『ルナ・ゲートの彼方』 ロバート・A・ハインライン (創元SF文庫)
大森望氏推薦――「こんなのあり? 衝撃の結末に茫然自失。だまされたと思って読んでください」
今さらながら、書店でそんなポップを見たので買ってきた。
ハインラインの本はタイトルが変わったり、少年少女向け翻案版があったりで、読んだんだか読んでないんだかわからないのだけれど、そんなに衝撃的なラストな小説ってあったっけ?
で、読み終わったのだけれど、そんなに衝撃的じゃなかった。
転移ゲートの向こうへサバイバル課程の卒業試験を受けに行く学生たち。行先不明の惑星へ3分間隔で一人ずつ出発するというシーンのシチュエーションが、高見広春の『バトルロワイヤル』そっくりで笑ってしまう。ゲートの向こうで装備を奪うための待ち伏せとか、サバイバルしすぎ。
そして、このゲートが開かなくなって、少年少女のサバイバルが始まるのだが、これは完全に『十五少年漂流記』。そして、友情あり、ボーイ・ミーツ・ガールあり、権力闘争あり、コミュニティの崩壊と再生があり、ファーストコンタクト(未遂)までくっついて、波瀾万丈なサバイバル生活が続く。これが本当に目が離せず、読み始めたら止まらない。
このあたりはハインラインの面目躍如。大人向けだと強いアメリカ思想が鼻につくことが多いのだが、ジュブナイルとして少年の成長を描く物語にはこのぐらいでちょうどいい。ライバルは本当にイラつく奴だし、寓意として彼が象徴するものが本当にイラつくというのも理解できる。女の子も勇ましくて賢くてかわいくて魅力的だ。
そして遂にゲートが開き、少年たちが文明社会に戻るとき、鬱になるような衝撃の結末ってことなのだが……。個人的にはさもありなんというか、予想の範囲内。
この小説のモチーフは、あの駄作映画と言われる『十五少女漂流記』と一緒なのではないかと思う。あのラストシーンで奥山佳恵が東京の街中で遠吠えするシーン。あれと全く同じ臭いがする。というか、あの映画の記憶があったから、まったく衝撃を受けなかったのかもしれない。
結局、最後に主人公は夢をかなえて宇宙へ旅立つわけなので、決して青春叩き潰しストーリーというわけではなく、成長ストーリーの中のスパイスといった程度。この結末だけを強調するのは止めた方がいいんじゃないかと思う。
ところで、アメリカにはサバイバリストと呼ばれる人たちがいて、大災害やら文明崩壊やらでも生き残れるように、準備や訓練を怠らないのだという。そういう文化的背景があるためか、ハインラインをはじめ、ニーヴンやブリンもサバイバリストのような人々が活躍する小説を書いている。これもそのうちの一つなのだろうが、この手の小説を読むたびに、「生き残るための方法はすべてSFで学んだ」とでも言いたくなるのである。
大森望氏推薦――「こんなのあり? 衝撃の結末に茫然自失。だまされたと思って読んでください」
今さらながら、書店でそんなポップを見たので買ってきた。
ハインラインの本はタイトルが変わったり、少年少女向け翻案版があったりで、読んだんだか読んでないんだかわからないのだけれど、そんなに衝撃的なラストな小説ってあったっけ?
で、読み終わったのだけれど、そんなに衝撃的じゃなかった。
転移ゲートの向こうへサバイバル課程の卒業試験を受けに行く学生たち。行先不明の惑星へ3分間隔で一人ずつ出発するというシーンのシチュエーションが、高見広春の『バトルロワイヤル』そっくりで笑ってしまう。ゲートの向こうで装備を奪うための待ち伏せとか、サバイバルしすぎ。
そして、このゲートが開かなくなって、少年少女のサバイバルが始まるのだが、これは完全に『十五少年漂流記』。そして、友情あり、ボーイ・ミーツ・ガールあり、権力闘争あり、コミュニティの崩壊と再生があり、ファーストコンタクト(未遂)までくっついて、波瀾万丈なサバイバル生活が続く。これが本当に目が離せず、読み始めたら止まらない。
このあたりはハインラインの面目躍如。大人向けだと強いアメリカ思想が鼻につくことが多いのだが、ジュブナイルとして少年の成長を描く物語にはこのぐらいでちょうどいい。ライバルは本当にイラつく奴だし、寓意として彼が象徴するものが本当にイラつくというのも理解できる。女の子も勇ましくて賢くてかわいくて魅力的だ。
そして遂にゲートが開き、少年たちが文明社会に戻るとき、鬱になるような衝撃の結末ってことなのだが……。個人的にはさもありなんというか、予想の範囲内。
この小説のモチーフは、あの駄作映画と言われる『十五少女漂流記』と一緒なのではないかと思う。あのラストシーンで奥山佳恵が東京の街中で遠吠えするシーン。あれと全く同じ臭いがする。というか、あの映画の記憶があったから、まったく衝撃を受けなかったのかもしれない。
結局、最後に主人公は夢をかなえて宇宙へ旅立つわけなので、決して青春叩き潰しストーリーというわけではなく、成長ストーリーの中のスパイスといった程度。この結末だけを強調するのは止めた方がいいんじゃないかと思う。
ところで、アメリカにはサバイバリストと呼ばれる人たちがいて、大災害やら文明崩壊やらでも生き残れるように、準備や訓練を怠らないのだという。そういう文化的背景があるためか、ハインラインをはじめ、ニーヴンやブリンもサバイバリストのような人々が活躍する小説を書いている。これもそのうちの一つなのだろうが、この手の小説を読むたびに、「生き残るための方法はすべてSFで学んだ」とでも言いたくなるのである。
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