2018年12月12日、JR北海道は、「北海道新幹線速度向上の実施について」というプレスリリースを発表した。
「本年9月に、(独法)鉄道建設・運輸施設整備支援機構と共に青函トンネル内における時速160kmの速度向上試験、ならびにJR貨物と青函トンネル内における新幹線の走行速度を時速160kmとした貨物列車とのすれ違い試験を実施し、青函トンネル内の時速160km営業運転に支障がないことを確認いたし北海道新幹線では青函トンネル内の速度向上を行う」という。
さらに「実施時期は2019年春ダイヤ改正。東北・北海道新幹線における最速達列車の運転時分は【東京~新函館北斗間】運転本数下り2本、上り1本。運転時分3時間58分(△4分)」
要するに一日3本が4時間を切るというものだが、JR自身、どれほどの増収効果があるのかは、実際のところさほど確信があるとは思っていないのではないか。
東京・函館間は空路で1時間半。函館空港から観光の中心地まで30分。これはJR函館駅からと大差ない。東京を見ても羽田に行くのも、東京駅に行くのも大差ない。まあ航空機に乗る際の様々な手続き等を考えると1時間だが、それを考慮しても航空機の優位性は全く変わらない。
ここで、数分短縮されたからと言って何かが変わるとはとても思えない。
今年は北海道・東北新幹線に乗る機会に多く恵まれたが、盛岡以北、さらに新青森以北に至っては車内は閑散としたものだし、乗客の顔ぶれが全く異なることに気が付く。上りに乗ると良くわかるのだが、盛岡、仙台から乗ってくる乗客は多くが黒いスーツとバソコンを携えたビジネスマンだ。
東北と北関東は、当然だが東京を向いている。
北関東と東北からの利用客を増やしたいと言う思惑は明らかに現実の人の動きとは逆行している。
現在の日本は「東京へ東京へと草木もなびく」という状態なのだし、将来も変わらないだろう。
このような現状を見る限り、30年に札幌に延伸したとしても、車内の様子は大きくは変わらないのではないだろうか。大量輸送と速達性、運行便数どれをとっても新千歳空港の優位性は変わらないだろう。
JR北海道は現在のスーパー北斗を中心としたドル箱路線を失い、より、コストの高い新幹線を背負い込むことで、莫大な赤字体質に変化はなく、経営体制の大規模な見直しを迫られることになるのは明白だと感る。
新幹線という重荷を背負う前に、現在投げかけられている問題も解決しなければならないのに、北海道民は実にのんびりとしたものだ。
札幌近郊の市民などは、まったく他人事だ。
先日、北海道運輸局が行ったシンポでも名古屋大学大学院の加藤教授があきれていたという事だ。
、さらに、現在は函館・札幌間を結んでいるスーパー北斗の車両は、どんどん所要時間を長くしている。この先、国策に対応して白老に停車などという事になればさらに所要時間は伸びる。
正直、今後主力となるキハ261系はディーゼルの騒音もひどく、せっかくの車体傾斜を外してしまったがゆえに曲線からの立ちあがりの加速のために、かなりの騒音を立てる。
社員のインセンティブを奪うようにハイブリッドキハ285を廃棄解体したことは、間違いなくJR北海道にマイナスに作用しているのだ。馬鹿なことをしたものだ。羹(あつもの)に懲(こ)りて膾(なます)を吹(ふ)くを地で行くようなものだ。