周りを見渡し警戒しますが上空を飛ぶヘリにも気を遣います。
営業形態からいえば、移動販売とは異なる側面を持つ。店舗は置かれている場所に影響し、客を待つという性格を持つ。店舗を設置予定する場所を事前調査で、人通りが多く、競争相手の存在があるか否か、買い物客の人数、年齢・世帯構成、サラリーマンが多いのか学生が多いのか等を調査し、そこで把握された情報を基に十分に検討して出店を決定する。その理由は簡単に店舗をたたみ、場所を変えることは不可能だからである。
移動販売では場所を変えることは可能であるが、移動手段である販売車等の大きさや積載量に制限される。また、客の注文に合致した商品を厳選するのには、ユーザーが希望する情報を知っていなければならない。そこで移動不可能な店舗商売を推し進めるために各家庭を周り、注文を取るご用聞きの出番である。
しかし、ご用聞きの存在は居住環境が整う、言い換えれば、スーパーマーケットやディスカウントショップが進出してくるのと期を同じくして、衰退してしまう。もちろん人材確保の困難性や、前述した営業マンとしての必要十分条件を満たすには、一人前になるのに訓練期間が必要であることなどである。
消費者が作る生活協同組合でも宅配をし始めているとの情報もあるが、従業員の配置や、勤務時間、宅配がペイするかどうか等の判断には多くの課題もある。高齢社会となり、歩いて買い物に行くのには困難な高齢世帯増加の状況では、宅配だけではなく、ご用聞きのニーズは高まってきていると云える。しかし、介護保険制度が充実しても、買い物等機能しない側面もある。個人情報の保護などの法規制もあるので、新たに情報を集めるにしても集中して各家庭のニーズを把握するのが難しくなっている。
福祉の根幹は公助、共助、自助であるが、店舗側がご用聞きによる注文販売を成功したのは、表面に出ない営業マンの努力があったからであるのは間違いない。要するに需要と供給のそれぞれが持つ思惑が一致したからこそ成功したのである。商品価格を下げるために、経費を極力抑え、特定商品の大量仕入れで、廉価を達成している店舗が近隣にあれば、消費者は安い店に流れ、従来からある店舗が店をたたむのは必然であり、その流れを止めることは出来ない。
健康な世代には便利な住環境になった反面、介護等が必要な高齢者の買い物難民を産む社会でもある。古くからの店舗が活性化し、昔のにぎわいを取り戻すまでには行かないにしても、ご用聞き制度の見直しや、ご用聞きをする従業員を雇っている店舗には一定の助成や税の控除措置等の公的施策が急務となっているのは疑う余地もない。(このシリーズ最終回です)