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[SF] ドリーム・マシン

2011-11-14 23:48:23 | SF
『ドリーム・マシン』 クリストファー・プリースト (創元SF文庫)




これも名作を読もう活動の一環。買ったのは今年の神保町ブックフェスティバルの東京創元社ブース。どれでも200円だったので適当に(笑)

実は返ってくるまでダブったんじゃないかと心配してたけど、持ってなかった。


序盤はいったい何が起こっているのかわかりずらいのだが、ドリーム・マシンに入りこんだまま、帰らなくなったデイヴィッドの捜索と強制帰還が当初の目的。

で、このドリーム・マシンというのがなかなかに奇妙なもので、接続された被験者の無意識を重ね合わせ、未来を予測しようという、いわばアナログ仮想世界なのである。

その世界に入ってしまうと、まるで夢の中にいるように、ドリーム・マシンの中の世界が現実として捉えられ、現実世界のことはほとんど忘れてしまう。

被験者の無意識が世界に影響しているので、ちょっとした願望が叶いやすくなったり、被験者の深層心理が天候に影響したり、なかなか芸が細かい。

そしてまた、強烈な個性を持つ被験者の参加により、容易に世界が変容してしまうというところが物語の転回点となり、これがドリーム・マシン実験の崩壊へ繋がる。


後半には、ドリーム・マシン世界の中でドリーム・マシンへ入るという荒技が飛び出し、非SF者はこのあたりで混乱してくる様子。しかし、映画『インセプション』を見ていると、このあたりの構造は理解しやすいかも。

ドリーム・マシンの中でドリーム・マシンに入ると、元の世界に戻るのではなく、さらに深い夢に入っているのかもしれない。ゆえに、ジューリアはマシンの中からではなく、廊下の奥から出現したのだ。

それを突き詰めてゆけば、ラスト2節は別な階層の夢であるのではないかという疑問がわいてくる。すなわち、実はこの小説はハッピーエンドの恋愛小説と見せかけておいて、皮肉な結末の自己愛小説だという可能性が見えて来て、著者の人の悪さにちょっと身震いがする。



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