『どろんころんど』 北野勇作 (福音館書店)
SFマガジンなどに掲載される〈カメリ・シリーズ〉でおなじみのどろんこな世界。泥の中で目覚めた少女型セルロイドのアリスと、子守レプリカメ万年1号。万年1号を売り込むことが仕事のアリスは売り込む相手のヒトを求めて、ヒトデナシの係長とともに冒険に出かける。
いなくなってしまったヒトの代わりに、ヒトの真似をし続けるヒトデナシたちのヒト真似の仕方が、まるで見当はずれでいながら、ある意味(笑点的な)本質を突いるところが面白い。
カメリとは違って、どろんこ世界の異邦人であるアリスがいるために、読者はアリスと一緒に不思議がりながら、面白がりながら、どろんこ世界を探検できるという親切設設計。
なおかつ、謎だったどろんこ世界の成り立ちまで明かされるというカメリファン(いるのかそんなのw)必読の小説だ。
装丁やイラストと文章の配置も凝ったつくりにしてあり、絵本的なデザインになっている。フォントも合成フォントで、平仮名や漢字の文字ごとにフォントが違うという凝りよう。しかし、“どろんこ”の「ど」がどう見ても「ど」に読めない字体で、最後の最後まで平仮名の「ど」ではなく、「ど」を表す記号としか認識できなかった。ちょっと凝りすぎ。あと、小さい「ゅ」も好みじゃなくってヘンな字体だなと思ったり。
実はスルーしようと思っていたのだけれど、評判が良すぎて星雲賞を取ってしまいそうなので読んでみた。結果的に、予想通り、自分には合わなかったなぁという感想。面白いのは面白いんだけど、これまでの北野作品の中で特筆して凄いとは思えなかった。
それで、いろいろwebの感想なんかを読んでみたのだけれど、北野勇作&鈴木志保『どろんころんど』(21世紀、SF評論)はなかなか興味深かった。
なぜかというと、まったく逆な感想だから。
“灰色の世界で道に迷う大人たちも共感を呼ぶが、世界のありようなどお構いなしに突き進む少女の元気良さは読む者に勇気を与えてくれる。”
自分が感じたのは、世界がおかしくなっても義務から逃れられない惰性的な束縛感と、そこからの解放であり、決められたことだけやってればよかった世界から自由な世界へ飛び出すときの不安と期待だ。
万年1号へアリスが最後に入力した文章は、決められたこと(アリスにとってのデモ=子どもたちにとっての勉強)だけをやっていればよかった学校の庇護を抜け、まさしく新入社員として新しい社会へ出ようとする少女が、自分自身を勇気づけるための1行だったのだと。
それは結局、この物語に語られたものではなく、泥だらけの社会に不安を抱いている自分自身を読み取ってしまったのかもしれないけれど。
まぁ、それはともかく、ベスト級ってわけじゃないけど、いつもの北野勇作で、そこは裏切らない面白さだった。ただ、自分的には、やっぱり、カメの話よりクラゲの話が好きかな。
SFマガジンなどに掲載される〈カメリ・シリーズ〉でおなじみのどろんこな世界。泥の中で目覚めた少女型セルロイドのアリスと、子守レプリカメ万年1号。万年1号を売り込むことが仕事のアリスは売り込む相手のヒトを求めて、ヒトデナシの係長とともに冒険に出かける。
いなくなってしまったヒトの代わりに、ヒトの真似をし続けるヒトデナシたちのヒト真似の仕方が、まるで見当はずれでいながら、ある意味(笑点的な)本質を突いるところが面白い。
カメリとは違って、どろんこ世界の異邦人であるアリスがいるために、読者はアリスと一緒に不思議がりながら、面白がりながら、どろんこ世界を探検できるという親切設設計。
なおかつ、謎だったどろんこ世界の成り立ちまで明かされるというカメリファン(いるのかそんなのw)必読の小説だ。
装丁やイラストと文章の配置も凝ったつくりにしてあり、絵本的なデザインになっている。フォントも合成フォントで、平仮名や漢字の文字ごとにフォントが違うという凝りよう。しかし、“どろんこ”の「ど」がどう見ても「ど」に読めない字体で、最後の最後まで平仮名の「ど」ではなく、「ど」を表す記号としか認識できなかった。ちょっと凝りすぎ。あと、小さい「ゅ」も好みじゃなくってヘンな字体だなと思ったり。
実はスルーしようと思っていたのだけれど、評判が良すぎて星雲賞を取ってしまいそうなので読んでみた。結果的に、予想通り、自分には合わなかったなぁという感想。面白いのは面白いんだけど、これまでの北野作品の中で特筆して凄いとは思えなかった。
それで、いろいろwebの感想なんかを読んでみたのだけれど、北野勇作&鈴木志保『どろんころんど』(21世紀、SF評論)はなかなか興味深かった。
なぜかというと、まったく逆な感想だから。
“灰色の世界で道に迷う大人たちも共感を呼ぶが、世界のありようなどお構いなしに突き進む少女の元気良さは読む者に勇気を与えてくれる。”
自分が感じたのは、世界がおかしくなっても義務から逃れられない惰性的な束縛感と、そこからの解放であり、決められたことだけやってればよかった世界から自由な世界へ飛び出すときの不安と期待だ。
万年1号へアリスが最後に入力した文章は、決められたこと(アリスにとってのデモ=子どもたちにとっての勉強)だけをやっていればよかった学校の庇護を抜け、まさしく新入社員として新しい社会へ出ようとする少女が、自分自身を勇気づけるための1行だったのだと。
それは結局、この物語に語られたものではなく、泥だらけの社会に不安を抱いている自分自身を読み取ってしまったのかもしれないけれど。
まぁ、それはともかく、ベスト級ってわけじゃないけど、いつもの北野勇作で、そこは裏切らない面白さだった。ただ、自分的には、やっぱり、カメの話よりクラゲの話が好きかな。
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