SFマガジンで紹介されていた映画。これはすごく面白かった。なんといっても、ビールとSFである。俺のためにあるような映画。
小さな田舎町の悪ガキ5人組が高校卒業の夜に挑戦したゴールデンマイル。町中のバー、12軒を1軒で1杯ずつ巡り、最初のバー「ファースト・ポスト」から、最後のバー「ワールズ・エンド」へ至る至高の旅路。しかし、酔っ払い過ぎて、暴れすぎて、あえなく失敗。
数十年後、中年になった5人は故郷へ戻り、再びゴールデンマイルへチャレンジする。それぞれにオトナになった物語を抱えて。
途中までは、あれ、騙されたかと思うような展開だったが、変わってしまった故郷の人々とチェーン店化されたバーへの失望とともにトイレに向かったとき、5人をぶっ飛びな展開が待ち受ける。
まぁ、映画のトレーラーとか見ればすぐにわかるのでネタバレしちゃっているのだけれど、これは本格的に騙されたかと思い始めていたので、そのシーンでの高揚感はすごかった。やっぱり、そういう映画だったじゃないか(笑)
でもこれ、何も知らないで見たら本当にひっくり返っちゃうんじゃないか。いや、逆に、何も知らないで見るべきだった。でも、何も知らせないと見に行くこともないから、どこまで宣伝に乗せるかは難しいところ。
とにかく、いろんなところがツボにはまった。“侵略”の真相を知っている唯一の人間のキャラ付けも、主人公の名前がキングであることを使った「人間のキング」という呼びかけも、元いじめられっ子が放つ拳も、デブキャラが放つきれいなエルボードロップも、すべてが素晴らしい。
田舎町の閉塞性、閉鎖性、そして、そこから抜け出した「自由になるんだ!」という気持ちのまま大人になり切れない男の悲哀が、「俺には飲むことしかできないんだ!」という叫びとともに、地球がどうなろうとゴールデンマイルを文字通り走り続ける格好よさに変わったとき、観客はゲラゲラ笑い続ける。
物語ちょしては地球の危機というシリアスなネタでありながら、基本がコメディなので、劇場でもあちらこちらで何度も笑い声が。ビールの味を語る繰り返しネタや、「使用禁止」の看板などの小道具の使い方がことごとくツボ。
“侵略者”の造形がソフビ人形的な関節から青塗料がダラダラ流したり、明らかに口にLED電球含んだりといったチープさなのだが、それがまったく面白さの障害にはなっていない。やっぱり、何億ドルも金をかけなくても、奇想天外なアイディアとよく練られた脚本があれば、面白いものは面白い。
あきらかにそれ人形だよねという突込みを逆手に取った展開(その脚を離せ!)などもあり、隅から隅まで、やたらと楽しい。本当にツボが分かっている人が練りに練った脚本だと思う。
キャッチフレーズは「5人の酔っ払いが世界を救う」だけれども、これって救ったんだっけという捻くれた結末もいい。なんだそりゃ!
蛇足:
渋谷だと、夜の回でビールを片手にという人が多かったとか。立川での上映は昼間に一回だけという謎設定だったよ。レンタルで出たら、家でビール(いや、エールか!)片手に見るか。それも、12本用意しよう(笑)