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近くの多摩川に飛来する野鳥の連続写真を中心に、日頃感じた出来事を気ままな随想でご紹介し、読者双方との情報を共有したい。

人づくりの側面(3回シリーズその1)

2012年12月13日 00時00分01秒 | 緑陰随想

 今回は長年携わった職務経験の中から「人づくり」について考えてみたい。職業訓練の世界へ入ってから在学中を含み、定年退職をするまでに40年間従事したことになる。そもそも一つの職務に従事し、継続できたことは世間でいう強い信念や特別の思いがあってのことではない。入った動機などはすでに忘れている。時が過ぎて、振り返ったときに指折り数えると40年が経っていたというのが正直なところである。
 継続できたことはこの世界に包容力があり、組織の歯車の一つとして、それなりの勤務が続けられ、健康面は自信があったわけではないが、それなりに元気であった。まわりに介在した人たちとの関係では自分に対し、職域を変えるほどの転職を迫られたことがなかったのも安住し続けられた原因かもしれない。新しい年を迎えるにあたって、経験した人づくりの側面を回顧してみるのも悪くないであろう。

 この40年間の職業訓練は常に社会・経済情勢の影響によって変化を余儀なくされ、今も変革を求められている。一貫して関係してきたのが人づくりであった。職業訓練を志す人を教え、育て、職業に従事させる職務が人に影響を与える人づくりという重大な分野であることに気づいたのは大学校を卒業し、就職してから大分たった頃で、はじめは子供を育てたことがないのに、どうして十歳も歳の差がない訓練生の発達を知り得るのかという素朴な疑問からであった。
 また、民間に就職していない自分がどうして専門領域を教え、民間企業へ就職させ得るのか、自分が教えたことをもって職業人としての基礎を体得でき得るのか等不安の中で数年が過ぎていったことを思い出す。この時期の強烈な自問自答は疑心暗鬼と自己欺瞞を生み、精神的不安定の状態を作る。
 今になって思えば、その原因は指導者としての具備すべき経験と力量のなさに起因しており、指導する誰しもが経過として一度は経験すると思われる。今はほろ苦い思い出となり、当時へ戻れないもどかしさを感じている。人を指導する機会が多い職務柄、「初心忘れるべからず」という古人の教えはこの歳になって将に含蓄のある言葉として座右にある。(次回へ続きます)