は最初は怖いけどあとは気持ちいいね。」


白夜の国のお客さん

2008-05-03 18:28:49 | ジェットの丸窓から

 先輩講師から聞いた話ですから1980年頃の夏のお話です。 教育センターにVTRの技術を学びにきたスカンジナビア3国からの数人の技術者がいました。 5時に初日の研修を終えた彼らはそこから5キロ程離れた海岸に向かったのです。 朝のオリエンテーションで講師が近場の観光地として地図を渡し、交通手段も教えていたのでした。 ただし講師は休日に訪れる場所として教えたつもりであり、まさか5時過ぎから出かけるとは思ってもいませんでした。 彼らは郊外電車に乗って海岸の駅に着きました。 そこから渚までは歩いてすぐです。 寄せ来る波の背が夕日に赤く染まり、はるか沖合の白い船も夕日に映えてゆっくりと動いて行くさまを眺めては、しばしエキゾチックな気分に浸っていたのだそうです。

 しかしそれも束の間だんだんにあたりが暗くなり、あれよあれよという間もなく夜になってしまいました。 これは彼らにとって全くの予想外でした。 だってまだ7時になったばかり、彼らの国ならまだ夕方に差し掛かった程度で、10時くらいまでは明るいはずでした。 周りでは店じまいも始まり、あわてた彼らは駅にとって返しましたが、すでに終電は出た後で、終バスも同様でした。 しばし途方に暮れた彼らでしたが、やがて駅員さんらの助けを借りて公衆電話から担当講師の自宅へ電話を掛けることになんとか成功しました。 もしもの時の電話番号は彼らに教えられていたのです。 自宅で夕食の最中に電話を受けた講師が自家用車で駆けつけ、彼らを無事宿舎に送り届けたのは9時近かったそうです。