Jr北海道は、11月にダイヤ改正(悪)を行い、特急の最高速度を時速130(㌔/h)から110または120に減速すると発表した。
正直、日本の鉄道技術は欧米と比較しても高い水準である。
しかし、ここ数年、JR北海道だけに事故が頻発している印象がある。(多少はメディアのヒステリックな報道もあるかもしれないが・・・・)
ディーゼルエンジンは歴史のある技術であり、大小を問わず、保守が難しいとは思えない。
ところが、この間進めてきた高速・高性能化を突然に否定するような「減速措置」というのはどうして必要なのか。
ある方が「仮に危険があるのなら、どうしてすぐではなく11月から減速するのでしょうか」と書いていたが、このように??がある。
で、こうした点の背景にはJR北海道が置かれている苦境の構造があるということをアメリカのニューズウィーク紙の日本版のコラムに記載されていた。
要約してご紹介したい
どうして北海道だけで事故が起きるのか。
①ほとんどの幹線が電化されておらず、ディーゼル車を走らせているという問 題がある。広大な土地でありながら札幌に極端な一極集中をしている北海道では、幹線と言っても電化はコストに見合わないからなのだ。
だから、長距離の高速特急もディーゼルで対応せざるを得ない。このようなディーゼル高速特急列車というのは、世界でも珍しい存在で、非電化区間の長距離特というのは基本的にはディーゼル機関車が客車を牽引するというのがほとんどで、JR北海道のような原動機を各車両の床下に備えたディーゼル特急列車は珍しいということ。
②第2の問題。それは「高速化」という使命。機関車による客車の牽引では速度を出せない。
北海道という広大な土地、そして高速道路や都市間バスとの競合などを考えると、JRのセールスポイントは高速化しかなくなる。
そこで時速120キロとか130キロというレベル、しかも加減速性能もあって乗り心地も良いという性能を満たすには、ディーゼル特急列車という選択肢しかないということになる。
「世界的にも珍しい」存在であるため、JR北海道は高速型のディーゼル特急列車の開発、製造、保守の多くの部分を「自前で行わなくてはならなかった。」
その技術は基本的には優れたもので、車体を自動的に傾斜させてカーブを高速で通過できる「振り子方式」をはじめ、旧国鉄時代から継承してきた技術は大変に独創的でユニークで高度なものだ。
③第3の問題、「厳寒期の過酷な環境」。ここ数年、JR北海道で起きた事故に関しては、金属疲労が原因であることが多いようだ。
そう聞くと「老朽化した列車を『だましだまし』使っている」という印象を与えるが、それは違う。
今回の事故の多くは、過去2回の冬、つまり2011年から12年の冬と、12年から13年の冬が2回連続して大変に厳しかったということに起因していると思われるようだ。
特にこの2回の冬は、全道の異常低温、強風を伴う暴風雪など、過酷な気象条件が続いた。その度に、ディーゼル列車の動力機構は非稼働時には極低温に、稼働時には高温にという温度変化を繰り返かことになった。
また、軌道に埋め込まれた砕石(バラスト)の隙間に氷ができて、バラストがうまく振動を吸収できず、車両の通過時にはバラストと氷が舞い上がって車両の基本的な部品を損傷するという現象も起きていた。
函館本線にしても、石勝線と根室本線にしても、あるいは宗谷本線にしても、限られた経営資源の中で、何よりも過酷な冬季の気象環境の中で、世界でもユニークな「振り子ディーゼル特急」を守ってきた、しかも最高時速130キロという運行をしてきたということ自体が、大変な「闘い」であった。
今回の減速措置というのは、とりあえずは、この先11月以降の厳寒期において車両の損傷を抑えるための措置なのだ。
直ちに減速するほどの危険はない一方で、次の厳冬期にはとにかく車両の傷みを少なくする、そのことで向う数年間の安全運行をより確実なものにするための苦渋の措置ということが言えると思える。
2016年3月には北海道新幹線の新函館間延伸が完成し、この時点で、JR北としては新函館を新たな始発駅として、新幹線に「リレー」する形で多くの特急列車を再編することになる。
このタイミングを目指して、より安全で省エネタイプの新型車両を投入したい、そうした構想がJR北海道にはあり、そのためにも現有車両で残り3回の冬を乗り切って行かねばならない。
今回の「減速運転」の背景にはそうした問題がある。
今回、緊急事態ということで、国の指導もあり、JR東日本が技術支援に入ったが、上場企業として本来の意味でのコンプライアンス、安全基準ということだけみれば、北は東に学ぶことは多いだろう。
しかし、ここまで過酷な自然環境と経営環境の中で「苦闘」してきたということについては、JR東日本の技術者もJR北海道に学ぶことも多くあるはずなのだ。
Jr北海道の現状に関しては、弁解の余地はないし、公共交通機関として、発火、発煙といった事故は絶対に許されるものではなく、その背景にある技術の伝承など「人災」という面があるのも事実です。
しかし、過酷な自然、とりわけ厳冬期の厳しさ、過度の札幌一極集中とその他地域の過疎化、高速バスや格安航空会社との過度の競合、そして余りにも先見性に欠けた分割民営化など構造的要因を考慮せざるを得ない。
以上の内容である。これからもJR北海道には、北国の鉄道文化を、何とかして守って行っていただきたいと思う。