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近くの多摩川に飛来する野鳥の連続写真を中心に、日頃感じた出来事を気ままな随想でご紹介し、読者双方との情報を共有したい。

曜変天目茶碗

2016年12月23日 00時00分01秒 | 紹介

 古美術鑑定家の中島誠之助氏がTV番組の「開運!なんでも鑑定団」で12月20日、鑑定に出された茶碗が、現存する4番目の曜変天目茶碗に間違いないとし、2500万円の鑑定額がついたという新聞記事である。既に3つの茶碗は国宝に指定されている。鑑定に出した人物は、戦国武将であった三好長慶の子孫が暮らす屋敷の移築を請け負った際に、大工をしていた男性の曽祖父が買い付けた骨とう品に混ざっていたという。

 

 曜変天目茶碗は、12~13世紀、中国で作られ、完全に残るものは世界で3つだけで、それらは我が国にあるという。大徳寺龍光院(京都市)、藤田美術館(大阪市)、静嘉堂文庫美術館である。陶器の内側表面は漆黒の色をしているが、釉が焼かれる段階で窯の中で炎によって変色し、大小の銀色斑紋が生成される。その周りが光り輝く光彩が出現している。まるで宇宙に星々が輝いているように見える。これを称して、「器の中に宇宙が見える」と称賛されている。

 

 作られたのは福建省の建陽市で、建窯であったとされている。本場の中国にはないと言われているのには理由がある。中国では曜変天目は不吉の前兆とされて忌み嫌われていて、窯でできればすぐに破棄されたらしい。従って我が国に渡来したのは偶然といってよいであろう。中国でも焼かれないのであるから、その意味では大変貴重な茶碗といえるであろう。しかし、南宋時代の最上層に属する人々の間では曜変天目が使われていたようである。

 

 再現したという我が国の陶工の話を聞いたことがあるが、その後の状況は知るすべもないが、一種の偶然性を持っているようで、決まった条件での大量生産ができないことも不思議なことである。いくつかの類似とされる茶碗の中には、油滴と呼ばれる範疇に入るものだそうで、完全な形で残る曜変天目茶碗は上述の3件だけとのことである。

 

 成分分析等で偶然に発見される完全ではない茶碗のかけらから、分析を行うことは、試みられてきているが、件数も少ないし、すでに失われた過去の条件を再現することは容易ではないようである。科学が進んでも、わからない世界を残しておくことも、ロマンに通じ、深く詮索しない世界があってもよいと思う。半面、現代の陶工がその解明に当たり、再現するのを妨げる意味では毛頭なく、大いに挑戦してほしい世界である。