ウロスの浮島はチチカカ湖に浮かぶ葦でできた人工の島。戦争でインカに負け、土地を追われた部族が生き残るために選んだ生き方である。
プーノのガイドは、こちらもホセさんという名前。日本語は話せないので、説明は英語。
ホテルのマリーナというか船着き場からモーターボートで出発。葦の間にできた水路を進む。観光用のボートがいくつもすれ違うが、今日はこれで少ない方だとか。
その先に見える対岸かと思っていた場所は、実はもう浮島。
小学校や病院も浮島の上にあり、中には子供たちがサッカーをやっている島もあった。こういうのは浮島といっても、伝統的な葦の浮島というわけではなく、土台があるっぽい。
島からカラフルな衣装を着た女性が手を振ってくる。ただし、訪問できる浮島は決まっている。島民の主な収入源は今では観光業が担っていて、偏りが出ると不公平になってしまうので、ローテーションが決まっているらしい。
島の中には見張り台が立っているのだが、これがいろいろな形をしていて面白い。どれだけ奇抜なものを作るかアイディア勝負でもしているようだ。こういうオブジェでも観光客を楽しませようとしてくれているのだろう。
島に降り立つと、葦の地面は意外にしっかりしていて、浮かんでいるようなふわふわした感じはしない。
男性たちが島の作り方をミニチュアを使って説明してくれる。単純に葦を積み上げるだけで出来ているのではなく、長い竿の先に刃物を付けた道具で葦の根を切り離し、これを束ねた土台の上に葦が載っているらしい。流されないように石の碇も付けてある。ガイドさんも手慣れたように手伝っていて、こういう訪問が頻繁に行われていることがわかる。
台所のように火を使う場合も、この葦の根の土台を使う。泥が混じっていて水分もあり、容易には燃えなくなっているようだ。
葦は大地であり、建材であり、燃料であり、食料でもある。皮を剥いて渡してくれたので、ひとくち齧ってみたが、味はほとんどしなかった。食感はザクザクしていて悪くない。
ウロスは基本的に漁業の村だが、今では観光収入の方が多そうだ。村人たちも片言の英語を話すが、訛っているので英語を話しているとわかるまでちょっと時間がかかった。これはお互い様か。
家の中も見せてくれたが、建材こそ葦でしかないが、ソーラーパネルの太陽電池が普及していてテレビも見えるし、携帯電話も使える。インディヘナの家に比べるとかなり近代的。この太陽電池もフジモリ氏の政策で格安でリースされているのだとか。
女性たちがケチュアの唄とアイマラの唄を歌ってくれたが、ぜんぜん響きが違って、まったく別な言語のようだ。日本語の唄も歌ってくれたが、なぜか「チューリツプ」。誰が教えたんだろう。
ここでも伝統的なデザインのパッチワークや刺繍を作って売っているが、そのデザインは蛍光色を使っているなど、伝統的というよりは近代的に解釈され直されたおしゃれな柄になっている。しかも、ただの布ではなくクッションカバーやレターラックの形をしているものもあり、デザイン性だけではなく、実用性もばっちり。さすが、テレビを見ているだけのことはある。
そこから葦船に乗って、別な島へ移動。これは高くないけど別料金。しっかしりている。
今回乗ったのはオレンジ色のドラゴンボート。ふたつの葦の船体の上に櫓を作ってある。見た目はかなり不安定だが、双胴なので思ったより安定していた。
おもしろいのは、観光客が乗っているのは手漕ぎだけれども、回送するときはモーターボートで押している。葦の船はもはや主流ではなく、観光用の出し物ぐらいになっているのかもしれない。
ボートが向かった先はウロスで唯一のホテルがある島。ホテルは葦ではなくてプレハブっぽい作りの小屋。ここには島の中に生簀があって、不漁の時にも料理が出せるように備えてあるのだとか。黒い小さな水鳥がうろついているが、これも食べられるらしい。
こういう近代的な設備やアイディアは、ウロス出身の大学生達がウロスを出なくても生活できるようにするにはどうしたらいいかと考えて試行錯誤中なのだという。これまではプーノやフリアカへ出稼ぎするしかなかったのが、こうやって伝統的な浮島に住みながら、観光業で経済的にも自立するというのが彼らの夢らしい。
我々が使ったバス用ハイウェイのおかげで観光客も増えており、これからの発展が期待されている。
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