ブログ閲覧者の中にも現在、人材育成の業務に携わっており、また、過去に携わっていた方、これからこの道に進まれる方もおられると思う。今回は人材育成の根元を考えてみたい。
最近、師として仰ぐ方々が次々と他界され、世の常と言われながらも寂しい限りである。己の中では決して忘れ去った過去のことではなく、ご高説は多くの師弟に脈々と伝えられ、己にとっても我が身の一部となっている。過去を振り返ってみると心に残る人柄や生き様は単純に伝わるものではなく、受け手の受け止め方にかかっているのではないか。いかに専門性に長けていても、講義が下手であってもである。講義では見えない多くのことが伝承され、心に焼き付くのは、受け手のその後の探求心と経験とが大いに関係するようである。
数年前に、読んだ記事の中で、経済産業省が行った企業に対するアンケートに注目すべき結果があった。企業が職場に求める能力は、職業的専門性を持った即戦力型の人材よりも、ヒューマンスキル力(社会人基礎力)を持った長期就労型の人材を重視しており、今後は企業の求める人材像を継続的に調査し、データベースを構築して、情報提供を行うこととしているというものであった。 その後、経済環境の変化や、少子高齢化が進んだことなど、前提が変わってきたため、職場に求める能力は紆余曲折している。
テクニカルスキル力よりヒューマンスキル力を持った人材のニーズをあげた企業が置かれている状況は、小生にとって将に驚きであり、別の言葉で言えば、今までの人材育成の考え方の根本を覆すことにつながることになる。
教育訓練の目的は教育者の多くが認めるように、社会人としての知識や技術・技能を習得させ、エンプロイアビリティ(就職できる能力)を付与するとともに、社会人としての素地をつけることである。端的に言えば、就職のための準備教育である。しかし、職業的専門性を体系的・段階的に学ぶとしても、修業期間が限られていること、また、社会の変革が激しい時代には教える内容にも限界があり、習得したものもすぐに陳腐化する。そこで専門領域の範囲を絞り、プロセス管理やPDCA手法を導入し、聞き取りやアンケート調査から、業界の業務内容を分析し、カリキュラムを修正し、出来得る限り就職先にフィットする修了生の育成に努める方策が生まれてきた。(次回へ続きます)