【中国空撮写真展】鳥のように空を飛ぶ
”空から見る 世界は斬新だ”
飯田橋にある日中友好会館美術館で開かれている「中国空撮写真展」
中国北京にある星球研究所との共催により、中国大陸の地形的特徴を
空撮写真家がアーティスティックな視点で捉えた雄大な自然美と人々
によって作り出された写真が展示されている。
改めて中国大陸の広大さと奥深さに驚かされた。
”夕陽に映える見ん岷山山脈”
四川省成都市から世界遺産である九寨溝(きゅうさいこう)へ向かう途中、
まず目に入るのは「第一階段」の端に聳えたつ岷山山脈である。
”チベットのチョモランマ道”
世界で最も高いところにある自動車道。
遥かかなたには海抜8848mの世界最高峰・チョモランマが見える。
”クデンニマ氷河と氷湖の鏡”
中国とインドの境界にあるチベット・クデンニマ氷河。氷河から溶け出した
水はゆっくりと谷を流れ、美しい湖となる。その湖面は、夏にはトルコ石の
ように碧く輝き、冬は凍結し幻想的なグレイシャーブルーに変わる。
”カシュガルの赤い地層”
新疆ウイグル自治区のカシュガルには珍しい赤い地層の地形群がある。
赤や黄色い丘に、ゴビ砂漠の黒い砂が幾重にも重なり、まるで大地に
はめ込まれた巨大な油絵のようだ。
”伊寧(イーニン)の色とりどりの畑”
新疆ウイグル自治区は中国全土の六分の一を占める。広大なエリアには荒涼と
した砂漠もあれば、気候が良く、肥沃な土地を抱える農業地域もある。
カザフ族が暮らすイーリー河谷には、様々な農作物によって彩られた大地が、
巨大なパレットのように広がる。
”クムタグ砂漠”
クムタグ砂漠はチベット高原の北に位置し、新疆ウイグル自治区の北東部から
甘粛省西部にかけて広がっている。古代シルクロードの西域南道はこの地を
通っていた。「クムタグ」とはウイグル語で「砂の山」の意味である。
”伊犁(イーリー)のラベンダー畑”
新疆のイーリーには広大なラベンダー畑がある。ラベンダーは約70年前に
海外から輸入された。
”唐辛子を干す回族の人たち”
新疆ウイグル自治区の長い日照時間、昼夜の激しい温度差、乾燥した爽やかな
気候は、唐辛子の栽培に適している。回族の住民によって刈り取られた
唐辛子を干しているところである。これらの唐辛子は地元で消費するだけで
なく、唐辛子の料理が有名な四川省や湖南省などにも運ばれる。
”省境を流れる黄河”
黄河流域は古代中国文明にとって重要な地域である。黄河はチベット高原を
源とし、北側にある内モンゴル高原に入ってから、黄土高原の陝西省と山西省
の境でS字型に大きく5回うねる。黄河の水は河渡高原を流れる際に大量の泥や
砂を運ぶため、水の色が黄色く変化するのである。
”雪の咸陽地杭院”
地杭院は中国古代建築の一つで、4000年の歴史をもつ神秘的な住居だ。
堅牢な建物内は、冬は温かく、夏は涼しく、暴風や雑音を遮る。そして地震
の心配もない。この村では人の話し声や動物の鳴き声はするのに、家屋が
見えないことから「地平線下の古村落」と呼ばれている。
「地杭院の建造技術」は中国国家級無形文化遺産に指定されている。
”嘉峪関関城”
万里の長城の終点は、甘粛省にある嘉峪関である。「関」は戦時においては、
人々の行き来を封鎖したり、制限をしたりする国境守備の軍事拠点であった。
”秋の風物詩「晒秋(さいしゅう)」”
中国の南方では、農作物の天日干しを「晒秋」と言う。安徽省の「晒秋」は、
農家の軒下から突き出した長い竿を使って行うのが有名である。水墨画の
ような街並みに、赤や黄色の農作物の数々が彩りを添え、美しい風景である。
”恭城(きょうじょう)の柿”
「恭城月柿」は400年前から栽培が始まった。広西チワン族自治区の特産品
である。糖度が極めて高く、滲み出た果糖が凍ってできた霜が月のように見える
ことから、月柿と呼ばれている。秋になると農家の庭には、収穫された
ばかりの柿が色鮮やかにずらりと並べられる。
”黿頭渚(けんとうしょ)の満開の桜”
1972年に日中の国交が正常化した後、日本から多くの桜の苗木が贈られた。
今では南京、杭州、長沙、武漢など多くの都市には花見の観光スポットが
誕生している。
”紅葉に包まれた南京美齢宮”
南京市市紫金山の麓にある美齢宮。秋になると美しい紅葉のグラデーションが
丘一面に広がる。まるで黄金のネックレスのようなプラタナスの並木、緑色に
輝くエメラルドのような美齢宮の姿は、空撮ならではの光景である。
”隣接する広州の住宅と湿地公園”
中国では急速な都市化計画が進められており、都市周辺の古い街を侵食し
ていく中「都市の中の村」が誕生した。広州市海珠区にある「都市の中の村」
と道路を隔てて対峙しているのは、新しくできた都市湿地公園である。
”ドイツ建築が立ち並ぶ青島の旧市街”
山東省青島市にはドイツ、スペイン、イギリス、日本、ロシアなど、各国の
建築様式で建てられた建物が360棟以上現存する。中でもドイツ式建築は
「赤い屋根、青々とした樹木、青い空と青い海」と、謳われる特徴的な
風景を作り出している。写真中央の四角い建物はドイツの総督府だった。
”秋色に染まる鄭州人民公園”
中国の多くの都市や建造物には「中軸線」という概念があり、中心を通る線を
基に造られている。金色に染まるプラタナスに囲まれた広場の中央に蓮の花の
噴水があり、その周りでは住民たちが「地書」を楽しんでいる。
「地書」とは、筆に水を含ませて地面に書を書くこと。芸術と運動を同時に
楽しめるとして人気である。
”杭州の八卦田”
杭州の八卦田は、南宋時代(1127~1279)には皇帝家の田畑だった。毎年春
には、皇帝自ら牛に鍬を引かせて土を耕したり、養蚕のための桑の葉を育てたり
していた。
~鳥のように空を飛んでみたい~ 誰もが憧れる。
そんな夢を叶えてくれた空撮写真、それも判っているようで
何も知らない中国の美しい姿を見せてもらった。
中国の新進気鋭の空撮写真家57人が、雄大な自然美と、人々に
よって作り出された造形美を、70枚の写真に収めた写真展だ。