アルゼンチンで開催されていた『2017 IFCPF World Championships』CPサッカー世界選手権大会の日本チームの全日程が終了した。
最終戦はスペインとの15~16位決定戦、はっきり言ってしまえば最下位決定戦である。
しかし最下位決定戦と言っても予選を勝ち上がってこの大会に参加しているわけで、やはり15~16位決定戦と呼んだほうが適切だ。
障がい者サッカー全般に目を向けてみると、予選が全くない競技、地区ごとの予選を勝ち上がるのも困難な競技と様々だ。
今大会のCPサッカーの予選は、パラリンピックに出場できなかったチームが集まり、参加8枠を争った。日本チームはその予選大会で出場資格を手にしての参戦だった。大会に出たくても予選で敗退したチームもいたということだ。
今大会これまでの5試合は自宅のPCにへばりついて観戦していたが、最終戦はCPサッカー関係者の方々などと『E’s CAFE』にて観戦。
E’s CAFEは、CPサッカーを中心としたパラスポーツの普及振興と障がい児者の社会生活の支援を行っているパラSCエスペランサが運営している「就労継続支援A型」事業のスポーツバー。
ということで最終戦を簡単に振り返っておく。
先発はGK加賀山ヘンリー。ディフェンスは右に浦、左に戸田。中盤は右から亀野、三浦、大野、1トップに谷口。
スペインはこれまでのチームと比べるとやはり力が落ちるようだ。パススピードも遅く、シンキングスピードも遅そうだ。それぞれの障害も重めの印象だった。
CPサッカーはもちろんクラス分けのルールがあるが、ルールの範囲内では障害が軽い人が出た方が圧倒的に有利に働く。
その点に関しては賛否両論はあるかと思う。
それはともかく「今日は勝てるんじゃないか?」と思ったわけだが、スペインもそう思っていただろう。
序盤は両チームなかなか決定的な形を作り出せない。
10分過ぎ、日本が動く。今大会の攻撃的モードへの移行。ディフェンスの浦が上がり、三浦が下がるというものだ。
守備の安定度は崩れるが、浦の球際の強さから高い位置でボールを奪ってのショートカウンター、もちろん自ら持ち上がってのドリブルシュートもある。
スペインの攻撃がそれほど怖くないという判断もあったのだろう。
三浦には最終ラインからのパスが期待される。
徐々に日本ペースで試合が進んでいく。
16分、その三浦から縦パスが入る。パスを受けた亀野が上手く反転、スペインゴールに迫るがスペインの選手が後方よりタックル。シュートまで持ち込めなかった。
このプレーで亀野が左肩を痛めたようでピッチに戻ることが出来ない。
数的不利ななか、スペインがCKを得る。こぼれ球からのシュートは戸田がヘディングでクリア。事なきをえる。
CKの直前に交代が認められ、亀野に代わって大沢が入った。
流れはスペインに傾いていく。
26分、スペインのシュートはクロスバーをたたく。肝を冷やした場面だった。
なかなかシュートまで持ち込めず、じれるような展開が続くが日本にチャンスが訪れる。
後半14分浦がボールを奪い前線へ、谷口がドリブルでスペインゴールに迫る。
谷口が強烈なシュートを放つものの枠をとらえられない。
16分には最終ライン左サイドで戸田がボールを奪い浦へ縦パス、浦は巧みなドリブルで相手選手をかわしスペインゴールに迫る。
そして逆サイドを上がってきた大沢へ絶妙なパス。シュートチャンスだったが、大沢のキックは浦へのリターンパスだったのだろうか?
シュートまで持ち込むことはできなかったが、チームが連動したいい攻撃の形ではあった。
22分にはさらに決定的なチャンス。ボールを奪取した浦がそのままシュート!
しかし無情にもポストに跳ね返された。
26分のスペインの攻撃はGKヘンリーが果敢な飛び出しを見せ得点を許さない。
そして両チームスコアレスのまま、試合は10分ハーフの延長戦へと突入した。
延長は映像は配信されるものの何故か音声がない。音声スタッフや実況は業務外時間?メシでも食いに行ったのか?
E’s CAFEで観戦している皆は、より無音の画面に集中する。
終電の時間も気になり始める。
延長後半9分、中盤でボールを奪った浦から絶妙のスルーパス、GKと2対1の状況になりかける。
大沢は谷口へのパスを選択。シュートまで持ち込むことはできなかった。
そして終了間際、ボール奪取した浦がそのままペナルティエリアに切れ込む。
スペインディフェンダーが思わず足を出し、PK!かと思われたがノーホイッスル。
延長まで含めた80分では決着がつかず、PK戦へともつれ込むことになった。
国際大会でPK戦までもつれ込むのは初めてのことらしい。
「11人制サッカーと違い、PK戦は5人ではなく3人か4人なのか?」と即座に疑問が浮かぶが、11人制と同じ5人だという。こういう時は関係者と観ているととても便利だ。
脳性まひ者は(人によって違うだろうが)精神的な緊張が筋緊張を引き起こすとこも少なくない。そいうった側面がどう出るのか?
また片麻痺の選手にとって軸足となる患側の足が緊張や疲れによって安定しないことがあったりするだろうか?
11人制サッカーとはまた異なったPK戦の難しさもあるのかもしれない。
日本は1人目の浦が外したが、GK加賀山ヘンリーが弾き出す。続く2人目谷口は強烈なPKをゴールネットに突き刺す。3人目の三浦はスペインGKに阻まれ、4人目の戸田はクロスバーの上。決められると負けという場面で加賀山ヘンリーが止めた!
その後、5人目の大沢は決めたものの、最後はスペイン10番に決められ万事休す。
PK戦の末、スペインが15位、日本は16位という結果に終わった。
PK戦で外した3選手はいずれも6試合通じて活躍していた選手。浦は攻守ともに頼れる存在となり2得点もあげ、間違いなくチームのMVPだろう。戸田もフル出場し気迫あふれる守備と効果的な攻撃参加を見せてくれた。ただ疲れもあったのだろうか、キックの精度を欠く場面も垣間見られた。三浦は序盤戦、ボールを下げてカウンターを食らったりする場面もあったものの、その後は前への意識も強まったように見えた。ディフェンスラインに下がった時も効果的なパスを出していた。
前回大会は15チーム中15位、今大会は16チーム中16位。連続して最下位という結果に終わった。ただPK戦までもつれ込んだことを考えると、15.5位で、半歩、前進したという言い方も出来るだろうか。
今大会の現実的な目標は、前回よりも一つでも上の順位にいくことだったが数字上の目標は叶わなかった。
とても無責任な言い方をすれば、グループリーグの第3戦のベネズエラ戦は次戦の下位トーナメント1回戦オーストラリア戦の準備というように極単に割りきった戦い方もあるのではないかとも思った。その試合に勝てば12位以上が確定するからだ。だがなかなかそうもいかないだろう。
今大会を通じて、2年前の大会や昨年の予選に出場していた選手たちがいたら違う展開になっていたのではないか、という思いが拭い去れなかった。もう少し選手が休めたり、前線でもう少しボールが収まったり等々。
個人的な事情で断念せざるを得なかったのか、単純に選ばれなかったのかは詳しくはわからない。
長期仕事を休む必要があり、周囲の理解やサポートがないと出場しにくいことは確かだろう。
内容的にはチーム全体の守備は、ある程度安定してきているように思えた。攻撃面もチームで崩す萌芽は見えたがなかなか形にはなりきれなかった。浦などの個の能力頼りという側面も多かった。
ある程度形として見えてきているのは、昨年の予選大会では安永氏、今大会は島田氏と、元Jリーガーが監督を引き受けてくれたことが大きいだろう。
今後、この流れをいい形で引き継いでいってほしい。
優勝したのはウクライナ、2位はイラン。以下3位ロシア、4位イングランド、5位アメリカ、6位アイルランド、7位ブラジル、8位オランダ、9位アルゼンチン、10位オーストラリア、11位北アイルランド、12位ポルトガル、13位カナダ、14位ベネズエラ、15位スペイン、16位日本。
とにもかくにも日本選手団の皆さま、お疲れ様でした!
CPサッカーを10年以上前から見続けててはいるものの、細~く見続けているだけなので、いたらない文面になっている点はご容赦ください。
中村様にお聞きしたいと言うか、どう感じたか知りたいのでコメントさせていただきます。
この試合、何故選手交代がなかったのか。
サッカーをやっている仲間と観戦してたのですが、みんな同じことを言ってました。前半の動きも悪く、後半からは違う選手を入れてくると思っていたのですが、全く変わることなく同じ。そして、毎回同じメンバーを起用。監督の中では、そのメンバーだけで自分の描くサッカーを完成させたかったのでしょうか。全試合を通じ選手たちに元気と明るさが全く感じなかったのは私たちだけでしょうか。
もっともっと変化のある元気なサッカーを観たかったです。
CPサッカーに詳しくないのに個人的なコメントお許しください。
障害者サッカーが、たくさんの人に知ってもらえたら嬉しいです。そう願いたいです。
日本の代表として頑張ってくれた選手スタッフ、本当にお疲れさまでした。今後の活躍を期待しております。
中村さん、これからも楽しみにしています。
クラス分け上、F7の浦、戸田、三浦、大野、大沢は、もし代えるしたら選択肢は現実的には尾崎のみ。
しかし尾崎は今大会あまり出番もなかったですし、この試合では代えにくいでしょう。
その他の選手はさらに障害の重い選手になるので交代の選択肢にはならない。
F6の谷口を同クラスの選手に代える選択肢もありますが、爆発的なシュート力や走力を持つ谷口は代えにくいということだったと思います。
ちなみにCPサッカーは相対的に障害の重いF5かF6の選手が2名以上出場していなければなりません。
この試合では谷口選手とGKヘンリーさんの2名です。
大会全体を通じては、本文にも書いたようにベネズエラ戦で休ませるくらいしかなかったと思います。
これも本文に書きましたが不在の選手がいればと思ったのも事実。選手数の薄さは感じました。
障害の重さによってチームを作らないといけない。限られた人数の中で決めることは難しいことだと知りました。
ありがとうございました。