皆さんはフェイルセイフという言葉を聞いたことはありますか。英語の綴りはfail safeです。機械の故障や人間の間違い(fail)は避けられませんが、その場合でも極力安全(safe)が保てるように設計すると言う意味です。例えば踏切の遮断機は、棹が上がっている状態で力が掛かっています。停電などで力が無くなると、棹が降りて人の侵入を止めるのです。また車ではシートベルトを締めるまで発進しない機能があり、人のうっかりミスを防いでいます。
ところで表題に掲げた私の造語「フェイル政府」は、「政府つまり政権を利するように官僚が間違える」と言う意味です。最近の事例では国土交通省の建設受注統計ミスがそれです。それまでは月の締め切りに間に合わない分をゼロ計上していましたが、2013年から推定値に書き換えたと言うのです。そして翌月の確定値もそのまま計上したので、これが二重計上になりました。2013年と言えばアベノミクスが始まった年です。アベノミクスは大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の3本の矢で構成されますが、この統計の水増しは3本目の成長戦略の成果となり、政権を利するものでした。
次はコロナワクチンの効果に関する統計ミスです。厚労省はコロナワクチン未接種者と2回接種者の感染率比較を公表していました。しかし接種者でも接種日付が不明の人は未接種者に分類していたのです。この為、未接種者の感染率が高くなっていました。海外各国の同じ統計では逆で、接種者の感染率が若干高い事に気付いた専門家が指摘したのです。この指摘に基づいて厚労省が統計を見直したところ、海外と同様の傾向となりました。これは今年4月のことです。未接種者の感染率が低い理由として、未接種者がマスクなどでより警戒していること、ワクチンは接種を重ねる程免疫力を弱める事などが挙げられています。政権は当時3回目接種率を上げようとしていました。そこで間違った統計データが好都合だったのです。
これらが政権からの要請だったのか、官僚による忖度だったのか、はたまた全くの偶然だったのかは不明です。しかし携わった官僚の中には「間違いに気づいたが、言い出せなかった」と言う人もいます。そのような空気だったのでしょう。今年1月にこの件で国土交通省の事務次官をはじめとする10人の官僚が減給、訓告、戒告の処分を受けています。しかし2018年に発覚した厚労省の「毎月勤労統計」の不適切手法問題に際して実施された「基幹統計」の一斉点検でも本件は見逃されました。減給、訓告、戒告ではとても足りない故意の犯罪と言うべきものです。
統計は地方自治体から国に至るまでの各段階で作成し、現状をつぶさに知り、政策を決め、有権者の投票行動にも資する大事な情報です。私の住む小さな地方自治体でさえ、統計教室を設けて子供たちにその大切さを教えている程です。霞が関の優秀な官僚たちが、その手法を間違える筈は無いのです。国交省の件は2019年秋に会計検査院の指摘で発覚しました。以後私はコロナ感染者数を含め、国や自治体が出す全ての数値を信用できないでいます。国家の体を成さず、まことに情けない限りです。
1週間後には参院選があります。国民を欺いて迄自陣営に好都合な数値を出す自公政権ではなく、ゆ党の維新・国民民主でもなく、野党の立憲・共産・社民・れいわの勢力を伸ばそうではありませんか。
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