神なる冬

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[SF] 永遠なる天空の調

2011-05-04 23:30:23 | SF
『永遠なる天空の調』 キム・スタンリー・ロビンスン (創元SF文庫)


『ブルー・マーズ』はいつ出るんじゃいと思いながら、古本屋で購入。

数学と音楽の相性がいいのは衆知のことだが、この作品では物理と音楽が表裏一体と化し、大宇宙の秘密を解き明かすという壮大な時空テーマSF。

とはいうものの、実はさっぱりよくわからなかった(笑)

前半を電車に揺られながら読んだのが悪かったのか、そもそも何が起こっているのかを把握するまでに時間が掛かったり、各パートの主人公が誰だかわからなくなったりとか。

謎の中心人物は、天才オーケストラ・マスター、ヨハネス・ライト。そのオーケストラの創始者、ホリウェルキン。ヨハネスを失脚させようとしているエイカーン。エイカーンが隠れ蓑に選んだ宗教、グレイ派の指導者グルワン。

しかし、「親愛なる読者よ」と呼びかける語り手はいったい誰なのか。本来、語り手であると思われた音楽記者のデントは、明らかに傍観者に過ぎなかった。プロローグである「前奏曲」はヨハネスの一人称だが、最後の記述を読めば、この物語をジャンプへ送り出した存在ではあり得ない。

そもそも、ヨハネスは視覚に障害を持ち、インプラントされている。したがって、ヨハネスのパートはどこまで信じられるのかわからないという罠が隠されている。(最近こんなのばっかりだが……)

実際に、エイカーンはヨハネスを意のままに操ろうと、偽の情報を与えていた。しかし、その情報操作もグルワンが影で糸を引いていたという二重構造。ところが、このグルワンもそもそも存在するのかどうかわからない謎の人物になってしまっている。

彼らは誰に導かれ、誰のシナリオによって動かされていたのか。そして、その目的は何だったのか。究極の目的がこの物語をホワイトラインの先へ送り出すことなのであれば、「読者」である我々は、この物語の中でどのような役割を果たしたのか。物理法則が音楽であるならば、それを演奏することは宇宙を創造することなのか。ホワイトラインの先は、いったいどこに繋がっているのか。

結局、さっぱりわかりません。

物理法則と音楽法則、体験と論説、シナリオとメタシナリオ、相対性理論的確定性と量子論的不確定性とそれを越える決定論の存在可能性……時空を巡るSFネタがオーケストラのように奏でられる様は心地よい目眩を惹き起こし、ヨハネスをめぐるスリリングな陰謀にドキドキし、冥王星から水星にいたる太陽系横断旅行記に胸躍る。

確かに、個別のエピソードはおもしろいのだけれど、全体像のあまりのわからなさがとても残念。

再読は老後の楽しみにでも取っておこう。



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