神なる冬

カミナルフユはマヤの遺跡
コンサドーレサポーターなSFファンのブログ(謎)

第53回日本SF大会 なつこん 第2日目 「SFのナツはカネが連れてくる!」

2014-07-23 23:43:32 | SF

二日目のひとコマ目は「翻訳家パネル」。星雲賞海外部門受賞作の訳者を招いて、星雲賞の取り方を聞くという趣向。古沢さんがいろいろ分析した発表資料を持ってきてたけど、最近活躍しているひとたちはダーコーヴァ年代記を毎月刊行するために集められた若手集団だったとか、歴史的な裏話がおもしろかった。

飛び入りで日本語→英語翻訳のデイナ・ルイスさんも冒頭から登壇しており、日英翻訳のむずかしさと現状を語る。彼女は最近翻訳をやっていないとのことで昔話が多かったが、わざと日本語の語順を崩さずに英訳してみたりとか、いろいろな珍作が出来上がっていた模様。最近ではコミック英訳の方が盛んなので、だいぶ様変わりしている感じ。

ピーター・ワッツが英訳はいつだと聞かれるという話から、円城塔が『Self-Reference Engin』を英訳したものを、さらに和訳したらどうなるか(実際に企画はあったとのこと)とか。さらに、酉島伝法(客席にいた!)の『皆勤の徒』の英訳は無謀かと思ったら、返って読みやすいので、あれをさらに日本語訳してはどうかとか。

星雲賞については、獲り方よりも、どうやって投票数を増やすか、どうやって賞の“品質”を担保するかという話がメインに。やっぱり、長編部門は文庫が強いし、短編部門は参考作を全部読んだ人がほとんどいないんじゃないかと。そこからどうやって読ませるか、やっぱり編集だよねということで、小浜さん@東京創元社と塩澤@早川書房に期待が。いやまぁ、塩澤さんの仕掛けは毎回すごいけど、結局新☆ハヤカワSFシリーズも、Jコレも星雲賞取れないわけで、それもどうかという気はするんだけれど。ワールドコン方式で候補作(星雲賞だと参考作)を全部事前に電子化して読めるようにするというのは、ぜひやって欲しいものだ。

 

さて次は、同じ部屋で「SFなんでも箱番外編」。堺三保さんは不在でも、池澤春菜さんが司会に登場。

SFアイドルとして西田藍にライバル心を燃やす池澤春菜は、SF司会者分野での第一人者を目指しているという(笑)

で、池澤嬢の無邪気な質問から、文学賞の裏話へ。

瀬名さんのホラー大賞受賞の裏話とか、星新一賞の話とか。というのは良いにしても、話はさらにディープな方向へ。毎回受賞しないんだけど毎回投稿してくる、こじらせちゃった人の話とか。

さらに賞の価値の話題から、星雲賞受賞の帯を作ると動く(売れる)数とか。星雲賞にもそれなりの力はあるらしい。1000部いかないくらいだそうだけれども。SF大会で星雲賞に投票するような人にとっては、星雲賞の実情を知っているだけにそこまでの価値は無いように思えるけれど、SFから遠い人にほどアピールする賞らしい。

小浜さんの「夏は金が運んでくる」という名言も印象的。あれ、でもこれどういう文脈だったっけ。小松左京の『日本沈没』をSFファン以外もみんな読んでいた、とかからか。ハヤカワSFコンテストから4人もデビューさせた戦略をどう思うかと聞かれ、売れるんならいいんじゃないという話からだったか。

一方、創元SF新人賞の方は『原色の想像力3』が出なくって、そんなことだから『夏色の想像力』が出ちゃってとか。

とにかく、本が売れないとぼやく瀬名さんには、握手会の勧めが。この次のゲンロンカフェには小さなテントが張られ、その中にはその中には小浜さんと塩澤さんが入り、行列の長い方がどうとかこうとか。

『ジェノサイド』(高野和明 角川書店)みたいにベストセラーになっても、SFに何も返さない(読者がSFファンにならない)モノだと、SF界にとっては意味もないという発言もあったな。そいえば同じような作風でも、藤井太洋はもうちょっとSF界寄りなんだけれど、なぜなんだろう。

なんだか取り留めのない話になってしまったけれど、取り留めのない話をしていたんだからしょうがない(笑)

 

昼食はわずかな時間をぬって、昨日と同じ屋台村で。ただし、まだ酒が残っている感じだったのでビールは無し。今回のタイムテーブルは実質的に休み時間がないので、スケジューリングが大変。

 

多少遅れながらも、「つくばSF特別シンポジウム「サイボーグ・身体・感性の未来」」へ。

科学とSFの橋渡しをすべく、瀬名さんがSF大会に来ると恒例のようにやっている、科学者にSFを語らせる企画。初日には「君たち、参加費¥25000も払って、こんなユルい企画でいいのか!」と呆れていた瀬名さん。その瀬名さんがちゃんと準備してきた、今大会唯一(?)のかっちりとした企画だ。

まずは瀬名さんが企画の趣旨と、パネル参加者のプロフィールを説明。そこから、それぞれが自分の研究を、好きなSF作品と絡めて語る感じ。

やっぱり一番興味深かったのは、公立はこだて未来大学教授の松原仁さんが語る「きまぐれ(略)作家ですのよ」。まだまだ試行錯誤中のようで、やっと課題が明らかになってきた感じか。「できないと言うな」が口癖の、はやぶさの川口博士から「これはできないと思います」と言われたというエピソードに大爆笑。

東北大学教授の山家智之さんからは、本質的な意味での人間機械論。人工心臓には脈動はいらなかったというエピソードは、人間がどこまで機械化できるかという命題に重要な視点を与えてくれる。

豊橋技術科学大学学長の榊佳之さんからはヒトゲノム計画について。ゲノムもちょっとづつ変わっていっているとか、遺伝子がどこまで脳に影響を与えるかとか。人間機械論がHWの話であるならば、これはSWの話か。

筑波大学名誉教授の星野力さんは欠席で、発表資料を瀬名さんが説明。アラン・チューリングとチューリングマシンの話。ニール・スティーヴンスンの『クリプトノミコン』に細かく突っ込みを入れて喧嘩を売っていたというエピソードが笑える。

最後の発表が本人ではないので、いまひとつ論旨の掴めない内容だったこともあり、これを受けてのパネル討論はなんとなく盛り上がらない感じ。で、何の話だっけ……という雰囲気。本当はパネル同志の相互の突込み合いが期待されたのだけれど。

しかし、その後の会場からの質問では面白いことに。

一つ目の質問はクオリアに関して。もじゃもじゃしたM教授とは親しい人が多いようで、ちょっと微妙な空気が走ったものの、あれは錯覚じゃないかとか、赤い色を見た被験者たちの脳波はおおむね同じなので大きな差は無いんじゃないかとか、意外に議論は盛り上がる。結局、あれは哲学的問題で、科学的問題でも課題でも無いというのがその場の結論。

二つ目はシンギュラリティについて。そもそもコンピューターが人間を越えるとはどういうことを指しているのか。現状ではムーアの法則をもとに、処理密度(?)が人間の脳をHW的に超える地点を指しているにすぎず、そこで本当に何が起こるかはわからない。何も起こらないかもしれない。しかし、何かが起こった時には、人間には感知できない何か、あるいは感知できた時にはすべてが終わってしまった何かだろうということ。

こういう形で、科学者の方々がSF的なネタにダイレクトに反応してくれるのはおもしろいし、科学がSFに対して影響力を持つように、SFが科学に影響力を持ってくれるように期待してくれることも伝わってきたので、科学者とSFファンの交流としてはよかったんじゃないか。

ただ、やっぱり、SFファンだけじゃなくって、SF作家もこうやって科学者との交流をもっと持ってもいいと思う。宇宙開発、ロケット系は宇宙作家クラブのおかげで随分と交流も増えたようだけれど、人工知能や生物学の方もSFにおける重要なジャンルなのだから、生命作家クラブでも作ってみるのはどうか。

結果的に瀬名さんが執筆中の作品(生理科学系?)での行き詰まりを打破するために企画したもののようになってしまったようだが、この結果、どのような作品が生まれるのかは、大きく期待して待ちます。

 

最後は閉会式にて、センス・オブ・ジェンダー賞とか、もろもろ。

暗黒星雲賞はゲスト部門=瀬名秀明(ゴシップネタとぶっ壊れっぷりに)、企画部門=エロ漫画とSF(地下企画!)、コスチューム部門=ネギマン(実はいいひと)、自由部門=タイムテーブル(参加者にテレポーテーションを強いる!)。

瀬名さんは、本が売れないとぼやく(塩澤さんはいろいろ仕掛けているのに、僕の担当の○○さんは!)し、nineの佐武宇綺の話ばかりしてるし、挙句の果てにパーティーで歌うし、完全に吹っ切れた感じで壊れていました。Webの記事には母親からも「悲しくなるからやめて」とクレームが入ったとのことで、黒瀬名はこれで打ち止めかも。

タイムテーブルは本当にヤバかったんだけど、企画は次の企画の10分前に終了という規則があったのなら休み時間を最初から書いておけばいいのに。

そして最後に、GoH、佐藤竜雄、得意の筆文字で、これ本当に書いていいのと何度もスタッフに確認したという「さぁ、現実の時間だぁ!」でお別れ。

 

一泊二日、久しぶりにSF漬けになってモチベーションが戻ってきたので、これからもSFを読みまくります。見まくります。まずは、日本SF作家の初ハリウッド映画化、『All You Need Is Kill』からだな。

あと、ちゃんと感想も書きます。……できるだけ。

 

 


第53回日本SF大会 なつこん 第1日目 「さぁ、SFの時間だぁ!」

2014-07-23 23:25:14 | SF

ここしばらく、平日はいわゆる社畜、休日はいわゆるリア充的な生活をしていたので、ブログはすっかりご無沙汰だったのですが、去年から申し込んでいたSF大会にはなんとしても参加しなければということで、つくばまで行ってきました。

一泊二日の日帰り旅行というより、現実逃避、もしくは、心の故郷への回帰。

 

受付開始が11:00とのことだったので、10:30頃に現地到着。つくば駅から会場の国際会議場までの道も、遠くにロケットのオブジェが見えたり、ロボット試験区域とやらの看板があったりで、さすがの未来都市。

会場に行くと、すでに受け付けは開始されていた。事前配布物は無しで、受付で名前を言え、とだけ連絡されていたので、ちょっと混乱を予想していたのだけれど、意外にスムーズ。ボランティアの方々のおかげか。

スタッフの人たちは水色のエプロン姿で、いつものタケダ警備隊長もエプロン姿。これがなんとなく滑稽でちょっとおかしい。

受け付けは済んでも、企画は12時からの開会式からなので、圧倒的に暇。しかし、会場外の遊歩道というか公園には屋台村があり、食べ物や飲み物を販売中。これはSF大会のためのものじゃないのかもしれないけれど、いつも食糧難になりやすいSF大会には有り難い。

しかし、キリンとアサヒはあるが、サッポロビールが売っていない! ということで、海外ビールを売っていたケバブ屋でスパイシーなチキンケバブとハイネケンを仕入れて木陰で早めの昼食。午前中から晴れた空の下で飲むビールはやはりうまいね。

 

開会式では、司会の人が急遽前日に呼ばれた声優の遠近孝一だとか、GoHのひとり、佐藤竜雄がぎりぎり到着で状況がよくわかっていないとか、悪の組織にさらわれた瀬名秀明を地元のヒーロー、イバライガーが救出するとか、いろいろと大事件が勃発。

そして、瀬名さんの音頭により「さぁ、SFの時間だぁ!」を三唱する開会宣言により、SF大会は開幕。

 

ひとコマ目は別の企画を見に行くことを考えていたのだけれど、お目当てのひとつ、なつこん企画アンソロジー『夏色の想像力』がこの企画の後でしか販売しないとのことで、何か仕掛けがあるのかと期待して「なつこんアンソロジー「夏色の想像力」を語る」へ。

しかし、どういうわけだか登壇者も、なんで先に売らないのか、みんなが手元に持ってパラパラめくりながらの方が面白いし、終了後にサイン会だってできるのに、とのブーイング。企画内容の打ち合わせも全くなかったらしい。責任者出てこい。

こんな同人誌にタダで原稿を書くとは何事かと大森望さんが瀬名さんを責める。瀬名さんは瀬名さんで本が売れないとぼやく。そして、最近ファンになったアイドルグループ、9nineの佐武宇綺についてハイテンションで語り始め、結論としては瀬名秀明は握手会でファンを掴めとか。この話は翌日の『SFなんでも箱』まで続く。

企画の流れとしては、大森さんが瀬名さんや、有象無象(失礼!)の新人作家がいかにして騙されてタダ原稿を書かされたかを聞き、他の大御所はいかにして(多くは瀬名さんがOKしたから)騙されたかを語るというもの。途中で東京創元社の小浜さんも登場し、どうやってこの「草原SF文庫」が完成したかの裏話が数々暴露される。

肝心の『夏色の想像力』の内容は本家創元の年間傑作選に選ばれるかもしれないレベルの傑作が目白押しとのこと。ただ、あまりに売れてしまうと読者がかぶって怒られるとのことなので、みなさん、『夏色の想像力』は買わないでください(笑)

期待したより話は盛り上がり、次の企画の東さんが来るまで延長でそのままふたコマ目の「SFの想像力の現在と未来」へ突入。

 

こちらは大森望さんを司会に、東浩紀さんが「STAP細胞騒ぎ」について、瀬名秀明さんが「星新一賞騒ぎ」について語るという趣向。

東さんがしきりに小保方女史をおかしいと思わない方がおかしいと言い続け、瀬名さんが小保方論文の出来について擁護するという方向だったが、いまいち議論がかみ合わず。結局、東さんが「なぜおかしいと思ったのか」が直感的なものなので、そこを共有できないと始まらないというか。

STAP細胞の件は、似非科学に騙されてしまうような人の方が怪しいと思うが、論文をちゃんと読んだ人ほど信用するという逆説的な関係が興味深いと言えば興味深い。

瀬名さんの「星新一賞」話では、瀬名さんが東さんに振ってもそっけなく答えるだけで、あまり興味は無かった様子。でも、この二つの議題を並べたということは、二つをサイエンス・コミュニケーションの話として連結したかったのではないかと思う。

理系の文学というのはあるのかというと、それはいわゆる(文系の)文学とは違う評価尺度で見てみようということ。文章力よりもアイディアと理論(理屈)が優先されると解釈した。で、こういう作品の読者が増えると、似非科学に騙されないようになるかというと、逆に小保方騒ぎのようなことも引き起こすということで、なかなか難しい。

瀬名さんの話の中では、星新一賞募集に合わせて始まった人工知能プロジェクトの「気まぐれ(略)作家ですのよ」の状況紹介が興味深かった。この話は翌日の「つくばSF特別シンポジウム」でもうちょっと突っ込んだ話があった。

 

さて、続いては星雲賞授与式。

自由部門:「『NOVA』全10巻刊行」 大森望責任編集
長編でも短編でもないので、自由部門でのエントリー。イプシロンロケットや“艦これ”を抑えての堂々の受賞。大森望さんのスピーチでは禁断のSF作家クラブネタが飛び出し、場内騒然。まぁ、これからも鉄板ネタとして使っていくつもりなのでしょう。

ノンフィクション部門:『宇宙へ行きたくて液体燃料ロケットをDIYしてみた』 あさりよしとお
あさりよしとおさんは、これでこの分野をSFから葬り去ったと得意気。確かに、この分野はずいぶんまえからSF(空想科学小説)ではなく、空想のつかない科学小説だった気がする。そこから先に、あたりまえの出来事になるまでは、あと少し。

アート部門:加藤直之
ライブペインティングの記録用カメラを頭に着けたまま登壇。あ、他の企画で見かけたこの人、加藤さんだったんだ。ヘンな仮装の人だと思っていた(笑) この記録が100年後にも残って、未来の人が、昔の奴らはこんなことをやっていたんだと振り返ってくれることを期待するとか、まさに生きるSF。

コミック部門:『成恵の世界』 丸川トモヒロ
相変わらずコミックはほとんど読んでいないので、おもしろいのかおもしろくないのか、妥当なのかそうでないのかがわかりません。あと。コミックでは星雲賞の価値ってどの程度なんでしょうか。なお、小説での星雲賞受賞の影響に関しては、翌日の「翻訳家パネル」にて発言あり。

メディア部門:『パシフィック・リム』 ギレルモ・デル・トロ監督
ギレルモ・デル・トロ監督に代わっての代理受賞はワーナーの人。『ゼロ・グラビティ』ばかり賞を取ってしまって、無冠の『パシ・リム』が初めて受賞したのが星雲賞。デル・トロ監督もいちばんうれしい賞ではないかと。確かに、向こうでいえば、ヒューゴー賞だからな。そりゃうれしいだろう。

海外短編部門:「紙の動物園」 ケン・リュウ(古沢嘉通 訳)
個人的には押したい作品ではないのだけれど、まぁ、順当。ケン・リュウのスピーチは録音かと思ったら、iOSの人工音声合成だったというSF的世界。古沢さんはテッド・チャンに続き、ケン・リュウの作品が星雲賞受賞とのことで、中国系の作家のSFを訳すと星雲賞がもらえるんじゃないかと。これからも興味深い中国系作家を発掘してください。

海外長編部門:『ブラインドサイト』 ピーター・ワッツ(嶋田洋一 訳)
今回のサプライズ。イーガン、ミエヴィル、プリースト、ウィリスという並み居る強敵を抑えての受賞。これだけわかりずらい作品が受賞するとは、日本のSF読者のレベルを舐めていたとは訳者の嶋田さんの弁。ピーター・ワッツ本人もビデオメッセージでいわく、「フランスやスペインでも賞を受賞しているのに、英語圏では評価されず、いつ英訳されるのかと聞かれるくらい。わかりやすく翻訳してくれている訳者の方に感謝を」とのこと。この話は翌日の翻訳家パネルの伏線。個人的には、日本のSF読者のレベルの高さもさることながら、文庫が強いというだけに見える。そして、新☆ハヤカワ・SF・シリーズは星雲賞を取れないという伝説が……。

日本短編部門:「星を創る者たち」 谷甲州
これもある種のサプライズ。中には、谷さんが復活していることを知らなかった人もいるんじゃないか。本人は残念ながら欠席。編集者の方の代読だったが、飯場暮らしでのことや、モデルかもしれない上司のことなど、社会人経験の長い谷さんならではの作品であり、受賞スピーチだった。

日本長編部門:『コロロギ岳から木星トロヤへ』 小川一水
これも個人的にはサプライズ。やっぱり文庫には勝てないのか。小川さんはなんと天冥シリーズ最新刊のために缶詰中。こちらも編集さん(塩澤さん)の代読。9月の刊行も遅れるかもとのこと。その重たすぎる天冥の、著者、読者双方にとって気分転換として制作された小説が受賞とは皮肉なもの。しかし、『時砂の王』なども含めた時間テーマでやり残したことがあると、時間テーマの新作にも意欲的な面を見せてくれたので、こちらにも期待したい。

星雲賞の副賞はガマの油。SF的に再構成され、スターウォーズをはじめとするいろいろなネタを混ぜ込んだ売り口上が披露され、開場の笑いを誘っていた。しかし、海外部門受賞者の代理人は、これをなんと説明すべきか困り顔。

最後は受賞者集合写真でおしまい。

 

初日の夕方には公式パーティーが開催されたのだが、これは参加費がお高いので見送り。案の定、例年通りの食糧難だったのこと。SFファンは食い過ぎだ。

実は、このパーティはエントランスホールを仕切って開催されたので、会場にそのまま残っていれば、瀬名さんが歌う『学園戦記ムリョウ』のテーマ曲も聞けたんじゃないか。

自分は合宿所のグランドホテルへ向かう前に会場近くのカーサで腹ごしらえ。大会の名札付けたままの人とかがいっぱい来ていて、ふたりしかいないウェイトレスさんが大変そうでした。

その後、雨の中、送迎バスでグランドホテルへ移動。思ったよりも街外れまで連れて行かれ、UFOのように山の上に見える明かりがそれ。

7Fの展望露天風呂は湯船に屋根が無く、天然シャワー降り放題で早々に退散。大浴場のローマ風呂は期待外れで古いし狭い。『テルマエロマエ』ネタで参加者が盛り上がるも、ちょっとこれは期待外れか。

自分は夕食を済ませてきたので問題なかったが、ホテルのレストランや居酒屋を目当てに来た人はそれらがまともに営業しておらず、大変なことに。結局、ラーメンぐらいはつくってもらえた模様。

 

21:00過ぎに合宿企画の大広間に行ってみると、思ったよりも狭い部屋で早くも酒盛りが開始中。公式パーティーからやってきたほろ酔い勢がそのまま延長戦な感じ。かなり酔いのまわっている感じのGoH瀬名&佐藤コンビが漫才のように二人で立って乾杯したかと思うと、そのまま退場。

その後、茨城名産のスタージョン(ちょうざめ)の缶詰(キャビアじゃないぞ、親の肉の方だぞ)を試食して、うまくもなく、まずくもなく、リアクションに困ったり、美少女ロボット(本物)のマリカちゃんを愛でたりして過ごす。

あと、名前覚えてないけど、売り切れ後にもビール持ってきてくれたお兄ちゃん、ありがとう。相変わらずサッポロビールは無かったけどな。

で、いつの間にか東浩紀の横で飲むことに。酔っぱらっていても、できる最上限で気を使ったつもりですが、何か粗相をしていたら申し訳ございません。

とりあえず、東さんがガチでベタなSFファンであるということに同意いたします。伊藤計劃とかについて話した限りでは、SF観は割と似ている感じ。だから、『クォンタム・ファミリーズ』とか『クリュセの魚』は、あんまり深読みせずにゲラゲラ笑いながら読むのが正しいのだと思います。っていうか、彼のSF小説に関しては取り巻きやメディアが変な解釈をしすぎなんじゃないのかな。

5時まで飲むといいつつ、3時前に退散。そして、同室者がうるさくて6時に起こされ、7時までうだうだ。

寝不足で二日酔いのままなんとか朝ごはんを食べて、第二陣の送迎バスで会場へ帰還。道中、下痢っぽくてヤバかったけど、どうにかこうにか間に合った(笑)