神なる冬

カミナルフユはマヤの遺跡
コンサドーレサポーターなSFファンのブログ(謎)

天空の鏡に憧れて[11] 夕陽

2015-06-14 10:45:52 | ボリビア

そろそろお時間ですということで、一旦ホテルへ戻り、休憩。

ホテルへ帰ると、なんと、午後3時着といわれていた荷物がちゃんと届いていた。誰かが空港まで取りに行ったのか、航空会社が届けてくれたのか、はたまた、ホテル横のヘリポートまで飛んできたのか。これはうれしい驚きだった。これで、長靴や三脚も準備万端。ふたたび湖へと繰り出すのであった。

やはり、ランドクルーザーに分乗して夕方のウユニ湖湖面へ。一面真っ白なので、昼と同じ場所なのかどうかわからないが、山の位置はだいたい同じくらい。

夕方といってもまだ陽は高い。しかし、太陽が地平線に近くなったせいで、空の青さは昼よりも増していて、雲とのコントラストも強くなっている。湖面に映る像もはっきりしているような気がする。

太陽が傾くと一気に涼しくなり、そろそろ裸足は無理なぐらい。やはり思い思いに写真を撮りつつ、夕暮れを待つ。

西の空は次第に赤味を増すが、肝心の太陽は厚い雲の向こう。太陽が隠れた雲の脇に赤い領域が見える程度。空は青さを増し、紺色から紫色へ。

空一面が真っ赤になる夕焼けも、地平線に沈む夕日も見られなかったけれど、それでも充分なくらいに美しい光景だった。

コンディションが悪ければ、水が無くて鏡にならなかったり、雨で湖面が波打って映りが悪かったりするのだから、初日でこれだけ見られれば幸運だったといえるだろう。満足してホテルへ戻る。

なお、色味が違うのは、写真女子の妻の人が撮影。なるほど、こういうテクニックもあるのね。

 

そして夕食。ここではビールを飲んだ。

慣れてきたのか、高山病は特に問題なし。というか、ビール飲んだくらいの方が調子がいいかも。

ビールの銘柄はHUARI。フアリと言ってたように思うんだけど、どうやら正しい読み方はワリ。ただし、ワリってティワナクと交流があったペルーの古代文明のことらしい。添乗員さんの説明では、HUARIはウユニの近くで作っている地ビールとのことだったけど、日本に帰ってきて調べたらラパスのビールって書いてあった。どっちが正しいんだ?

夕食の後は一休みして、星空観測へ。昼のように晴れていてくれれば、星空観測には絶好のチャンスだったのだが・・・・・・。

外に出ると、空は真っ黒。厚い雲に覆われて、星は欠片も見えない。かろうじて月は見えてたか?

強い風が吹き付けて、湖面も波立ち、寒い。ガイドさんもコンディションの悪さを判断してか、それとも、他にバッティングする車列がいなかったためか、ホテルの割と近くで車列を止める。

今回は空振り。夜間の試し撮りぐらいの位置づけになった。そして、ビール飲んだせいで、トイレに行きたくて仕方が無かった。

明日の早朝にも星空+朝陽観測があるので、そちらに賭けるか。

ホテルに帰ってきてシャワーを浴びたら、耳が痛い。頬と鼻には日焼け止めを塗っていたのだけれど、なんと、耳の後ろから首にかけて塗り忘れてた。鏡で見てわかるくらいに赤く焼けてる。恐るべし、高地の太陽。

ちなみに、この部屋のシャワーは何故か鏡張りならぬガラス張り。いったいどういう趣味をしているのか。

 

 


天空の鏡に憧れて[10] 鏡張り

2015-06-14 10:37:36 | ボリビア

昨晩から今朝にかけては雨。そして、今は晴れ。なんと、初日にして、絶好のコンディションとなった。ランドクルーザー7台に分乗して、湖へ乗り出す。

塩のホテルから繋がる土手の道を渡り、ウユニ湖の石碑をかすめて車ごと湖の中へ。湖と言っても、水深はわずか1cmから2cm。その下はちょっとだけ泥で汚れた白い地面。まるで、氷原を進むようだ。そして、水面は鏡のように空を映し、山を映し、我々と同じように湖へ乗り出していく車列を映しだす。

もう、この時点で感動もの。ついにウユニに キタ━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━ !!!!!

あとはもう、言葉にならない。窓越しの景色に目を奪われっぱなし。

路面の問題か、塩水を跳ね上げないためか、時速は10km程度。もしかしたら、波が立つと水鏡が崩れるので、それへの考慮もあるのかもしれない。

岸が見えなくなるまで約30分進んだ当たりで、降車。なんとウユニ湖の湖面に直に降り立つ。

水深はやっぱり1cm程度。地平線には山や島が見えるが、どれも水面にさかさまに映っているのがはっきりわかる。そして、遥か彼方まで空と湖面の区別がつかない方向もあった。

そちらの方向に向かって歩いていくと、空の中を歩いていくような不思議な感覚になった。自分がどこにいるのかわからない、失見当識の一歩手前というか、このままいくとどうにかなっちゃいそうな。

そして、この絶景でランチ。車に積んできたテーブルやイスを広げる。

ビュッフェ形式なので、思い思いに食材を取るのだけれど、落とさないように要注意。塩分が高すぎて細菌が少ないので、ゴミがなかなか分解されないため、何から何まですべて持ち帰るのが基本。確かに、ここに落としたものはすべて塩漬けの保存食になってしまう。

時刻は正午を越え、遮るものも無く、ひたすらまぶしい。そして、暑い。寒いから気を付けるようにと言われたことがまるで嘘のように、真夏のような陽射しが直接肌を焼く。まさにジリジリという音が聞こえそうな勢い。

長靴に付いた水滴は見る間に蒸発し、白い粉が残る。水を跳ね上げただけのズボンもすぐに真っ白。

添乗員さんが先頭になって、長靴を脱ぎ、裸足になる。女子は車に戻ってタイツ脱いだり大変らしい。

しかし、陽射しが強すぎて緊急事態。ショートパンツの下は素足になった女性は見る間に腿がまっかっか。高地は雲の上なので紫外線が強烈なのだ。

自分も最終的には裸足になってみた。地面は色の濃い部分は多少硬いが、色の白いところほどやわらかく、細かい砂が固まったような感触。

同じツアーの皆さんは、ジャンプしたり、人文字を水面に映してみたり思い思いに楽しんでいた。

 


天空の鏡に憧れて[9] ウユニの街へ

2015-06-14 10:22:54 | ボリビア

朝4時起き。朝5時出発。なんとまぁ、朝の早いことで。

出発前に朝ごはんのボックスを渡される。中身はサンドイッチにチーズと小さめのリンゴ丸ごと1個。移動の多い海外ツアーでは予期していたことなので、特に文句も無いですが。

月の谷のホテルからバスで出発。ホテルの出口には、なぜかレトリバー黒いのと白いの二匹が陣取って、ちょっと待てといわんばかりに通せんぼ。特に黒い方は、背中を叩いても、尻を叩いても動じない。無理矢理隙間を抜けても避ける気配なし。大物なのか、寝ぼけてんのか。

ラパスの市街は霧というか、雲の中。エルアルト空港に付く頃には、ポツポツと雨が。ウユニ湖で雨だったら傘差していいのか、それともカッパなのとか、どうでもいいことを心配する。

ウユニまでの国内線は団体チェックイン可ということで、添乗員さんとガイドさんがカウンターへ。我々は荷物を預けて、朝ごはん食べるなり、すでに開店を始めた売店を見るなり。とのことだが、明け方の割りに空港はかなりの混雑で、座る場所も無い。

ちらちらと売店を見て、会社へのお土産用に小さなチョコレート詰め合わせを購入。値札が付いていないので適当に選んだのだけど、意外といい値段。やっぱりボリビアでは、チョコレートは高級品な模様。

やっと搭乗時間になるも、ゲートは飛行機直結ではなく、バスですらなく、徒歩。しかも、雨が激しくなっている。

出口で傘を渡され、右へ行けといわれるが、果たしてどこまで行けばいいのかわからず、ボーディング・ブリッジの下をひたすら歩く。そろそろターミナルの端まで来て、どこまで行けばいいのかわからなくなった頃、近づいてきた空港職員っぽい人に英語で聞こうか、スペイン語しかわからなかったらどうしようと迷っている隙に「ウユニ?」と聞いてきた。はいはいそうですと、その案内にしたがってさらに歩く。

やっとたどり着いた先には2列+2列の小型ジェットが。50人乗りくらいか。

飛行時間はわずか1時間半程度だが、この間に朝陽が上り、雨も止み、雲が晴れ。空からちらっと見えた反射面が、あれがもしやウユニ湖。

と思う間に着陸。着陸したところは見渡す限りの大平原。遠くに山が見えるものの、湖はどこに。きっと、あの山の見えない方全体がウユニ湖なんでしょうな。まったく何にも見えないけど。

そしてここでまたトラブルが。なんと、バゲージロスト!

ツアーの半分ぐらいの人の荷物が着かない。自分の荷物も、妻の人の荷物も無い。雨が降っていたから積み込みを怠けたのか、航空便の荷物を優先させて積みきれなかったのかは不明。

15分後(!)の次の便に積んでいるとのことで、しょうがないので荷物受け取りエリアで待つ。なぜなら、外に出ると再入場できないから。

どうせ遅れるのだろうと思っていた予想に反して、次の便は本当に15分後に到着。降ろされる荷物に注がれる熱視線。しかし、それでもツアー全員の荷物はそろわない。妻の人の荷物も到着せず。

自分の荷物は到着したもの、タグが水濡れで溶けてしまって番号が確認できず、受け取りができない。これはなんとかOKとなったが、残りの荷物はさらに次の便で、午後3時着とのことで、さすがにこれは待てない。

仕方が無いので、空港からウユニの街へ出発。

ここからはランドクルーザーに分乗。運転手は若いイケメンだけど、車はかなりの年季モノ。そして道路はアスファルト舗装ではなく、土が固められただけ。風に吹かれて破れたまま放置されている広告板が最果て感を醸し出す。

しばらくすると、土煙を立てる道路はレンガ敷きの道路に変わり、ウユニの街に入る。街というか、町。それなりに栄えてはいるのだろうが、どうしても日干し煉瓦と、最近の流行なのかプラスチックレンガの茶色い家が目立つ。そこに混じってコンクリート製の倉庫や4、5階建てのビルも並ぶ。

日差しはまぶしいぐらいだが、あたりは雨のせいか水浸しで泥だらけ。まるで洪水の後のような風景だった。

なぜかここのホテルのロビーで一休み。どうやら、旅行会社が契約しているホテルのようで、ロビーは宿泊客ではなく、休憩の日本人で大賑わい。ここで1時間以上ダラダラと。仕方が無いので、ウユニの街をぶらぶらしてみるも、朝が早いせいで店もあまり空いていない上に、メインストリートだと思ったところは裏道だったので、特に見るものもなし。

時間に追われているようでもあり、無駄に余っているようでもあり、なんだかよくわからない。

準備ができたのか、ここから「鉄道の墓場」へ移動。ここは定番の観光地で、日本人だけでなく、いろいろなところから来た人々でいっぱい。何語をしゃべっているのかもよくわからん。

墓場というからには、もう少しもの寂しく、昔の栄華を儚むような場所かと思いきや、観光客が多すぎて「墓場」という情緒はまるでなく、どちらかというとテーマパーク風。列車の上に上ってはしゃいだり、子供はブランコに乗ったり。

面白かったのは、鉄道の車輪をバーベルに見立てて持ち上げようとする写真を撮る人が多かったこと。その発想は無かったけど、確かにバーベルだ。

再びランクルに乗り込んで、ついにウユニ湖畔のコルチャニを目指す。

道路はやっぱり土煙の未舗装道路。しかし、どうやら堤防の上にハイウェイを建設中の模様。その堤防の向こうに見える山はなんとなく鏡に映っている部分があるような……。

その途中に検問っぽい場所が。政府がウユニへの乗り入れを制限し始めたという話も聞いているので、その検問かも。ちなみに、我々のガイドは政府公認のナショナル・ガイドだというステッカーが車に貼ってあった。

道路脇に動物を見かけて、リャマだリャマだとはしゃいでいたら、ドライバーさんは「ビクーニャ」だと。ビクーニャって高地にしかいないんじゃなかったっけと思ったけど、ここが3600メートルの高地だった。ちなみに、ビクーニャ⇒リャマ⇒アルパカの順番で毛がふさふさになるはず。

結局、湖が見えたかどうだか自信が無い中で、塩のホテル「Hotel Palacio de Sal」に到着。噂どおり、椅子もテーブルも塩だよ。二階への螺旋階段も塩だよ。床は塩のところと漆喰のところがあった。やっぱり、塩だけだと濡れたらすり減ってくからだろうか。

ここでスーツケースから長靴をはじめ、ウユニ湖対策グッズを取り出す。はずが、スーツケース未着の人は長靴も日焼け止めも無い。しかし、ホテルでは長靴を貸してくれたので、セーフ。

さあ、ついにウユニ塩湖へ向かって出発だ。

 


天空の鏡に憧れて[8] サガルナガ通り

2015-06-14 10:12:39 | ボリビア

ティワナクで昼食。観光客相手のボリビア料理レストランなのだけれど、団体客は日本人ばかり。ボリビアって、誰も行かない秘境のように思っていたけど、そこら中に日本人の、しかも年配の旅行客がたくさんいてびっくりする。

ここでもスープが出て、その後はビュッフェ。ちょっと息切れがするからと、ビールは自重したのだけれど、飲んでおけばよかった。その代りと言っては何だが、ティーバッグではない本物のコカ茶を飲んだ。本当にパリパリに乾燥したコカの葉っぱにお湯を注ぐだけ。麻薬じゃないです。高山病の薬です。

料理は魚のフライっぽいものとか、チキンを煮たものとか。やっぱりジャガイモがおいしい。あと、バナナのフライもあったっけ。煮込み料理っぽいものがあったので、コメにかけてみたけど、やっぱりこのあたりのコメの不味さは異常なほど。冷蔵庫で冷やしたみたいにパサパサして、デンプンが分離している味がする。一体どうしてなんだろうか。

その後はバスでラパスへ戻ると、もう夕方。ラパス市内観光ということで、お土産通り街として有名なサガルナガ通りへ。

これまた細い路地を神業的な運転技術で大型バスが行く。が、さすがに歩行者が多すぎになって、予定位置より手前で下車。といっても、サガルナガ通りはもう目の前。

サガルナガ通りは、観光名所のサンフランシスコ教会へ下る坂道。ここにアルパカの織物をはじめとするお土産屋さんや、現地ツアーの旅行社などが立ち並ぶ、いわばラパス観光の中心地。

この日はまだカーニバル前だったけれども、すでに準備が始まっているとのことで、買い出しの現地の人たちの数も多く、大賑わいだった。

まずはガイドさんの案内で、ボリビア名物のチョコレートが安い店へ。ボリビアはカカオの名産地で、チョコレートも名物。中でも、ウユニの塩を練り込んだ塩味チョコが有名らしい。ただし、板チョコ一つが10ボリビアーノ(150円くらい)と、現地では比較的高級品。

商店街は通りに面した店だけではなく、奥の路地にも店が並んでいる。ここではトイレチップを払うとトイレを使わせてくれるとのことだったのだけれど、奥のトイレを使うのは中々の難問。中庭に面したテラスの2階にあるトイレを教えてもらったのだけれど、扉に鍵がかかっていて開かない。下からおばさんが妙な手つきのジェスチャーをしていたのを良く見ると、どうやら窓から手を入れて鍵を開けろということらしい。確かに、扉の横の窓がちょっとだけ空いている!

そこから泥棒のように手を入れて、手さぐりで鍵を開けることに何とか成功。文化が違うと、トイレに行くのも大変だ。

サガルナガ通りにクロスする路地の奥にあるのが、通称「魔女通り」。おまじない用にラマやアルパカの胎児のミイラを売ってたりする。興味があったところで、買ってもたぶん税関を通れません。

そこら中で売ってたアノニマスみたいなマスクはカーニバル用だそうで。デザインもいろいろでなかなか楽しい。買ってみたら、これ、目がただの切れ目になっているので、目を開けると眼球に織物の毛が入ってしまい、目を開けていることができない。本当にこれってかぶるためのものなのか?

他に目についたのが、陽気なおっさんの人形、エケコ。これはお金や食べ物など、いろいろなものを家にもたらしてくれる妖精さんだそうで。中には車や家を担いだエケコもいて、このあたりは何処の国も変わらないかも。

最後にサンフランシスコ教会(内部撮影禁止)を見学して、バスで再び月の谷のホテルへ。

晩御飯は昨日と同様、スープの後でビュッフェ。

ホテルからのカクテル無料チケットでカクテルを頼んだので、この日はビールなし。カクテルはいらないから、ビール頼めば良かった。

明日のためにパッキングして、就寝。

 


天空の鏡に憧れて[7] ティワナク

2015-06-14 09:55:12 | ボリビア

ラパス二日目の朝。AM7:00に朝食、8:30出発ぐらいの早めの行動だったけれども、実はこれは一番ゆっくり気味の日程。この後は早朝行動ばかりだったので。

健康チェックの後、パンケーキと謎フルーツの軽めの朝ごはんを食べてバスで出発。ラパスの街を抜けて、目指すは遺跡の街、ティワナク。

早朝はどんよりとしていた天気も、いつのまにか晴れ渡り、今日もいい天気。

近代的な街並みが日干し煉瓦の家並に変わり、ついには大草原へ。この辺りの景色を見ると、高地へ来たのだと実感する。とにかく、自然に生えてる木はほとんどない。見渡す限り、草原の丘といったイメージ。

途中でバスを止めて、添乗員さんがパンを買ってくる。このあたりでは一般的な、イースト菌の入っていない素朴なパン。焼き立てなので、小麦の味がして、なかなかおいしい。

バスが峠を越えると、山の向こうはさらに広大な大草原。ほんとうに何もない感じ。途中で路肩をジョギングしている人を見かける。高地トレーニング中のマラソン選手か何かだろうか。

無限に続くような草原の丘の景色にも飽きて眠たくなってきた頃にティワナクに到着。思ったほど街という街は無く、すでに使われなくなったさびれた線路には「TIAHUANACO」の駅名表示。大草原にぽつんと立っているものの、博物館はさすがに立派。こっちの表記は「TIWANAKU」。はたして、正しいのはどちらか。

まず見学したのは博物館。ティワナクはインカ以前に栄えた文明だが、インカとは民族が異なるらしい。それでも、土器のデザインなんかはマヤやインカと似ていて、相互に影響を与え合っていることがわかる。撮影禁止だったので写真は無いけど、ジャガーやラマらしき意匠はちょっとデッサンの狂ったものが多くてユーモラスだった。

そして、こちらも撮影禁止な屋内展示の神官の巨大石像(ベネットのモノリート)を見学。サイズとかの情報はメモってなかったので忘れてしまったが、調べてみたら7.3メートルらしい。

モアイ像のように一枚岩を切り出して彫り込んだ彫像であるが、技術は比較的稚拙で、表面に模様を刻んだだけのレベル。顎や鼻も高く刻まれていない。それだけ古い時代のものだということか。しかし、見上げると首が痛くなるほどの巨大さと、遥かな年月を越えたものが持つ神秘的な力に圧倒される。

その後は外の遺跡を巡る。

ティワナクは破壊が進んでいてろくなものが残ってないというのが評判だったけれども、現在は大ピラミッド(アカパナ)の発掘、修復中。石を積んだエジプトやマヤのピラミッドと異なり、土を積み上げただけのものなので、発掘なのか再建築なのか微妙な感じ。残っているのは土の山と、わずかな絵画だけなのだし。

ぐるっと回って、インディアンクロス。インディアンクロスとはキリスト教に関係なく、十字の意匠を刻んだもの。これも最近の発掘物で、用途とか意味は不明らしい。というか、これ、十字なのか。

そして、半地下広場。壁にいろいろな顔がはめ込まれており、真ん中に神官の石像と言われるモノリートが立つ。そういえばマヤにも似たような広場があったような。この様々な顔は複数の人種がティワナク文明に係わっていたという証拠なんですかね。それとも、細かく彫り込む技術が発達していなくて下手なだけ?

最後はお待ちかねの太陽の門が立つ方形広場(カラササヤ)。ここは修復がいい加減で、太陽の門がそもそもこの広場内にあったのかどうかすらわからないというのは有名な話。

太陽の門と言えば、これを題材にした鈴木光司の『ギフト』という小説がある。それによると、ここに描かれているのは鳥の神様ではなく、足を骨折してギプスでぐるぐる巻きにして、松葉杖を翼のように背負った男の絵だというのだが……あんまりそういう風には見えませんね。実物を見る前は、おもしろいネタだと思っていたのだけれど、実際に実物を見てみると、さすがにそれは無いだろうとしか思えない。

ティワナクは今後も発掘を続けて観光地化するみたいだけれど、発掘というよりは残存している絵画を元に再建築するレベルのよう。それはそれで悪くないとは思うけれど、学術的な発掘もちゃんと続けて欲しいものだ。

 

 


天空の鏡に憧れて[6] いろいろヤバいホテル

2015-06-14 09:41:32 | ボリビア

今日、明日のホテルは月の谷からほど近い場所にあるHOTEL OBERLAND。まずは、この低地で身体を高地に慣らしましょうということだ。

チェックインの待ち時間にはコカ茶をいただく。ハーブティの横に、普通にティーバッグが置いてある。日本じゃこんなことしたら逮捕されますな。

置いてあるお湯はかなりぬるめ。スプーンでティーバッグをつんつんしながら、ゆっくり煮出されるのを待つ。コカ茶は淡い綺麗な緑色で、草っぽい味だけれどそんなにクセはなかった。

お湯が冷めちゃってダメだねとの声も聞かれたけど、よく考えたら気圧が低くて、熱が十分に上がる前に沸騰しちゃうわけだよね。そんなわけで、ボリビアではどこに行ってもお湯はぬるい。

ツアーのみなさんは次々に名前を呼ばれて各部屋へ。しかし、我々の名前が呼ばれない。まさか部屋が無い!

……なんと、フロントの人がカギを出し忘れてました。

部屋はきれいな庭の中にあるコテージ風の建物なのだが、残念ながら設備が古い。なんと、窓が閉まりません。木造の窓枠にネジ止めされた金具の位置がゆがんでズレてる。替わりにガムテープが貼ってあるのだが、とうぜんのように風が吹くとパタン。

テレビもケーブルTVのセットトップボックスらしきものがあるけれども、どうやっても点かない。最終的にコンセントを引っこ抜いてリセットすると点いた。でも、日本語放送はもちろん、英語放送もほとんどなくて、スペイン語の分からない我々には無用のモノだった。

高地の夜は冷え込むので、ホテルの人がストーブを点けに来てくれる。しかし、なんとこれが点かない。ギコギコとポンプを押して、点火スイッチをバッチンバッチン。しかし、何度やっても火が付かず、だんだん不安になってくる。窓が閉まらない上に、ストーブも無しかよ!

10分ぐらいギコギコバッチンバッチンやってたら、なんとか点火。ホテルの人もホッとした顔で、にこやかに去っていった。スペイン語が分からないので、何言ってるかわからなかったけどな!

とにかく、この火を消してはいけない。まるで原始時代の焚火を守るかのようだ。そこからはずーっとストーブ点けっぱなし。

食事前には食堂で健康チェック。高山病にかかっていないかのチェックを毎日実施。パルスオキシメーターなるものを使って、脈拍数と血中酸素飽和濃度を測る。指先にクリップのようにはさんで計測するわけだが、脈拍数はともかく、酸素量もこれで測れるのか。なかなか凄いな。

初日はちょっと心拍数が高いぐらいで問題なし。しかし、階段登ったりすると、確かに息が切れる。妻の人はまったく何ともなし。さすが、もと山ガール。

食事はビュッフェスタイル。

アルコールは高山病を悪化させるとかで、自重しようかと思ったけど、とりあえずボリビアの定番らしいビールPACENA(パセーニャ)を。

まずはスープが出てきて、その後に料理を取りにいくのがボリビアスタイル。だいたいどこにいってもそんな感じ。

料理はラマの肉、チキン、魚。後は野菜にジャガイモ。とにかく、ボリビアではどこでもジャガイモが一番おいしい。道産子なので、ジャガイモは食べ慣れているのだけれど、驚くくらいにいろんな種類があって、固いのから柔らかいの、甘いのも甘くないのも、どれもおいしい。もちろん、米は見ただけでパス。

ラマは普通に赤味の肉。特別うまくも不味くもなく。この日は魚のパイ包みみたいのが一番だったかも。

 

 


天空の鏡に憧れて[5] 月の谷

2015-06-14 09:30:02 | ボリビア

ムリーリョ広場から両替のために、ナショナルスタジアム近くの両替所へ。

ところが、バスに寄ってきたおじさんが両替所よりも高レートで両替してくれるとのこと。ガイドさんがアレンジしてるので大丈夫だとは思うが、あからさまに怪しい。

しかも、きれいなドル札じゃなきゃダメとか、意外にわがまま。ボリビアーノ札も大きいのしかくれなかったけど、列が進むと逆に大きい札が無くなって細か過ぎに。そして、ボリビアーノが切れておじさんが両替してくるとかわけのわからない展開に。なんだそりゃ、面白すぎるだろ。

その後、バスは崖につけられた急傾斜の道をS字に上り、初日のランチへ。

ボリビア初の食事は、なんと和食。鮭の煮物に天ぷら、ひじきに漬物……。デザートにお汁粉までついてくる。

「ニュー東京」という名前の日本食レストランだったのだが、あまりに普通の和定食。こういうのはパックツアーだと終盤に用意されがちものなのだが、いきなり最初のご飯がこれかよ。

ただ、これまでは機内食の連続だったので、これはこれでよかったのかも。

庭は日本庭園というよりは西洋風。ただし、咲いている花がアジサイというあたりはやはり日本趣味。レストラン内には日本人形や扇子などがディスプレイされていたけど、サムライ、フジヤマ、ゲイシャという感じではなく、どちらかというと現代日本風。神楽坂かどこかの隠れ家レストランだと言われても納得するような場所だった。

最後にあいさつに出てきたおばあさんが作ってくれたのか。まさに、日本から遠く離れた地の、おふくろの味。

一休みして、その後、ラパス市内の観光地、月の谷へ。バスは市街地を抜け、どんどん下る。高台の空港から月の谷までの高低差は、なんと約1000メートルもあるらしい。ホントか!

川に削られた谷は古い地層が露出し、奇岩の宝庫。その中でも、白い堆積岩が風化して奇妙な形に削られた場所が「月の谷」。

確かに岩の色が白っぽいので、月のレゴリスっぽい。しかし、どう見ても堆積岩だし、水で削られた跡が見えるので月にはあるはずがない地形。月を舐めるな。

鍾乳洞の石筍みたいに細長い塔のような岩がにょきにょきと集まっている。しかし、これは下から育ったのではなく、上から削られてできたもの。ガイドさん曰く、氷河に削られてできたと言っていたが、それもちょっと怪しげ。岩は触るとはがれてくるほど脆いし、これは氷河じゃなくって、その後の雨と風で風化した地形なんじゃないか。

天候は晴れて暑いし、酸素も薄いのでちょっとお疲れ気味になって終了。高地では水分を多めに取るのと、ちょっと息切れしてきたら、すぐに休むのが高山病予防に重要らしい。

 


天空の鏡に憧れて[4] 到着

2015-06-14 09:19:38 | ボリビア

24時間以上の行程の果てに、遂にボリビア、ラパス空港へ到着。

ラパス空港(エル・アルト国際空港)は首都の国際空港だというのに、まるで地方空港のように小さかった。舗装されているのは滑走路だけで、横の原っぱには飛行機が野ざらしで放置されている。

入国の窓口はふたつ。しかも、飛行機内で配布されなかった書類に記入しろとかで、乗客が窓口前で大渋滞。

同行の添乗員さんが係員と話をすると、そもそもいらない書類だったのか、日本パスポートの力か、ほぼ素通りで窓口通過。いったいなんだったんだ。

荷物が出てくるターンテーブルも一つだけ。そこから、税関を通過するのだけれど、ここはボタン方式。ボタンを押すとランダムでランプが点き、緑ランプなら通過、赤ランプなら荷物チェック。

なんとここで妻の人がドキドキの赤ランプ! ところが、荷物はX線チェックだけで、オープン無し。なんとも拍子抜け。

空港の外に出ても、“Welcome to La Paz”みたいな表示は無く、それどころか、空港の看板すらどこにあるのかわからない。本当に大丈夫なのか、この国。

外にはバスと現地ガイドさんが待っていた。このガイドさん、モデルみたいに美人でおしゃれ。きっと、金持ちの娘なんじゃないかという印象。

バスに乗り込んで、まずは展望台へ。ここからはラパスの街並みが一気に見渡せる。ラパスはすり鉢状の街と言われ、高台の空港から低地の住宅地までは数百メートルの高低差がある。その斜面に、日干し煉瓦色の建物がずらっと並ぶ。まだ早朝で朝靄がかかった街並みはとても神秘的に見えた。違う国に来たんだなと実感する瞬間。

ふと、見ると、何だあれ。なんと、この高低差を埋めるように、地震が来たら崩れそうな日干し煉瓦の家々の上を、派手な赤い色のロープウェイが。ラパスは古いだけじゃなく、近代化も進んだ、なんとも不思議な街だ。

さらにバスで移動。ラパス市街に入り、バスは細い路地を抜け、急な坂を登る。着いたところは「KILLI KILLI」という名前の展望台。ここからはラパス市内を一望できる。サンフランシスコ教会、ナショナルスタジアム、月の谷……。これから巡る観光地をここで把握できるというわけだが、その時はまだぜんぜんわからず。ただ、陽も照ってきて、風が気持ち良かったことを覚えている。

バスはさらに細い路地を行く。途中で路駐車があって通れなかったので迂回したこともあり、壁にほとんど擦るんじゃないかというほどの狭さだ。しかも、その壁とバスの間を平気で歩行者が通っていく。ちょっと信じられないくらい。

バスを降りて、徒歩で路地を歩く。ここは植民地時代のコロニアル様式の建物が残っている路地。店舗や博物館になっている建物が多いらしいが、早朝のせいか、日曜日だからか、オープンしている気配が無い。パステルカラーに塗られた壁や窓は、おしゃれで可愛らしい。

路地を抜けた先にあった奇妙な飾りは悪魔祓いのものらしい。そしてシマウマの絵は交通安全のポスター。このシマウマは交通安全キャラクターだそうで、この後、通学時間である朝や夕方にシマウマのコスチューム(っていうか、ほとんどキグルミ)を来た交通整理係を見ることができた。

さらに路地をたどっていくと、街の中心部であるムリーリョ広場へたどり着く。ここは中南米でよく見る街の中心の四角い広場。メキシコではソカロと呼んでいたものと同じだ。大統領府があり、国会があり、カテドラルがあり……。

国議事堂の時計は逆回りをしている。ああ、南半球だからか。って、そんな馬鹿な。

この時計は独立と革命に続く内紛の歴史を逆回りさせないための意味らしいが、思いっきり逆回りしてますけど、大丈夫か?

日本帰って来て調べたところ、なんと「南半球だから」で合っているらしい。内紛の歴史を繰り返さないためではなく、やっと手にした民族のアイデンティティーを南半球特有のものとして象徴しているらしい。なるほど、微妙に説明が違う。今回のガイドさんは、割りとこういう半端な説明は多かったんだよな。

しかし、逆回りの時計や紅の衛兵よりも驚いたのは鳩の数。なんじゃこりゃ。勝手に売り物のエサも食ってるし、傍若無人にも程がある。一斉に飛び立つと、埃と羽根で大変なことになってしまう。とりあえず、フンガイは無かったので良かった。

 

 

 


[SF] 薫香のカナピウム

2015-06-09 23:59:59 | SF

『薫香のカナピウム』 上田早夕里 (文藝春秋)

 

『地球の長い午後』を髣髴させる生態系SF、と見せかけて、いろいろ意地悪なテーマを織り込んだ作品。

大人になる直前、なったばかりの若者を主人公に据えたジュブナイルでありながら、出版形態は四六判ソフトカバーなので、少年少女は図書館でしか出会えなさそうなのが惜しい。

実は意図的なミスマッチを狙っている節もあるのだけれど、疑い出せばきりが無い。それぐらい、意地の悪いひねくれたラストが用意されている。

あえてネタバレ全開で語るので未読の方は注意!

 

 

個人的に気になったのは、人工物と自然の対比と、ジェンダー問題。


まずはSF的に馴染み深い、人工物と自然の対比について。

やっぱり、『風の谷のナウシカ』を思い起こさないわけには行かない。もしもナウシカが主人公だったとしたら、彼女はどのような選択をしただろうか。

自分は科学技術に関して楽観的なので、最終的には科学技術がすべてを解決できると信じている。そのため、遺伝子工学や環境工学に対して大きな不安は無いし、ぶっちゃけて言えば、コミック版のナウシカの決断には懐疑的だ。

一方で、この物語において問題とされているのは、実のところ、自然か(無軌道な)工学かという対比の問題ではなく、知性や意識の問題ではないかと思った。

主人公のアイルたちが島を脱出するのは、進みすぎた工学的ハザードのせいでも、遺伝子改変への恐怖でもなく、自分たちが自分らしく生きるためにという、意志や意識の問題であったのだと。

もしも、文字通り森と共生して生きる融化子が知性を保てる存在であったならば、そして、巨人たちが最初から真実を語っていたのならば、彼らの決断は変わったのだろうか、それとも、変わらなかったのだろうか。

融化子が知性をそのまま保てるならば、森に生きるために特化した存在として生きることは積極的に選ぶことのできる選択肢だったのではないかと思う。


もうひとつの問題はさらに複雑だ。

物語中にはジェンダーの固定化が肯定的に語られる部分がある。力の強いものが戦い、弱いものが機を織る。ただし、巨人たちのテクノロジーによって、この世界で卵を得るのは定住者の性ではなく、巡回者の性である。

回りくどく書いたけれども、これが最後の意地悪な罠。主人公は明らかに定住者である少女で、巡回者の少年と出会い、家庭を持とうとするわけだが……。

ウェブの感想を読んでみると、この部分に言及している読者が少ない。ネタバレを気にしているのか、それとも、まさか気付いてないのか。

はっきり言うと、ジェンダー問題の解決には男女の性別を入れ替えて固定するのではなく、流動的になるべきだ。すなわち、“政治的に正しい性的役割分担”とは、どちらの姓でも卵を得ることができたり、巡りに参加できたりすることではないだろうか。

あるいは、敢て固定化された性を肯定的に論じたうえで、最終的にその立場を逆転させることによって、読者の固定観念を明らかに(あえて糾弾とは言わないけれども)しようということなのか。

いずれにしろ、この部分はもっと論議を呼ぶべきなんじゃないかと思った。


で、七面倒くさい裏の議論をさておけば、生命の濃厚な匂いに満ちた、良質なジュブナイルSFである。ので、中学校や高校の図書室なんかにはガンガン入れて欲しい小説だった。

 


[SF] 凍りついた空

2015-06-02 23:59:59 | SF

『凍りついた空 エウロパ2113』 ジェフ・カールソン (創元SF文庫)

 

木星の衛星、エウロパを舞台にしたファーストコンタクト小説。

いきなり冒頭から主人公は絶体絶命。おまけに、片方の眼球はつぶされ、頭蓋骨は割れ、手足もまともに動かないのをパワードスーツで無理矢理動かすというかなりグロい状況。

しかも、この主人公は何度治癒して復活しても、また傷だらけにされるという繰り返しで、著者はどんだけサドなのかと。

物語としては、エウロパで発見された生命体はどれだけ知性があるのか、どうやってコミュニケーションしたらいいのかといったことを、遠く離れた地球の外交戦略に左右されながらも現場の科学者たちが苦心するといった内容。

エウロパは木星の潮汐力による摩擦熱で内部が暖かく、海があるかもしれないといわれており、もっとも地球外生命体の存在する可能性が高いとまで言われている星である。そういう環境でどのような生命体が、どのような生態で存在しうるのかという想像は面白いのだけれど、その方面は……。

たとえば、エウロパ人の形体や生態にどのような必然性があるかなどは余り考慮されていないようだ。

彼らにとっての一番の問題は、エウロパ人が知的生命体なのかどうかということ。だからと言って、知性とは何かというテーマが掘り下げられることも無く、クジラ類に対する感情的な議論と同じレベル。

どちらかというと、ファーストコンタクトに対する科学者たちの大変さと、当初の問題が最終的な一発逆転の素になるというストーリー展開の楽しさが売り。