川越芋太郎の世界(Bar”夢”)

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美の巨人たち:小松 均

2010-11-28 19:42:00 | 美の番組紹介
美の巨人たち:小松 均 
 
京都国立近代美術館収納 「雪の最上川」


92cm×4m52cmの大画面
4枚の大画面をさらに上下左右に積み重ねた迫力ある10mの
大画面の最上川。
色彩取り去った白と黒の山形の冬景色。


観るものに日々海老江とした換気
とうとうと流れる最上川
人も獣もいない真冬の最上川
全てを拒絶するかのような凛とした冬の大自然が横たわる。


小松均は何を見、何を描きだそうとしたのか。


小松は、住職の家に生まれるも、そうそうに父を無くし、
一家で親戚の家に実を寄せる肩身の狭い貧乏生活を余儀なくされた。
13歳で近隣の寺のご本尊紛失事件に際し、木から削りだした
仏さまをつくる。
これが、芸術への目覚めであろうか。


18歳で上京し、土田麦僊に師事する。
麦僊はかれの描く日本画に抜群のデザイン力と土の生命力を感じ
彼を認めることとなる。


彼の第二の故郷となる京都大原。
小松の自宅兼アトリエは、とても粗末な掘建て小屋であった。
畑作業のかたわら、描く色彩の日本画。
大原女少女はかれのこの時期の代表作。
見事な色彩が目を引く。


大原での30年間は、徐々に色彩から墨へ彼の日本画を変えてゆく。
変わらないのは自然を見つづけたことであろうか。


66歳で山形(故郷)へ錦を飾る度に出る。
50年ぶりの故郷の自然との再会。
言葉では尽くせない望郷の念にかられたのか、
最上川との葛藤が始まる。


最上川難所にみられる世界は光と激流
栗の花咲く最上川では、なだらかな丘陵と木岐の美しさ
そして、集大成がこの「冬の最上川」であろうか。


観るものに、最上川の流れを感じさせる。
いや、画中の最上川は凛とした空気とともに流れている。
宮本武蔵五輪の書に学ぶ刀と筆の違い和有るものの、
あるがままに、自然に、まばたきもなく、
連続的に描き出す。
点は線に、線は世界に、呼吸さえ感じされる自然の息吹。
ほとばしる生命の躍動がある。
最上川の動と山形の山並みに代表される靜の世界。


小松は真冬に行火と毛布にくるまり、現場主義にのっとり、
最上川の大自然の中で、命を賭けて描き出した。
そこには、剣豪の滝に打たれる姿にも似た、漲る気迫と
大自然を身体で感じ精神を磨き、自らの技を磨く姿が
迫ってくる。


雨・風・吹雪に負けず、
すさまじい気迫
精神世界の墨の世界こそが相応しいのかもしれない。

五月雨を集めて早し最上川

われわれは、この詩を読んでも山形の大自然を理解できない。
しかし、小松均の冬の最上川を観ると、
東北の冬の厳しさと凛とした自然の強大さ、
そして、人の心が現れる厳しく・激しい世界を
目の当たりに出来る。

この絵は、まさに躍動している。
生きている。


画人・小松均の生涯―やさしき地主神の姿
田中 日佐夫
東方出版


ぼくの むら (至光社国際版絵本)
小松 均,武市 八十雄
至光社