下級生へのいじめはエスカレートするし、それでも退部が出来ない世界であった。この時期の新入生と3年である上級生の体力の差は著しい。上級生の中には手をさしのべてくる者もいたが、1年間は我慢した。2年生になり、部活動のこともよく分かり、新入生には同様な制裁が3年生から行われていたが、これには我慢仕切れなくなり、堪忍袋の緒が切れる。将にスポーツが持つ負の部分である。
こういうときは相談すべき顧問の先生や、先輩は頼りにならない。直談判に3年生の副部長がいる教室に単独乗り込み、副部長を呼び出し、要求を伝えた。結果は退部であるが、退部は堪忍袋の緒が切れて時には分かっていた。そのことが契機で、現在でもスポーツに対する妙なトラウマとなったのかも知れない。
スポーツが趣味の世界であり、ルールを守る態度や、清廉潔白で、潔く、チームの協力体制を作るなど、人間性を高める要素もあることは事実であり、総てが負の部分ではないことは言わずもがなであるが、一方で、陰湿な上下関係を構築し易く、度を超したいじめも日常茶飯事となりやすい。
前述した、嘗て、いじめにあった者は、立場が逆転するといじめの加害者となる連鎖を繰り返す。後輩の育成などとまことしやかにいわれ、その実態は密室の中での暴力、脅迫行為に他ならない。自殺に追い込まれる事例もないわけではないが、スポーツを賛美する者には知らない世界であり、軽率な礼賛は慎むべきであろう。教育関係者の中には顧問を辞退する者も出てきているが、密室を作らないことや、いじめの温床となることを踏まえた指導を期待したい。(このシリーズ最終回です)