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[SF] 太陽の中の太陽

2008-12-21 13:04:10 | SF
『太陽の中の太陽』 カール・シュレイダー (ハヤカワ文庫SF)</bold>



〈気球世界ヴァーガ〉シリーズと銘打たれた第一作。
『リングワールド』が引き合いに出されているが、要するにダイソン球(地球サイズの巨大な風船)の中の世界を描いた物語。
ただ、今回は外殻の話がほとんど出ないので、巨大構造物萌えの人にはちょっと物足りないかも。

『リングワールド』よりも、気体世界で大冒険な、ニーヴンの『インテグラルツリー』、バクスターの『天の筏』とかが近いんじゃないかな。世界の中心には重力源がなさそうで、ほぼ完全に無重力の世界というのが特徴か。

無重量状態でも衛星軌道なんかだと、速度を上げれば高度が上がるとか、感覚的にややこしい話が出てくるんだけど、ヴァーガではそんなこと関係なしの無重力なので、感覚的にもわかりやすい。基本的に空気もあって、気圧変化が小さいから、高度を上げて(外殻に近づいて)も空気が薄くなったりしない。そういった意味では非常にわかりやすい。

文化的には忘れ去られた世界パターン。
「重力ってあれだろ、回転でつくるやつ」
この台詞にドキドキできるのはSFモノだよね。

科学的な裏付けや世界観はしっかりしているが、物語は両親を殺された少年の復讐譚。2007年の星雲賞受賞作品『移動都市』の空中世界版というか。あれが星雲賞取れるなら、これも星雲賞ものだ。ちゃんと、顔に傷を持つ女性も出てきます。人妻だけど(笑)

こういう作品を読むたびに、これはSFというべきなのか、ハイファンタジーと呼ぶべきものなのか、よくわかりません。うるさい人なら、異世界(遠未来?)での文化が中世から産業革命時代そのものであることに突っ込みをいれるかも。こういうのも、いわゆるワイドスクリーン・バロック?

でも、そんな野暮な話は抜きに、楽しめる作品になっていると思います。

3部作らしいので、ヴァーガの秘密や主人公達のその後が描かれることに期待します。というか、続きがあるなら読みたいです。



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