3月3日の北海道新聞に「青函貨物、海上転換も 国交省 新幹線高速化へ検討」という見出しの記事が載った。
以下に記事の要旨を引用する
「青函トンネルの貨物列車との共用走行区間で北海道新幹線の高速化を実現させて新幹線の集客力を高め、JR北の経営改善につなげるという、
北海道新幹線の最高速度は青函トンネルを含む貨物との共用走行区間では、140キロに減速している。国交省とJR北、JR東などが貨物列車の廃止や減便も視野に抜本的な方策の検討に着手し、代替手段としてフェリーなどの利用や、座席を外した新幹線車両による輸送などを想定。
青函トンネルでは1日40本以上の貨物列車が行来し、道内からはジャガイモ、タマネギなどの農産品や食料加工品が、本州からは宅配便や飲料、書籍などが運ばれ、輸送体系が変われば、JR貨物だけでなく、人手不足が深刻なトラック業界からも懸念の声が高まりそうだ。」
以上、引用終わり
元政府系金融機関の職員であり現在は北大政策大学院の特任教授石井吉春氏は、従来から北海道の都市間交通は航空路とし、貨物は船舶輸送への転換をすべきだとし、同時に北海道の在来線の大幅縮小を提案している。
また、6日の日経新聞に寄れば、同教授は、産学の有志「6人」が私的に集まってできた第二青函多用途トンネル構想研究会の座長として、本州と北海道を結ぶ新たな「第2青函トンネル」を提案、話題を呼んでいるという。
財政投融資で国の資金を運用してきたのだから、公共事業・投資には詳しい方だろうし、インフラ整備はお得意だろうが、この話は、さすがに建設業界を喜ばせるだけに終わりそうだとは思う。
国が財政破たん寸前の中、民間資金でという事だそうだが。第二青函トンネルには鉄道は通さない。氏は一貫して北海道には鉄道は必要ないという考えなのだ。
トラック(自動車)という輸送手段・ツールが、果たしてこれからも今の形で維持できるのか言われている現代においては、その自動車に頼るという考え方には、大きな疑問を持たざるを得ないし、その旧態依然とした思考回路には驚く。
閑話休題、第2トンネルはともかく、貨物列車輸送をやめて船舶、フェリー輸送に戻すという事が北海道にとってどのような意味を成すことなのか、冷静に考えてほしい。トラック運転手、船舶運航従事者の不足が顕著な中で、国がフェリーを新造するなどと言う事まで考えられているという。
運行費用は、人はどうするのか。建造費用は??
もし、国交省官僚の思惑通りになれば、JR貨物は、北海道からの撤退を検討せざるを得ないとしている。
モーダルシフトの影響でJR貨物は比較的好調な業績を維持していて、上場も視野に入り始めている。
もし、上場となれば、株式の売買益は国庫に入ることになる。しかし、北海道撤退となればそれもかなわず、国は一銭の利益も得られない。
昭和29年の洞爺丸台風で、多くの犠牲者を出したことから青函トンネルが建設されたことを忘れ、今また昔に戻すという事は、過去を顧みることを忘れた愚かな行為としか見ることができない。
あの頃よりは気象予報も船舶の運航技術も発展したと言いたいのだろうが、人間はそのようなことを言って過ちを繰り返してきている。
よしんば貨物をすべてトラック輸送に切り替えたとしよう。函館と青森での貨物の積み替え時間が発生し、列車ごと連絡船に積んだ昔よりは確実に時を要するだろう、また、輸送単位の縮小化で単位輸送コストが上昇することは明白である。現在も、函館。青森での貨物車両操車場で相当の時間を要しているからと、石井氏は書いているが、どこまで実態を調査したのかは疑問であるし、少なくとも現状と変わらないという事なのか。
結論が先ににあっての主張ではないか。
はたして、ここまで国民に負担を強いて、一企業にしか過ぎないJR北海道の新幹線収益を上げようとする必要があるのだろうか。わずか十数分早くなったからと言って多くの人が新幹線での移動に転換するとはとても思えないのだが、分割民営化の負の部分あくまで認めず、糊塗してしまおうとする策略が見え隠れする。
現在、トンネル内を走る列車は新幹線より貨物列車の方が多いか、ほぼ同じである、札幌延伸後も、それは大きくは変わらないだろう。
さらに人の移動は東京と北海道間は空路が便利なのは明らかなことであるし、これからも多くの人たちが空路を選ぶだろう。
基本的に、青函トンネルは、人ではなく、物資も運ぶことが役割だと考える。人の移動の為だけに、あれだけ大規模な社会資本を使うのは無駄としか言いようがない。
国交省は、整備新幹線建設を正当化するために愚かなこと策するするべきではない。