現行消費税率の5%なら、消費税の租税回避へのインセンテイブはそう大きくありませんが、15%,
20%がざらのEU諸国では、あれこれ知恵を絞って回避を試みるようです。
消費税(EUはVATという付加価値税)はモノの売買のほかサービスにも課税されます。
モノの取引きにおける消費税の課税回避は難しそうですが、サービス面では課税当局と企業とであれこれ訴訟にもなっているようです。
フィクションですが
① 日本の企業Zは、ソフトウエアAを消費税がなく法人税も低いX国に設立します。
② Aとソフトウエア開発について契約している下請けの会社Kは日本に所在します。
③ 日本の企業B、C、Dは、電子メールでX国のAにソフトウエア開発を委託する。
④ Aは、Kに開発を委託し、開発結果のデータはインターネットでやり取りされる。
⑤ B、C、Dは、Aに開発料を支払う。
このような場合、実質的にはソフトウエア開発サービスは日本のKが日本の企業に直接サービスする場合と変わりありません。さてどう考えるのでしょう?
かずさんは、この世界は専門ではありませんが、次のような理屈はありうるのでしょうか?読者はどう考えますか?
1 日本の開発会社KによるAへの役務提供は「非居住者への国境を越えての役務提供」となって輸出類似取引きに該当して免税(注)になる可能性がある。
2 また、Aの日本企業に提供するサービスが「国内及び国内以外の地域にわたって行なわれるもの」に該当すれば、下記(注)のように事務所等が日本になければ「国内取引」に当たらないため消費税が非課税になる可能性がある。
(注)Aが、日本に支店、出張所等を設置していれば、その支店等を経由しての役務提供として、国内取引に該当し課税対象です。
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日本では、まだ消費税についての国際的租税回避の動きは少ないようですが、平成20年2月20日に東京地裁で判決言渡し(平成18年(行ウ)第684号)を紹介します。
(事実関係) Aは、加工委託取引により、製品の原材料のほとんどを海外のBに無償支給し、できた製品をBから輸入している。
Aは輸入手続きをXに委託し、Xが輸入インボイスの荷受人、輸入申告者、消費税納付の名義人となっている。
輸入手続き費用と消費税はAからXに支払われる。
Aは、負担した輸入消費税を、仕入れ税額として控除を受けるべく税務署に申告したが、税務署は「Aは輸入消費税の申告納税を行っておらず、Xが仕入税額控除を受ける事業者であったと判断。
(Aの主張)、
消費税基本通達11-1-6は、輸入申告名義人ではない実質的な輸入者に対し、輸入消費税の仕入税額控除を受け得ることを認めたもの。
そして、Xは製品の輸入及び原材料の輸出の手続きを行う以外には関与しておらず、Aは加工委託取引についての実質的な輸入を行っており、輸入消費税について、仕入税額控除を受けるべき「事業者」に該当する。
参考に、先ほどの消費税基本通達は次のとおりです。
(実質的な輸入者と輸入申告名義人が異なる場合の取扱い)
11-1-6 課税貨物について、関税定率法第9条の2《関税割当制度》の規定により割当てを受け又は関税暫定措置法の規定により関税の軽減若しくは免除を受ける場合には、当該割当てを受けた者又は軽減若しくは免除を受けようとする者(当該課税貨物を使用又は消費する者)の名をもって輸入申告をしなければならないこととされている(いわゆる「限定申告」)が、当該輸入申告を行う者(以下「輸入申告者」という。)が単なる名義人であって当該課税貨物を実質的に輸入する者(以下「実質的な輸入者」という。)が別に存在する場合において、次のすべてに該当するときは、実質的な輸入者が当該課税貨物を保税地域から引き取ったものとして法第30条から第36条《仕入れに係る消費税額の控除等》の規定を適用する。(平9課消2-5により改正)
(1) 実質的な輸入者が、輸入申告者が引き取ったものとされる当該課税貨物を輸入申告後において輸入申告者に有償で譲渡する。
(2) 実質的な輸入者が、当該課税貨物の引取りに係る消費税額及び地方消費税額を負担する。
(3) 実質的な輸入者が、輸入申告者名義の輸入許可書及び同名義の引取りに係る消費税等の領収証書の原本を保存する。
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通関業界や、商社などで仕事をされている方なら、こんな取引きはざらにあると思われるでしょう。こういう取引きについて、仕入税額控除者をどう考えるのでしょう。
東京地裁の判決は、以下の要旨で課税当局の処分を支持しています。
(判決要旨)
1 輸入手続を委託されたXが輸入消費税の納税義務者であることは公法上確定されており、実質的な輸入者である企業Aに例外的に仕入税額控除を認める理由はない。
2 消基通11-1-6は輸入申告者が単なる名義人であって実質的な輸入者が別にいるときに、実質的な輸入者に仕入税額控除の適用を認めるべき場合があることを示している。
しかしながら、この通達は、例えば税関長の承認を受けた製造者の名をもってしなければならないと関税法で定められているような、輸入申告をする者が限定されている例外的な場合に、実質的な輸入者が引取りに係る消費税について仕入税額控除を受け、仕入税額控除制度の趣旨を全うさせようとしたものと解される。
同通達によって、一般的に実質的輸入者が仕入税額控除を受けると解釈すべきことにはならず、事案における取引は通達が例外的に定める要件には該当しない。
3 また、Xが輸入消費税の申告名義人となって申告したことは、Xが納税義務者となることを自認し、公法上の納税義務を確定させたことに他ならず、X以外の者に納税義務が生じることは想定し難いと言わざるを得ない。
よって、Xは輸入消費税の納税義務者であることが公法上確定されており、輸入消費税の仕入税額についてはXが納付すべき消費税において控除されることが予定されるものである。
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如何ですか?通関業の関係からは少し外れる話題だったかもしれませんね。
ただ、荷主といろんな折衝をしていると、普段は当然と思っている基本のことについて質問を受けることがあります。
往々にして、関税法の世界の関係者は消費税の仕組みには関心が薄いとの印象がありますが、この方面にも興味を持って行きたいものとかずさんも自戒しています。
話は変わりますが、左の写真は最高裁の大法廷ですが、こちらの見学ツアーがあるようです。
裁判員制度が近まりました、私たちにも裁判が身近になるんでしょうか?
20%がざらのEU諸国では、あれこれ知恵を絞って回避を試みるようです。
消費税(EUはVATという付加価値税)はモノの売買のほかサービスにも課税されます。
モノの取引きにおける消費税の課税回避は難しそうですが、サービス面では課税当局と企業とであれこれ訴訟にもなっているようです。
フィクションですが
① 日本の企業Zは、ソフトウエアAを消費税がなく法人税も低いX国に設立します。
② Aとソフトウエア開発について契約している下請けの会社Kは日本に所在します。
③ 日本の企業B、C、Dは、電子メールでX国のAにソフトウエア開発を委託する。
④ Aは、Kに開発を委託し、開発結果のデータはインターネットでやり取りされる。
⑤ B、C、Dは、Aに開発料を支払う。
このような場合、実質的にはソフトウエア開発サービスは日本のKが日本の企業に直接サービスする場合と変わりありません。さてどう考えるのでしょう?
かずさんは、この世界は専門ではありませんが、次のような理屈はありうるのでしょうか?読者はどう考えますか?
1 日本の開発会社KによるAへの役務提供は「非居住者への国境を越えての役務提供」となって輸出類似取引きに該当して免税(注)になる可能性がある。
2 また、Aの日本企業に提供するサービスが「国内及び国内以外の地域にわたって行なわれるもの」に該当すれば、下記(注)のように事務所等が日本になければ「国内取引」に当たらないため消費税が非課税になる可能性がある。
(注)Aが、日本に支店、出張所等を設置していれば、その支店等を経由しての役務提供として、国内取引に該当し課税対象です。
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日本では、まだ消費税についての国際的租税回避の動きは少ないようですが、平成20年2月20日に東京地裁で判決言渡し(平成18年(行ウ)第684号)を紹介します。
(事実関係) Aは、加工委託取引により、製品の原材料のほとんどを海外のBに無償支給し、できた製品をBから輸入している。
Aは輸入手続きをXに委託し、Xが輸入インボイスの荷受人、輸入申告者、消費税納付の名義人となっている。
輸入手続き費用と消費税はAからXに支払われる。
Aは、負担した輸入消費税を、仕入れ税額として控除を受けるべく税務署に申告したが、税務署は「Aは輸入消費税の申告納税を行っておらず、Xが仕入税額控除を受ける事業者であったと判断。
(Aの主張)、
消費税基本通達11-1-6は、輸入申告名義人ではない実質的な輸入者に対し、輸入消費税の仕入税額控除を受け得ることを認めたもの。
そして、Xは製品の輸入及び原材料の輸出の手続きを行う以外には関与しておらず、Aは加工委託取引についての実質的な輸入を行っており、輸入消費税について、仕入税額控除を受けるべき「事業者」に該当する。
参考に、先ほどの消費税基本通達は次のとおりです。
(実質的な輸入者と輸入申告名義人が異なる場合の取扱い)
11-1-6 課税貨物について、関税定率法第9条の2《関税割当制度》の規定により割当てを受け又は関税暫定措置法の規定により関税の軽減若しくは免除を受ける場合には、当該割当てを受けた者又は軽減若しくは免除を受けようとする者(当該課税貨物を使用又は消費する者)の名をもって輸入申告をしなければならないこととされている(いわゆる「限定申告」)が、当該輸入申告を行う者(以下「輸入申告者」という。)が単なる名義人であって当該課税貨物を実質的に輸入する者(以下「実質的な輸入者」という。)が別に存在する場合において、次のすべてに該当するときは、実質的な輸入者が当該課税貨物を保税地域から引き取ったものとして法第30条から第36条《仕入れに係る消費税額の控除等》の規定を適用する。(平9課消2-5により改正)
(1) 実質的な輸入者が、輸入申告者が引き取ったものとされる当該課税貨物を輸入申告後において輸入申告者に有償で譲渡する。
(2) 実質的な輸入者が、当該課税貨物の引取りに係る消費税額及び地方消費税額を負担する。
(3) 実質的な輸入者が、輸入申告者名義の輸入許可書及び同名義の引取りに係る消費税等の領収証書の原本を保存する。
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通関業界や、商社などで仕事をされている方なら、こんな取引きはざらにあると思われるでしょう。こういう取引きについて、仕入税額控除者をどう考えるのでしょう。
東京地裁の判決は、以下の要旨で課税当局の処分を支持しています。
(判決要旨)
1 輸入手続を委託されたXが輸入消費税の納税義務者であることは公法上確定されており、実質的な輸入者である企業Aに例外的に仕入税額控除を認める理由はない。
2 消基通11-1-6は輸入申告者が単なる名義人であって実質的な輸入者が別にいるときに、実質的な輸入者に仕入税額控除の適用を認めるべき場合があることを示している。
しかしながら、この通達は、例えば税関長の承認を受けた製造者の名をもってしなければならないと関税法で定められているような、輸入申告をする者が限定されている例外的な場合に、実質的な輸入者が引取りに係る消費税について仕入税額控除を受け、仕入税額控除制度の趣旨を全うさせようとしたものと解される。
同通達によって、一般的に実質的輸入者が仕入税額控除を受けると解釈すべきことにはならず、事案における取引は通達が例外的に定める要件には該当しない。
3 また、Xが輸入消費税の申告名義人となって申告したことは、Xが納税義務者となることを自認し、公法上の納税義務を確定させたことに他ならず、X以外の者に納税義務が生じることは想定し難いと言わざるを得ない。
よって、Xは輸入消費税の納税義務者であることが公法上確定されており、輸入消費税の仕入税額についてはXが納付すべき消費税において控除されることが予定されるものである。
:::::::::
如何ですか?通関業の関係からは少し外れる話題だったかもしれませんね。
ただ、荷主といろんな折衝をしていると、普段は当然と思っている基本のことについて質問を受けることがあります。
往々にして、関税法の世界の関係者は消費税の仕組みには関心が薄いとの印象がありますが、この方面にも興味を持って行きたいものとかずさんも自戒しています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/03/24/747f1951a4d5e7223a947f3dd05bf486.jpg)
裁判員制度が近まりました、私たちにも裁判が身近になるんでしょうか?